“勝ち組”とされていた焼肉店、倒産が急増-牛肉価格の高騰・大手の参入・低価格の三重苦

帝国データバンクは9月7日、「焼肉店」の倒産発生状況の分析結果を発表した。集計対象は、負債1000万円以上法的整理による倒産企業。集計期間は2023年1月~8月31日まで。

コロナ禍の外食産業で「勝ち組」とされた焼肉店で倒産が急増している。2023年に発生した「焼肉店」の倒産は、8月までに16件。22年の同期間に比べ約3倍に達したほか、1-8月の累計としては過去10年間で最多ペースに迫り、急増ぶりが鮮明となっている。

焼肉店業界は、コロナ禍の外出制限でニーズが高まった外食への「プレミア感」に加え、「一人焼き肉」など新たな形態のヒット、「換気がいい=三密回避」のイメージが定着。また、他の飲食店と比べ客単価が高いなどビジネスモデルの特徴も追い風に、コロナ禍の「勝ち組」として業容が拡大。

一方で、店内オペレーションが比較的簡単といった特徴から、焼肉人気に着目した居酒屋やラーメンチェーンなど異業種の参入が相次いだほか、既存大手の新規出店も重なり競争が激化。加えて、輸送コストの増加や円安の影響により輸入牛肉価格が高騰したほか、電気・ガス代、アルバイトといった人件費など運営コストも上昇する事態に。

他方、物価高騰による消費者の「値上げ疲れ」も背景に大幅なメニューの値上げは難しく、不採算店舗の撤退などに動くケースが出始め、小規模な焼肉店などでは厳しい価格競争に耐え切れなくなり、淘汰される中小焼肉店が増えているという。

足元では物価高での節約志向も重なり、外食に「特別感」を求める機会も減っている。牛肉価格の高騰・大手の参入・低価格の三重苦で、焼肉店の経営環境は厳しさが続くとみられる。