パリッコのおつまみ革命 第29回 ピリ辛サクサク! 揚げた納豆から旨味があふれ出す発酵食品のハーモニー「豆風みそ納豆」

中国に、豆(トウチ)という発酵食品があります。これは、黒豆に塩や麹や酵母などを加え作る発酵食品。旨味と塩気のかたまりで、どこか同じ発酵食品である日本の納豆にも通じる深みがあり、とても美味しいものです。

中華食材を扱う専門のスーパーなどに行くと、豆自体はもちろん、それを使った食べるラー油風の調味料なども売られていて、とても便利。たとえば、たたいたきゅうりにただあえるだけ。その他の調味料はな~んにも使わずとも、激しくうまい中華風のきゅうりのおつまみができてしまうんです。

○日本のおなじみ食材で

ただ、家の近所で中国食材を気軽に買えるかどうかは、これはもう運次第ですよね。豆最優先で住む部屋を選ぶという人はそう多くないと思いますし。

そこで今回は、日本人になじみ深い食材を使って、“なんちゃって豆入りラー油風”のものが作れないかという検証。

結果、できあがったのは“なんっちゃって”と言えるか言えないかも微妙なライン……という一品だったのですが、それはそれとして、ものすご~く美味しくて、ごはんもお酒もすすむ料理だったのです!

では作っていきましょう。小さめのフライパンの底にいきわたるくらいのごま油をしき、刻んだ鷹の爪(なければ一味唐辛子適量、辛いのが苦手なら入れなくても)を入れ、弱火でじっくりと油に香りをつけていきます。

そしたらそこへ納豆ひとパックを投入。付属のたれやからしは入れず、別のなにかに使ってください。このとき、かなり香りが広がるので、納豆嫌いの方が家にいる場合は要注意。

このあたりで火を中火くらいにして、炒めもの感覚で納豆をわーっとかき混ぜてください。何度か作ってみたところ、そのほうが仕上がりがからっとする気がしたので。そしたらそこに加えるのが「みそ」! 豆風の深みや塩気を、納豆とみその組み合わせで再現してやろうというわけですね。

しばらく炒めていると納豆特有の糸引きがなくなり、ほんのりと素揚げっぽい色味になってきますので、そしたらもう完成。

みそは小さじ1でもわりと塩辛めですし、辛いのが好きな方はもっと唐辛子を入れてもいいし、そのあたりはいつもどおり、お好みでお願いします。

こいつを食べてみたところ、すでにお伝えしたように、豆とは別もの。しかしながら、揚げてサクッとなった納豆を噛みしめると、ほくほくもちもちとした食感のなかから特有の旨味があふれ出し、そこにみそ風味も加わって、さすが発酵食品のハーモニー。

さらに、ごま油のこうばしさや唐辛子の辛味までプラスされてるんですもん。ちびちびと2、3粒ずつつまんでは、いも焼酎のロックあたりをやると、たまらなく幸せです。

この組み合わせなのでもちろん、白米にも合うし、豆腐にのせたり野菜とあえたりしてもばっちりでしょう。簡単なわりに「なんかすごいものを作ってやった」感をぞんぶんに味わえるこの一品。特に納豆好きの方、たまには気分を変えていかがでしょう?
○【材料】

・納豆:1パック
・みそ:小さじ1
・鷹の爪:1本
・ごま油:適量
○【作りかた】

1.小さめのフライパンの底全体にいきわたるくらいのごま油をしき、刻んだ鷹の爪を入れ、弱火でじっくりと香りを出す。
2.納豆とみそを入れ、火を中火にして、かき混ぜながら手早く炒める。

パリッコ ぱりっこ 1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー、他。酒好きが高じ、2000年代後半より酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。 この著者の記事一覧はこちら