「危」「毒」マークのタンクローリー「全部『危』でよくない…?」 それがダメな理由

街で見かける「危」マークや「毒」マークをつけたタンクローリー。どちらも危険そうですが、これらにはどのような特徴があり、なぜ文字が使い分けられているのでしょうか。
車体の前後に、「危」や「毒」と書かれたマークをつけたタンクローリーを見かけることがあります。ともに明らかに人体に有害な物質を運んでおり、万が一、事故で漏れ出たら一大事につながりそうですが、なぜ使い分けをしているのでしょうか。
「危」「毒」マークのタンクローリー「全部『危』でよくない…?…の画像はこちら >>「危」マークをつけたタンクローリー(乗りものニュース編集部撮影)。
「危」のタンクローリーが運ぶ代表的なものとしては石油類などが挙げられます。「毒」のタンクローリーは、ニトロベンゼン(染料や香料、医薬品などの原料)や塩酸といった化学物質が運ばれます。ともに「危」でもいいじゃないか――とはいかないのです。
これは積載物の種類により、その表示義務を規定している法令が異なるため。「危」マークは消防法関連、「毒」マークは「毒物及び劇物取締法(以下、毒劇法)」関連の法令に基づくもので、それぞれ総務省、厚生労働省と所管する国の機関も異なります。ほかにも、高圧ガスを運ぶ車両の「高圧ガス」マーク、火薬類を運ぶ車両の「火」マークなどが見られますが、いずれもそれぞれに関する法令に基づき掲示されています。
また、万が一の事故を防止するため、積載物に応じて運べる数量や、それを運ぶ容器の構造などについても、各法令で細かく定められています。また、「危」マークの車両であれば資格をもった「危険物取扱者」が乗務する必要があったり、「毒」マークの車両では、事故時に備えて防毒マスクやゴム手袋といった保護具の携行が義務づけられていたりするほか、運転手の連続運転時間なども各法令で規定されているのです。
なかには、「危」マークと「毒」マークの両方がついた車両もあります。これは、たとえば引火性のある化学薬品など、消防法と毒劇法の双方で規制される物質を運んでいるケースが考えられます。当然ながら、乗務に際しても双方の法令が規定する条件を満たす必要があります。
「危」マークと「毒」マークのタンクローリーは構造的に似通う部分が多いそうですが、おもにタンクの材質が違います。前者の場合は鉄またはアルミ製、後者の場合は鉄を腐食させる物質を運ぶケースもあることからステンレス製が多いそうです。
一方で共通する特徴も。その一つが、業界で「角(つの)」と呼ばれる機構です。万が一、車両が横転しタンクがひっくり返ったときに備え、タンク上部に、左右に伸びる出っ張りが装備されています。これは横転時、タンクがひっくり返り頂部の注入口から積載物が漏れ出す可能性を減らすため。正式には「側面枠」と呼ばれます。