自衛隊は旧日本軍の敷地や建物をいまだに使っている施設が多く、また伝統を受け継いでいる部分もかなりあるため、怪談には事欠きません。それは海の上でも一緒のようですが、海上自衛官にはそれを上回る怖いものがあるそうです。
自衛隊の職場は、旧日本軍の敷地や建物をいまだに使っているところが多いです。伝統を受け継いでいる部分もかなりあります。だからか、そうした施設で勤務する自衛官には、不思議な経験をした人が少なくないようです。
私の夫で海上自衛官のやこさんもそのうちの1人。教育隊で班長を務めていた頃は、たびたび不思議な体験をしたと語ってくれました。
たとえば当直の夜、隊舎のソファで横になっていると、ふと気配を感じた次の瞬間、何者かに肩を強く揺すられたことがあるそうです。何事かと飛び起きるも、そこには何(誰)もいない。念のために見回るものの、特に異常は見つからなかったのだとか。
「そこに“いる”よ」…海上自衛官vs幽霊 向き合い方が強すぎ…の画像はこちら >>広島県江田島の海上自衛隊幹部候補生学校の建物。旧日本海軍時代の歴史的建造物を数多くそのまま使用している(画像:海上自衛隊)。
ほかにも、使っていないはずの部屋の電気が点いていたり、集団の靴音が聞こえたりした人もいた模様ですが、基本的に害はないのでそのうち慣れるそうです。エェェェ、慣れるんだ……。
ちなみに私も、海上自衛官の妻として体験してしまったことがあります。
それは、ある艦艇に乗ったときのこと。お盆にやこさんの荷物を取りに行った際、クルマで待機するには暑すぎたので、私も一緒に艦内に入れてもらったのです。そして居住区画に向かって艦内を歩いていたところ、ある一角で寒気とともに全身に鳥肌が。
思わずやこさんに「なんか寒気がするんだけど」というと、「ああ、そこは“いる” からね」と、さらっと返されました。いや、もうちょっと心配してよ。
そのあと、いろいろ聞いたら、“いる” のは生霊とのことでした。慣れると種類もわかるようになるのかもしれません。
そんなこと聞いたら、色々ツッコミたくなったものの、私自身この世にはまだわからないことがたくさんあるので、幽霊がいてもおかしくない程度には思っています。ただ、海上自衛隊はもはや「いる」「いない」ではなく、「そんなことより仕事に集中しろ」的なムードが高いので、いてもいなくても変わらないみたいです。
よくよく考えてみれば、自衛隊の敷地に幽霊がいるとしたら旧海軍時代からの大先輩でしょうから、後輩たちが元気にやっているか見守ってくれているのかもしれません。そう考えると、むしろ感謝の思いの方が強くなります。
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護衛艦でのヘリコプター夜間発着訓練。大きく揺れる艦上で灯火管制が敷かれているなか行うため、危険性は昼間とは比べ物にならないほど高い(画像:海上自衛隊)。
別の日、やこさんに「心霊体験をすると家に帰って来たとき、眠れなくなったりしない?」と聞いてみたら、それに対する彼の返答は「それで寝坊して後発航期(遅刻して艦に乗り遅れること)になるほうが怖いよ」というもの。たしかに現実が一番怖いよな、と妙に納得してしまいました。
余談ですが、やこさんは自身の体験談から「幽霊よりも怖いのは夜の海」とよく話しています。
夜間の航行中に海を見ると、真っ暗な海面へ吸い込まれそうになるのだとか。周りには目印になるものがなく、空と海の境目も見えない中で、ふと自分がどこにいるのかわからなくなる感覚は何よりも恐ろしいのだそう。
確かにそれは怖すぎるかもしれません。