来年から新制度が始まることで、最近ますます話題になっている「NISA」。一方、現行のNISAについては今後制度が廃止となり、新規に口座開設できるのは2023年までです。現行NISAの中には未成年向けの「ジュニアNISA」もありますが、こちらも今年で制度が終了してしまいます。
では、ジュニアNISAが廃止された後、預けたお金はどうなるのでしょうか。また、ジュニアNISAの代わりになる制度はあるのでしょうか。気になるジュニアNISAの今後について解説します。
■ジュニアNISAの制度はいつまで?
ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)とは、0~17歳を対象としたNISAです。通常のNISAと同じように、株式や投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益が非課税になります。ジュニアNISA口座で投資できる上限額は年間80万円まで、最大5年間非課税で保有できます。
金融庁「ジュニアNISAの概要」より引用
ジュニアNISAは、主に子どもの進学や就職など将来に向けた資産形成を目的にしています。口座の名義人は未成年の子どもですが、実際の運用・管理は、原則として親権者や祖父母(二親等以内の親族)が代理で行います。
金融庁「ジュニアNISAの概要」より引用
子どものための資産形成に役立つジュニアNISAですが、この制度は2023年で廃止になることが決定しています。そのため、新規で投資できるのは、2023年12月末までです。ただし、ジュニアNISA口座を新規で開設したい場合は、9月末までにジュニアNISAを取り扱っている金融機関へ申し込む必要があります。口座開設を考えている方は、早めに手続きを行いましょう。
■ジュニアNISA廃止後、預けたお金はどうなる?
すでにジュニアNISAを活用して資産形成をしている、また、これから口座開設をして投資を始めたいという人もいるでしょう。ジュニアNISAが廃止した後、預けたお金がどうなるのか気になりますよね。
これまで、ジュニアNISAに預けたお金は、5年間の非課税期間が終わる際、新たなジュニアNISAの非課税枠に「ロールオーバー」することで、継続して非課税で保有することができました。
2024年以降は、新たなジュニアNISAの非課税枠は設けられません。しかし、2024年以降はロールオーバー専用の非課税枠として新たに設けられる「継続管理勘定」で成人になるまで非課税で保有することができます。なお、継続管理勘定へは自動的に移管されるため、手続きは不要です。
では、ジュニアNISAに預けたお金の払い出しについてはどうでしょうか。
これまでのジュニアNISAでは、口座名義人の未成年者が18歳になるまでお金を払い出すことができませんでした(※)。災害時などやむを得ない場合は例外的に非課税での払い出しが認められていましたが、それ以外で成人年齢に達する前にお金を引き出したい場合には、運用益に課税され、ジュニアNISA口座は廃止されることになっていたのです。
しかし、2024年以降はこの払い出し制限が解除され、子どもが何歳であっても保有している金融商品を売却し現金として引き出すことができるようになります。
ただし、成人年齢に達する前に非課税で払い出すには、ジュニアNISA口座で保有している株式・投資信託等の商品や現金の全てを払い出し、ジュニアNISA口座を閉鎖しなければなりません。
一部だけを売却して払い出す、または受け取った配当金や売却して貯めておいた現金の一部を引き出し、残りはジュニアNISA口座で運用するなどはできませんので、注意が必要です。
(※)その年の3月31日において18歳である年の前年の12月31日まで払い出し不可
■ジュニアNISAの代わりになる制度はある?
今年いっぱいで廃止となり、来年からは新規の口座開設も投資もできなくなってしまうジュニアNISA。これに代わる制度自体はありませんが、今後は来年1月から始まる「新NISA」を最大限活用するのがおすすめです。
新NISAは、現行NISAのさまざまな点が改良された新しいNISAで、特に、年間投資上限額は「成長投資枠」が240万円、「つみたて投資枠」が120万円、合計360万円まで引き上げられました。現行NISAの年間投資上限額は、一般NISAが120万円、つみたてNISAが40万円ですので、それぞれ2倍、3倍に増えた形です。
また、今年中に現行NISAを始めておけば、新NISAと一般NISAやつみたてNISAを併用でき、非課税枠はさらに広がります。ジュニアNISAが廃止になっても、教育資金を準備する手段としてこれらを活用できるでしょう。
ただし、新NISAは18歳以上から利用可能で、未成年の名義では口座開設できませんので、注意が必要です(2024年1月1日時点でジュニアNISAの口座名義人が18歳を迎えている場合、新NISAの口座が自動で開設される)。
もちろん、今すぐジュニアNISA口座を開設して今年中に投資を始めれば、最大80万円を子どもが18歳になるまで非課税で運用できます。
2024年以降はいつでもジュニアNISA口座から払い出しができますので、急にお金が必要になった時にも対応できるでしょう。たとえば、予定していなかった私立高校への進学が決まった場合は、ジュニアNISAから資金を引き出して入学金などに充てられます。
ジュニアNISAの廃止と入れ替えで来年からは新NISAが始まりますが、どの制度で資産形成を行うのか考え、非課税枠を上手に活用していきましょう。
■ジュニアNISAの利用を考えるなら今すぐ口座開設を
ジュニアNISAの制度は、今年いっぱいで廃止されます。これに代わって教育資金を貯めたいなら、来年から始まる新NISAを活用するといいでしょう。また、ジュニアNISAの口座開設を予定している場合、締切が9月末に迫っていますので、詳細を確認のうえ急ぎ手続きを行いましょう。
武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら