キリンビール、RTDの新たな成長エンジンとして「上々 焼酎ソーダ」を発売 -「2023年 下期RTD戦略・新商品発表会」

キリンビールは、メルシャン八代不知火蔵の本格麦焼酎原酒を一部使用したRTDの新ブランド「キリン 上々 焼酎ソーダ」(350ml缶・500ml缶)を、10月17日より全国発売することを発表。その発売に先駆けて、「2023年 下期RTD戦略・新商品発表会」を開催した。

社会・酒類市場を取り巻く環境変化について、「5月に新型コロナが5類に移行したことを受けて、消費マインドが徐々に高まっていることを実感している」と話すキリンビール マーケティング部 RTDカテゴリー戦略担当 カテゴリーマネージャーの松村孝弘氏。また、コロナ禍を経て、より価値を感じているモノへの消費意欲が上昇しているほか、多様な価値観の広がりが顕著になってきていると指摘。その中で、10月に予定されている酒税改正についても、RTDは、2026年10月の酒税改正まで現行の税率が維持されるということを背景に、さらに注目が集まっているという。

実際、RTD市場は経年的に大きく伸長しており、研究開発の向上や商品数の拡充による、選ぶ楽しさが支持を集め、2022年までの過去10年で約2倍に拡大。非常に重要で大きな市場になってきている。さらに、ビール類とRTDを併売するところも顕著に増加。選択肢のひとつとしてRTDの存在感が高まってきており、ビール類・RTD市場におけるRTDカテゴリ構成比も上昇している。

RTDカテゴリについては、色々な味やフレーバーが楽しめるところに期待が高く、多様な楽しみ方ができるカテゴリとなっているのが特徴。直近では様々な環境変化を受け、「スッキリ甘くない」「食事中に楽しめる」「本格感」を求める傾向がでてきており、これらのニーズを捉えていくことが、さらなる市場拡大に向けて、重要になってきている。

2023年下期のRTD戦略については、「強固なブランド体系の構築」と「新たな成長エンジンの育成」の2つに取り組んでいくという松村氏。「強固なブランド体系の構築」については、「氷結」ブランドを中心に、支持の高い既存ブランドをさらに強化。「氷結」ブランドは非常に好調で、1~8月の販売数量は前年比約7%増と好調に推移しているという。春以降にリニューアルされた「氷結」のスタンダードが堅調に推移しているほか、「氷結 無糖」シリーズはレモン、グレープフルーツの既存フレーバーが、「スッキリ甘くない」「食事に合う」というニーズに応えたことに加え、7月にはシークヮーサーを新たに投入。

また、さらなる成長を目指して、「氷結 無糖」シリーズのリニューアルを計画。これによって、「無糖チューハイカテゴリをさらに活性化していきたい」と力を入れる。

一方、「新たな成長エンジンの育成」として、4月に発売された「麒麟百年」と、今回発表される新ブランドをピックアップ。キリングループの強みである発酵技術を活かした「麒麟百年」は、同社初となるビール酵母で発酵させたレモン果汁を一部使用。高付加価値ブランドとして一定の評価を受けているという。そして、今回発表された「キリン 上々 焼酎ソーダ」は、「はじまってるよ。焼酎ソーダ。」をキーメッセージとして、消費者ニーズに応え、新たな選択肢として提案していきたいとの展望を示した。

同社では、ウイスキーやジン、焼酎といった特徴のある原酒のソーダ割りを“原酒ソーダ”と定義。「食事に合う」「本格感」を理由に、原酒ソーダ市場が非常に好調に拡大している中、ウイスキーハイボール以外の、より多くの選択肢を求める潜在ニーズに対して、新たな選択肢として「キリン 上々 焼酎ソーダ」を提案することで、さらにRTDの魅力化を図っていく。

新ブランドは、「心置きなくお酒を楽しみたいというお客様に、いつでも安住の心地を感じていただきながら、気分上々な生活に貢献する」ことを目指しており、この価値を商品名を通じて伝えたいという思いから、「上々」という商品名が付けられたという。

なお、2023年の「氷結」ブランドの販売目標は、約4,550万ケースで、前年比でプラス0.8%、「キリン 上々 焼酎ソーダ」は、年内に約80万ケースの販売を目指すとのこと。

続いて、キリンビール マーケティング部 商品開発研究所中味開発グループの増崎瑠里子氏が、新発売となる「キリン 上々 焼酎ソーダ」の中味へのこだわりや特徴を紹介。メルシャンとキリンビール、双方の技術や知見を活かした商品で、焼酎にはメルシャン 八代不知火蔵の本格麦焼酎を一部使用しているのが特徴。八代不知火蔵は約80年の歴史をもつ焼酎蔵で、日本三大急流のひとつである熊本・球磨川の伏流水を使用。経験豊かな蔵人と種類の異なる蒸留釜によって、特徴豊かでユニークな焼酎が作り出されている。

この本格麦焼酎の味わいを引き立てるために、キリンビールの中味開発の知見を活かし、焼酎に合う素材の選定や組み合わせを検討。試行錯誤の上、深みをアップさせるための「米麹抽出物」、飲みやすさをアップさせるための「食塩」をチョイス。さらに、焼酎の本格感や満足感がありながらも、スッキリと爽やかな味覚を実現しており、非常に飲みやすい味わいになっているそう。

RTDに対して、「食事中に楽しみたい」というニーズが拡大している中、「キリン 上々 焼酎ソーダ」は、「このニーズに応えるべく、様々な料理に合う食中酒となっている」という増崎氏。

料理に合う理由を香味曲線に沿って解説し、「負担なく飲み続けられ、食事の邪魔をせず引き立てる」味わいを実現していると強調する。さらに、甘味や酸味といった基本味を数値化するOISSY社のAI味覚センサー「レオ」を使って、料理との相性を分析した結果、特に「サバの味噌煮」や「肉じゃが」、「マグロ刺身」など和食との相性が非常に高くなっているとのこと。中でも「サバの味噌煮」は、同社が過去に分析したRTDとの食相性の中でも、もっとも高いスコアとなる「99.1点」を獲得している。

糸井一臣 この著者の記事一覧はこちら