【千葉魂】勝者の音と敗者の音 悔しさ決して忘れない 千葉ロッテ

試合後、三塁側ベンチ後ろにある食堂に選手たちを集めた。9月20日、京セラドームでのバファローズ戦。目の前でリーグ優勝が決まり、胴上げを目にした。選手たちが集まった食堂は静寂に包まれていたが、外からはバファローズファンによる地鳴りのような大歓声が漏れ聞こえた。そこに勝者と敗者の音があった。
「おつかれさん。これで優勝が決まった。見てた? あれが我々の経験したことのない勝者の音。そしてこれが敗者の音や。よく覚えておいてくれよ」
吉井理人監督は静かに語り始め、時に熱を帯びながら強く激しく選手たちに呼びかけた。選手たちの言葉も聞き、悔しい想いをみんなで共有すると「やり返すチャンスはある。みんな気持ちを切り替えて頑張っていこう」と締めた。
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この日の試合は2点リードのまま七回に突入をしていた。目の前での胴上げを阻止すべく挑んだ一戦。しかし、わずかなほころびをチャンピオンチームは見逃さなかった。2死走者無しからゴンザレスに死球を与え出塁を許すと四球を挟み6安打。怒とうの攻撃を受け、一挙6点を許し逆転された。マウンドにいたのは今季、ブレークした4年目の横山陸人投手。あと1アウトだったが、途中降板。結果的に負け投手になった。超満員に膨れ上がったドーム。相手ファンによる大歓声が巨大な渦となりマウンドにいる22歳の若者に一斉に襲い掛かったようなイニングとなった。
指揮官は試合後、横山に「マウンドで動じていたな。あそこでも動じずに投げられるようにならないとな。これから頑張っていこう」と優しく声をかけた。若者は唇をかみしめながら応えた。
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「今日をチャンスに変える。」をスローガンにリーグ優勝を目標に挑んだシーズンは128試合目で夢ついえた。開幕当初は首位を走りながらも6月27日に首位から陥落し、最後は大きく引き離されバファローズのリーグ3連覇という偉業を許した。試合終了後、ベンチにいる誰もが微動だにせずバファローズの胴上げを凝視した。自分へのふがいない想い。悔しさ。後悔。様々な想いが交差をしていた。
「今日はあえて優勝のマウンドでの輪、喜びの音、そういうのを見てもらったり、聞いてもらったりした。あれが我々の目指す勝者の音だと。悔しい時の音はもういい。今度はあれが出来るように、ああいう音を出せる日が来るように頑張ってもらいたい」と試合後、指揮官はメディア会見で悔しさをかみしめるように口にした。
2023年の戦いは終わったわけではない。クライマックスシリーズ。そしてその先を目指して戦うだけ。敗者の音を忘れることなくマリーンズは前を向き勝ち上がっていく。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)