黒毛和牛のパティが10枚! ヘンリーズバーガーのモンスターは焼き方に秘密あり?

食欲の秋。「デカ盛り」を特集するにあたり、味も見た目のインパクトも十分な逸品はないかと考え始めたところ、相談してみるのにぴったりな御仁が思い浮かびました。ハンバーガー探求家の松原好秀さんです。オススメは黒毛和牛パティ10枚の怪物バーガー!?

○デカいだけでは意味がない

「オススメのデカ盛りバーガーを教えて」とマイナビニュースからオーダーがありました。さまざまな巨大バーガーが思い浮かびますが、でも、ムチャをすればタテにもヨコにも大きくはできるワケで、大事なのは、食べていて心から「おいしい!」と思えるデカ盛りではないかと。どうせなら、ちゃんと中身のあるデカ盛りをご紹介したく、そこでひらめいたのが「黒毛和牛」の逸品です。

そのハンバーガーを食べられる店の名は「HENRY’S BURGER」(ヘンリーズバーガー)。「食べログ ハンバーガー 百名店」に名を連ねる有名店で、黒毛和牛のバーガー店として知られています。代官山が1号店ですが、今回は自由が丘店をご紹介します。カウンターのみ7席の小さな店ですが、屋上のテラス席も使えて、デカ盛りに挑むには適した環境かと。

メニューはシンプル。「和牛」のバーガーがS/M/Lの3品、「和豚」を使ったバーガーも3品。それだけ。ベーコンバーガーやアボカドバーガーはレギュラーメニューにありません。

○肉とチーズのみ! シンプルながら奥深いバーガー

肝心のデカ盛りはどこかというと、メニュー右下隅をよーく見ると、小さくこうあります……「モンスターバーガー¥6,480」。これがデカ盛りバーガー。初めての人は気付かないでしょう。注文できるのは店内利用時のみ。予約不要。テイクアウトとデリバリーは受け付けていません。

通常の「和牛」バーガーにはトマトとレタスが入りますが、モンスターバーガーは野菜なし。バンズの間に黒毛和牛パティ×10枚、チェダーチーズ×10枚、そこへソースがかかる、それだけのバーガーです。

ここまでシンプルだと、バーガーのおいしさは「肉」の良し悪しにかかってきます。ヘンリーズは東京・市ケ谷の「炭火焼肉 なかはら」が始めたバーガー店。その「なかはら」が一頭買いしたA5ランク黒毛和牛の肉で作るバーガーが最大の売りです。スネ肉をメインに、焼肉では使わない部位や端材を無駄なくパティにしています。スネと聞くと大したことない感じですが、赤身中心で肉の味が濃く、挽肉に適した部位ですね。

焼き方はスマッシュ?
その黒毛和牛の複数の部位を合わせて8mm前後の粗挽きに。スーパーで売っている挽肉は3mmほどなので、けっこうな粗さです。「つなぎ」はなし。正真正銘100%の黒毛和牛。この日の和牛は近江牛でした。銘柄にこだわらず、その時々の競りでよいものを選んでいるそうです。さて、ここからが問題。この挽肉を平たく円盤状に成形するのが一般的ですが、ヘンリーズでは「スマッシュバーガー」と呼ばれる特殊な方法で調理しています。

ボール状に丸めた挽肉を鉄板に乗せ、上から「ギューッ!」と押し潰す……これがスマッシュバーガー! すると薄く平らに広がって、外側ほどカリカリに焦げ、最も圧縮された中心部はしっとりジューシーな焼き上がりに。

スマッシュバーガーはパティを成形する仕込みの時間が不要。しかも薄く伸ばして焼くので、火がよく入り、調理時間も短くて済みます。そんな利点もあって、国内のバーガー専門店でスマッシュを始める店が近年増えています。ヘンリーズバーガーは創業した2015年以来、ずっとスマッシュで焼いてきたので、日本におけるスマッシュバーガーの先駆的なお店といえるでしょう。
○飽きずに食べきれるのか

さぁ、ついに現れたモンスター。このゴツゴツとした見た目! 確かに「化け物」感あります。スマッシュした100gパティ10枚にチェダーチーズ10枚、上から自家製ソース、バンズは高田馬場「馬場FLAT」特注のサクッと歯切れのよい傑作。高さ約16cm。重さ782g。もっと重たいデカ盛りバーガーは存在します。天を突くようなタワーバーガーもありますが、このバーガー最大のポイントは「黒毛和牛」でできていること。自家製ソースはケチャップとマヨネーズをベースに、ピリ辛のスパイスやスイートレリッシュも入って多彩な味わいです。

かぶりつけば、ソースのギュッと締まった酸味に続き、大胆に焦がしたビーフの風味と噛みごたえ。パティの外側部分はよく焦げているので、食事の序盤はコリコリとクリスピー。それが中心へ進むにつれてソフトに変化します。その「ふわっ」とした食べ口が堪りません!

細挽き肉では「べしゃっ」と潰れてしまうところを、この粗挽きパティは肉の粒立ちがハッキリしていて、その粒ひとつひとつを噛み締めてゆくような確かな味わい。だからこそ、10枚重ねが飽きずに食べられるワケです。

味加減もちょうど。塩コショウとチーズの塩気だけでずっと食べていられて、ドリンクも1杯で足りました。ラストスパートで「追いソース」を10gほど足してもらいましたが、余裕の完食。おしゃべりしながら26分19秒のタイム。なお、「何分以内に食べたら無料」とか、そういうのはありません。

おいしく食べられるのは良質・上等な黒毛和牛を使っているから――それに尽きます。ぜひ浴びるほどの黒毛和牛をご堪能下さい。近江牛1kgの値段と考えると、6,480円は全くもって高くなし!

●information
HENRY’S BURGER 自由が丘店
住所:東京都目黒区自由が丘2-8-8
営業時間:11:00~20:00

松原好秀 まつばらよしひで ハンバーガー探求家。評論家。2014年に『ザ・バーガーマップ東京』(幹書房)出版。ハンバーガー関連の企画でテレビ&ラジオの出演多数。映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(2017)の公開記念キャンペーンも担当 この著者の記事一覧はこちら