車の色、白や黒はもう古臭い!? トレンドは「パステルカラー」 “車らしからぬ色”の探求鮮明に

自動車塗料メーカーのBASFが、最新の自動車カラートレンドを発表。今年は「何色だかよくわからない色」のトレンドのなかでも、かなり明るいパステルカラーのサンプルが目立ちました。伝統的ではない色彩が受け入れられてきているようです。
「パステルカラー」のクルマが今後増えていくかもしれません。ドイツの化学メーカーの日本法人BASFジャパンが2023年9月28日、2023-24年版の「自動車カラートレンド予測」を発表。その報道向け説明会が同日、横浜市にあるBASFジャパンの工場にて開かれました。会場に並べられたカラーサンプルは、例年よりもかなり明るい色が目立ちました。
車の色、白や黒はもう古臭い!? トレンドは「パステルカラー」…の画像はこちら >>アジア太平洋地域のキーカラー「ELECTRONIC CITRUS」(画像:BASFジャパン)。
カラートレンド予測は今後3年から5年のあいだに自動車のボディーカラーの傾向へ影響を及ぼす社会的変化や技術の進展などを分析し、複数のカラーサンプルとともに発表しています。BASFはこれらをたたき台に、自動車メーカーへ新車のカラー展開を提案しています。
BASFジャパンのカラーデザイナーである松原千春さんは、今年のカラートレンドの傾向のひとつとして「中間色パステルの出現」を挙げます。
たとえば米州(南北アメリカ)のキーカラーとして打ち出された「ZENOMENON」は、緑にも青にも、紫にも見えるような色。アジア太平洋のキーカラー「ELECTRONIC CITRUS」は、ライトグリーンの蛍光色に、青いハイライトを加えたものだそうです。このような「中間色」かつ、さらに明るいパステルカラーのサンプルが目立ったのが今年の特徴です。
「『何色とはいえない』『なんだか分かりにくい色』というのがここ数年の傾向でしたが、そこから新たに方向が見えてきています。伝統的な自動車カラーではないものがトレンドになりつつあります」(松原さん)
特にこの傾向は、EVの普及が進む中国では劇的だといいます。松原さんによると、「10年、15年くらい前の中国では白、黒など原色調のカラーがメインでしたが、今はものすごく中間色が増えています。自動車市場が成熟し、色の幅も拡がりました」「EVの普及で、今まで絶対売れなかったような色が出てきている」とのこと。
背景には、「若者が自動車をこれまでとは違う視点で見ている」ことがあるといいます。「今までの伝統的なクルマは買いたくないという若者も出てきています。そうした新しいクルマには、新しいカラーが必要です」と松原さんは話します。
今回のカラートレンドは、現実とヴァーチャルが融合しつつある時代へ、さらに「Chat GPT」などの生成AIがより身近になり、今までになかったものが加わっていく社会の変化を捉えているといいます。
「(こうした新しい技術が)人間の考え方、感じ方にも多大な影響を及ぼします。柔軟で開放的な考え方、それぞれの個性を尊重する考え方へと、私たちは変わってきました。それはコアの部分で続いていきます」(松原さん)
昨年のカラートレンドでは、時代の「過渡期にいる」ことを捉え、中間色などのあいまいな色を打ち出してきたものの、今年はその先が少し「見えてきた」状況を捉えたといいます。
そうしたなかで、表現豊かなパステルカラーは、「伝える・声を上げる」という意志を反映しているとも。また、パステルカラーはゲームなどでもよく使れており、ヴァーチャルと現実を融合したような色でもあるといいます。これが、クルマをより「カジュアルでガジェット感覚」(松原さん)に捉える若者に受け入れられているのかもしれません。
「新しい技術で価値観は変わったけれど、それを具体的に生活へどう取り込むんだろう――そう考えていたところが、アプリなどで身近に『下りてきた』のが今の状態です。気づいてみたら、そうした技術を標準で使っているのが当たり前の時代になることが、すぐ先に見えています」(同)
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カラーサンプルを説明する松原千春さん(乗りものニュース編集部撮影)。
そして、中間色やパステルカラーではない、伝統的な自動車のカラーも、「刷新する時期が来ている」といいます。ブルーやブラックなど、原色的な色に様々なアプローチを加えたカラーサンプルも多くありました。
ちなみに今回は、「AIを活用してつくったブラック」のカラーサンプルもあるとか。ラグジュアリーなブラックとはどういうものかをAIに聞き、AIが回答した結果をアレンジするというカラーづくりにトライしたそうです。このほか、古タイヤから取り出したカーボンブラックを塗料に活用するなど、サステナビリティを意識した技術も盛んに取り入れているといいます。