〈四谷大塚を書類送検〉元講師2人目の逮捕に被害女児の保護者が怒り心頭「娘はトラウマになり『もう塾には行きたくない』と」ずさんな管理体制に四谷大塚も個人情報保護法違反の容疑で書類送検

中学受験進学塾の名門「四谷大塚」を舞台に女児生徒がわいせつ被害を受けていた問題で、新たに別の元講師が現職時代に盗撮をしたなどとして逮捕されたことが衝撃の余波を広げている。問題解決に対する塾側の「消極的」な姿勢に保護者たちは不信感を強め、学びの場所を失った子どもたちも窮地に立たされている。
今回、警視庁が新たに逮捕した中村成美容疑者(26)=東京都あきる野市=は同塾では国語を教えていた。一連の事件の発端になった、森崇翔容疑者(24)=同日野市=に自身の子供が盗撮され、その動画をロリコン仲間たちのSNSにさらされたある保護者は今年5月、中村容疑者に通塾についての相談をしたという。
中村容疑者(撮影/村上庄吾)
「娘の学習態度が定まらなかったので、場合によっては塾を辞めることも考えなければと思い、5月上旬に『今すぐではないのですが、退塾したい場合はいつまでに申告して手続きすればいいですか』と問い合わせました。この際に電話を受けてくれたのが中村講師で、娘の様子を伝えると『ちょっと考えてみます』ということでいったん会話が終わりました。しばらくすると、中村講師から『(担任の)森が直接、娘さんと話したいと言っています。校舎に来てお話できる時間ありますか?』と電話がかかってきたんです」
森容疑者(撮影/集英社オンライン)
この呼び出しで教室に向かった女児が森容疑者に何をされたかは、♯1で詳報している。当然、女児Aさんも保護者も、塾の講師が邪な欲望を抱いて呼び出したことなど、知る由もなかった。「この際にも動画を撮られていたので、中村講師が森講師の盗撮趣味を知ったうえで仲介していたとしたら、組織ぐるみだったと言われても仕方がないでしょう。当時は私としては、娘にまだ塾を頑張ってほしいと思っていましたし、森講師も熱心な先生だと思っていました。授業がなくても塾は自習のためによく訪れていたので、授業のない日に呼び出されてもおかしいなんて一切思いませんでした。実際に中村講師からは『森先生は休みなんですけど、娘さんと話がしたいので出てくると言っています』と水を向けられたんですよ。今、思えば先生が休みをつぶしてわざわざ出てくるのもおかしな話かもしれませんが、当時は『なんて熱心な先生なんだろう』と。情けない話なんですけど、何も気付かずにいました」(前同)
森容疑者が書きこんだSNS(知人提供)
中村容疑者がどんな思いで“仲介”をしていたのかはわからないが、結果的に同じ塾内にロリコン趣味を持つ講師が複数いて、いずれも逮捕されたことに、この保護者はショックが隠せない様子だ。「四谷大塚の管理は本当にずさんです。そもそも塾でこんな盗撮行為が起きること自体がおかしいけど、事件後の対応もお粗末すぎる。森容疑者が逮捕され、別の先輩講師についても疑惑があることを(集英社オンラインの記者に)教えていただいたので、すぐに伝えたのですが『きちんと調べているので大丈夫です』という反応でした。他人事のように感じましたし、本当に塾としての責任を感じているのか不安になりました」
この保護者が8月中旬、校舎長と執行役員ら幹部3人との話し合いを持った際も、当事者意識の希薄な対応に呆れたという。「この時点でも『四谷大塚の先輩講師にもう一人怪しい方がいるという話があるみたいですが、どのように調査されたんですか』と質しましたが、返ってきた答えにあ然としました。『きちんと調べて対応していますので、そういったご心配はないと思っていただいて大丈夫です。こういうことになってしまったので無理にとは言えませんが…』と今後も娘に通塾してほしいと言うのです。どういう聞き取りをしたのかと聞いても、『きちんとすべての職員を調べたので大丈夫です』と繰り返すだけでした」森容疑者と「同好の士」である疑惑を集英社オンラインが報じた(♯8)当日の8月22日、中村容疑者は四谷大塚を「自主的に退社」し、その後は世田谷区内のアパートを引き払って実家に閉じこもっていたとみられる。先述の保護者はこれについてもため息をついた。「四谷大塚には『森とLINEしている相手のLINEのアイコンまでわかってるみたいなので、きちんと調べて把握してください』と伝えたのに『大丈夫です』と生返事が返ってきただけ。結局は当事者としてきちんと調べてないし、森講師を懲戒解雇した時点で、塾としては他人事のような様子でした」
森容疑者がSNS上のロリコン仲間に“同好の士”である中村容疑者の存在を報告した際のやりとり(知人提供)
信頼していた講師に何度も裏切られ、傷ついたこの保護者の娘はすでに、四谷大塚に見切りをつけたという。「娘には事件の内容すべてを伝えたわけではありませんが、講師が逮捕されたことは伝えています。事件のせいで中学受験を諦めるというのは違うと思い、他の塾に移ろうかという話もしましたが、本人は居残りがある塾に通うことについて『絶対やだ』と言うんです。この事件が私たち一家のトラウマになっていて、娘は仮に体験入学に行っていい先生に出会っても『また裏があるんじゃないか』と恐怖を感じるようになりました。事件については『お父さんともこのことを話したくない。誰とも、このことを話したくない』と深く傷ついているのです」
四谷大塚が「事件後」に保護者に対して行った「補償」も、決して誠意が感じられるものではなかったという。「森容疑者の逮捕後に『Aさんへの対応としては、入会金も含めてかかったお金は全てお返しすることに決まっています』と言われましたが、それもまったく行動が伴わないものでした。判断する権限のない校舎長に窓口対応を任せ放しで、当の校舎長は『本部と検討中』と繰り返すだけでした」
四谷大塚・本部(撮影/集英社オンライン)
このままでは埒があかないと焦燥感を募らせた保護者は、弁護士を立てて四谷大塚側に経緯の説明と事実確認を求めたのだが…。「返すと言いながらずっと放置していた塾の月謝など返金分を、すぐに振り込んできたんです。しかし、私が計算した額よりも少なかったので弁護士経由で問い合わせると、10日以上経ってから『入会金は含んでません』との回答がきました。入会金は2万円程度なので、正直どうでもいいんです。だけど自分のほうから言い出したことを反故にして、こちらをバカにしてるとか思えない。軽く見られてるのが、すごく伝わってくるんです。なんでこんな嫌な思いをしなければならないのか。講師が逮捕されたからって終わる話ではないし、私たちはずっと苦しんでいるんですよ」四谷大塚は大勢の子どもたちを預かる伝統ある学習塾としての責任を、どうとらえているのか。被害にあったAさんの保護者の懸念は尽きない。「今は塾側も弁護士を立てていて、解決に向けての提案を協議中なので待ってほしいと言われていますが、四谷大塚の対応には本当におかしな点が多いんです。8月中旬の面談でも『校舎長はまだ28歳だからすごく力不足です。でも一生懸命対応してます』といったアピールをものすごくしてくるし、同席した執行役員も『そうですね』とうなずくばかりでした。でも我々はそんな答えを求めているわけではなくて、塾側が今後どう対応していくかについて、具体的な話し合いがしたいんです」中村容疑者の逮捕後、四谷大塚の本部関係者に電話で問い合わせると「(逮捕されたことは)何も知りませんでした。寝耳に水です」との回答があった。逮捕されたふたりのほかにも問題講師はいるのかいないのか。仮にいたとしても、こうした「他人事」のような対応では、それらを炙り出すのもままならないだろう。警視庁は本日10月2日、生徒たちの名前、住所などの個人情報をずさんに管理していた四谷大塚に対し、個人情報保護法違反の疑いで書類送検する方針だ。
森容疑者によって晒されてしまった個人情報(知人提供)
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