サントリーは10月5日より、業務用の新ビールサーバー『nomiigo』(ノミーゴ)のテスト展開をスタートしている。常温の「ザ・プレミアム・モルツ350ml缶」をセットすれば、わずか数秒で注ぎ口から「適正な温度(4度程度)のビール」と「口あたりの良いクリーミーな泡」が抽出できるという。関係者は「樽生ビールサーバーの導入が困難だった飲食店で、一杯一杯、あけたての美味しさを提供していきます」と意気込む。
○■どのような仕組み?
nomiigoは、常温の缶から「まるで飲食店の生ビール」(関係者)を注げるのが特徴のビールサーバー。あらかじめ中味(缶)を冷やしておく必要がなくなるため、飲食店にとってもメリットが大きい。なお冷えた缶も使用できる。
ひと缶ずつの注ぎ切りとなるため、一杯一杯、あけたての状態で利用客に提供できる。また配管内にビールが残らないので、洗浄時のビールロスも最小化。くわえてメンテナンスが容易なため、店舗スタッフの作業負担の低減も期待できる。
使い方は簡単で、まず未開栓の「ザ・プレミアム・モルツ350ml缶」を入れてセットボタンを押す。すると缶が内部に取り込まれる。あとは数秒待つだけで冷えたビールを注げる状態になるので、コックを倒してジョッキに抽出する。関係者の話では、nomiigoの内部で氷水のような状態の層(冷却水槽)をくぐらせることで、ビールを瞬時に冷やしているという。
サントリーでは2021年4月に、固定観念に捉われずに新たな価値を提案していく「イノベーション部」を創設した。第1弾として『ビアボール』(2022年秋)、第2弾として『サントリー生ビール』(2023年春)を発表してきたが、今回のnomiigoは第3弾という位置付け。着想から完成まで2年以上の時間をかけたという。
サントリー ビールカンパニーの多田寅氏は、コロナ禍を経て消費者のニーズが変化してきた、として次のように説明する。「コロナ前と比べて、皆さんの外食の頻度が増えました。また最近では、居酒屋だけでなくファストフード(丼系)、カフェ、ハンバーガーショップ、ファミレスでも飲酒意向が向上しています」。
外食の場では、料理やドリンクに”質”の良さを求める消費者が増加傾向。さらに外食のときに飲むアルコールについて聞くと「ビール」と答えた人が40%に迫る勢いで、2位のレモンサワー(25%程度)を大きく引き離している。
これを受けて多田氏は「外で美味しいものを食べながら、美味しいビールを飲みたいと考えるお客様が顕在化してきました。そこでサントリーでは、ずっとお世話になっている飲食店の皆様とがっちりタッグを組んで、消費者の皆様にnomiigoという新しい提案を広めていきたいと考えています」と語った。
このあとサントリー ビールカンパニーの伊藤優樹氏が登壇。開発の背景について「現行の樽生サーバーは品質維持のために10、15、20L(リットル)といったサイズの樽を3日間で飲み切らなくてはならず、このため一定のビール販売量が見込める飲食店しか樽生サーバーを設置できませんでした」と説明する。
そこで、これまで樽生サーバーを置けなかったような飲食店を中心に、具体的にはファストフード、ラーメン屋、ファミレスなど「ごはんと一緒にビールを楽しみたいお客様が訪れる店舗」(伊藤氏)において導入の商談を進めていく。基本的には1日のビール消費量が10杯未満の店舗が対象で、それよりも大きな規模になると樽生ビールサーバーのほうがコストパフォーマンスが良くなると明かす。
今後の展開については「当初はテストマーケティングとして100台を目処に設置していきます。どこに投入すべきか、この段階で検討を重ねたい。その後、中期目標としては(今後5年くらいを目処に)必要とされる飲食店に向けて1万台を導入していきます」と説明した。
このあと質疑応答の時間がもうけられ、多田氏、伊藤氏が記者団の質問に回答した。
業務用だけでなく一般にも販売(あるいはレンタル)していく考えはないのか、という質問には「いまの段階では業務用を展開する考えですが、ゆくゆくは個人向けも検討していきたい」と回答。また350ml缶のほかのビール商品、あるいは500ml缶にも対応できないか、という質問には「現在はザ・プレミアム・モルツ350ml缶のみの対応になります。この先、現場での使われ方を確認しながら、ほかの容量についても検討していければ」と話していた。
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら