共働きで子どものいない夫婦である「DINKs」。一般的には家計に余裕があるように見えるDINKsですが、実は、お金に関する潜在的な問題が多いという面も持っています。また、家計にルールがないという家庭も少なくありません。そこでこの記事では、DINKs家庭の家計の問題点や、その改善ポイントについて詳しく解説します。
■DINKs家庭に見られがちな家計の問題点
DINKsとは「Double Income No Kids」の頭文字をとった略語で、一般的に、自分たちの意思で子どもを持たない選択をした共働き夫婦を指します。
厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、2022年6月時点での「夫婦のみの世帯」は1,333万世帯で、調査が開始された1986年の540万1,000世帯に比べて約2.5倍に増えています。
この全ての世帯がDINKsに当てはまるわけではありませんが、昨今、DINKsという生き方を選ぶ夫婦は増加傾向にあるようです。
そんなDINKsには、子どもの教育費がかからず、その分のお金を他のことに使えるというメリットがあります。しかしその反面、DINKsだからこそ世帯としての家計管理が疎かになりやすいなどのデメリットも存在するものです。
DINKs家庭によくある家計の問題点を、具体的に見ていきましょう。
1. 支出が多い
収入を自分たちのためだけに使えるDINKs家庭。その分、毎月の支出がかなり膨らんでいる家庭は少なくありません。趣味や習い事、外食、旅行など、独身時代と同じ感覚でお金を使っている夫婦も多いです。
支出が多くても、収入が安定しているうちは困ることにはならないかもしれません。しかし、支出が多いままですと、貯金ができない、収入が減ってもすぐには生活水準を変えられないといった問題が起こる恐れがあります。
2. 世帯としての支出が共有されていない
DINKsに限らず、夫婦それぞれが決められた支出を担当しているという共働き家庭は多いでしょう。たとえば、夫は家賃や住宅ローン、水道光熱費などの固定費を担当し、妻は食費や日用雑貨費などの変動費を担当するというパターンはよく見られます。
この方法なら、家族の生活費を1つにまとめる手間がかかりませんし、自分が担当した支出を支払えばあとは自由に使うことができます。しかし、2人で支出を管理しているわけではないため世帯としての支出が共有されておらず、全体像が見えにくいという点はデメリットです。
3. 貯金していない
家計に余裕がありそうなDINKs家庭ですが、「貯金をしていない」という夫婦は意外と珍しくありません。お互いに「相手が貯めているだろう」と安心してしまい、いざ蓋を開けてみると夫婦ともにほとんど貯金をしていないパターンも。
住宅購入などのタイミングまでお互いの貯金額を知らなかった、というDINKs家庭は多いものです。
■DINKs家庭の家計改善ポイント4つ
DINKs家庭はお互いに収入があり別会計でも済んでしまうからこそ、家計のルールを作る機会を逃してしまいがちです。時間を作って以下の4点を実行し、家計改善を目指してみましょう。
1. 夫婦の収入と支出を明確にする
はじめに取り組みたいのは、夫婦がそれぞれ何にどのくらいお金を使っているか洗い出し支出を明確にすることです。また、お互いの収入を知らないというDINKs家庭も多いため、もし当てはまる場合は収入も開示しましょう。
世帯収入がわかれば、自分たちのおおよその所得水準が把握できるでしょう。収入に対して支出が多すぎる家庭は、まずはその点を認識して生活コストを抑える必要があります。
2. 収入に応じて支出バランスを調整する
世帯としての収支がわかったら、次は、お互いの収入に応じて支出バランスを調整しましょう。たとえば、夫婦の収入が「夫:妻=6:4」の場合、生活費負担もこれとおおよそ同じくらいになるよう調整します。
これなら、どちらかに負担が偏ることがないため、家計のルールとして納得感があるでしょう。
3. 各々が将来のために貯金する
貯金も支出バランスと同じように考えます。収入が「夫:妻=6:4」なら、「夫:妻=6万円:4万円」のように貯金するのです。貯金をする時のポイントは、「夫は住宅取得資金」「妻は老後資金」のように、目的ごとに別の口座で管理することです。
特に、給料を生活費として使う前に貯金する「先取り貯金」を取り入れると、着実に貯金額を増やしていけます。
4. 特別支出の準備やボーナスの使い方について決める
特別支出とは、毎月の生活費とは別の、不定期または突発的に発生する大きな支出です。たとえば、旅行や帰省にかかる費用、家具や家電の買い替え費用、年払い保険料や冠婚葬祭の費用などが当てはまります。
特別支出は生活費とは別の支出ですが、生活費や貯金から無計画に出してしまうと、赤字になったり貯金が増えなかったりする原因になります。自分たちの家庭の特別支出を書き出し、その費用をどう貯めていくか計画を立てましょう。
また、ボーナスの使い方が決まっておらず、いつの間にか使い切ってしまう家庭も多いです。ボーナスがある場合、家族としてどのように使うのか、その中からいくら貯金に回すのか、しっかり決めておきましょう。
■家計について話し合う機会を持とう
DINKs家庭の中には、結婚してから一度もお金について話したことがないという夫婦もいるものです。お互いが漠然とした不安を抱えながら過ごすより、今のうちに家計について話し合ってスッキリと前に進みましょう。「夫婦で一緒に家計管理する」という意識が芽生えれば、家族としての絆も深まりそうですね。
武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら