“通学路”の交通違反「ちょっと多すぎる…」国家公安委員長も絶句 一斉取締りで驚きの実態 子供が危険に

全国の警察で児童生徒の登下校時に「通学路における全国一斉取締り」を実施したところ、違反件数は無免許、酒気帯び運転を含む約1万3500件。国家公安委員会も驚きを隠せない結果となりました。通学路の安全確保は依然として課題です。
2023年秋の全国交通安全運動の中で行われた「通学路における全国一斉取締り」の結果が、警察庁ウェブサイトで公開されています。9月29日に全国の通学路3778所で実施された取締りで、1万3538件の違反が摘発されていることがわかりました。都道府県警察で動員された警察官は約1万3000人なので、警察官1人が1件以上の違反を認知していることになります。
“通学路”の交通違反「ちょっと多すぎる…」国家公安委員長も絶…の画像はこちら >>警察官に見守られて登校する小学生(東京都世田谷区)。この通学路にも時間帯の通行禁止規制がある(中島みなみ撮影)。
松村祥史(よしふみ)国家公安委員長は10月3日の会見で、次のように話しました。
「報告を受けまして、ちょっと多過ぎるなというのが思いです」。
通学路の取締りは、児童生徒の登下校時に合わせて実施されるため、朝の7~9時までと午後の15~17時までの4時間程度です。幹線道路などでの警察署が単独で行う速度取締りや飲酒取締りでは、1か所で違反が1件もないこともあります。誰も慌ただしく先を急ぐ朝ですが、そうだとしても通学路における検挙件数が「多過ぎる」というのも大げさではありません。
違反の内容も問題です。「特に、通行禁止違反の検挙が約4900件。(次いで)最高速度違反、一時不停止という順番になっている。残念ながら、無免許運転、飲酒運転などの悪質性、危険性の高い違反も見られたと報告を受けています」と松村氏。警察庁が集計した全国の主な違反の内容は以下の通りです。
・通行禁止違反:4923件(36.4%)・最高速度違反:3767件(27.8%)・一時不停止:1414件(10.4%)・歩行者妨害:878件(6.5%)・シートベルト装着義務違反:736件(5.4%)
学校、幼稚園・保育園の周辺にはスクールゾーンが設定され、登下校時は歩行者専用になっています。また、通学路となっている区間の道路は、速度30km/h以下に制限されていることが多いです。違反の内容は、児童や生徒を守るための規制を気にしていない運転者が多いことを示しています。
2012年に京都府亀岡市で10人が死傷した登校中の暴走事故を受けて、文部科学省、国土交通省、警察庁の3省合同で、通学路を含む生活道路では、速度を30km/h以下に抑えることが、事故時の死亡率や重傷率を低くすることができると提言し、全国で対策が進められてきました。しかし、その後も2021年に千葉県八街市で下校中の小学生5人が死傷するなど、悲惨な事故が続いています。
さらに今回の取締りで、次の通り無免許運転、飲酒運転が摘発されていることも気になります。亀岡の事故は運転者が無免許、八街の事故は飲酒運転でした。
・酒気帯び(アルコール濃度0.25mg未満):3件(0.0%)・無免許運転:27件(0.2%)
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松村祥史国家公安委員長(中島みなみ撮影)。
国土交通省や地方自治体では通学路の歩車分離を進めていますが、依然として未整備の区間が残っています。松村氏は、通学路の交通対策について引き締めを図ります。
「子どもたちの安心安全を守るために、しっかりと警察を指導していきたい」
抜け道として利用されている区間であっても、せめて登下校時の通行禁止は守ることで、違反も事故も防ぐ効果は大きいです。