沖縄で“フリー”で働く オフネ コロナ禍の中で注目、女性だけのプロ集団

OFNEで手がけた専門学校のパンフレットを手にする仲本紫織さん(左)と宮城臣子さん=2023年2月10日、沖縄タイムス社 出産や介護など家庭の事情で好きな仕事を続けるのをあきらめた女性たちに、会社に属さない「フリーランス」という選択肢が広がっている。自分の都合のいい時間に働きながら、オンラインでつながった仲間と仕事を分け合ったり、必要な情報を共有して技術を磨き合ったり、子育てと両立していくことの悩みを相談したり。行政との連携など課題はまだ多いが、新型コロナ禍で働き方の多様化が進む中、注目を集めそうだ。
県内で約50人のメンバーをとりまとめているのは「OFNE(オフネ)」という団体。正式な名前は「沖縄フリーランスウイメンズネットワーク(Okinawa Freelancewomen’s NEtwork)」。
もともとフリーランスのDTP(印刷物のデータをパソコン上で制作)オペレーター・ディレクター、ウェブデザイナーとして働いてた仲本紫織さん(42)が2020年12月に立ち上げた。仕事が増えて1人では間に合わなくなってきたため、仕事をシェアしつつ、パソコンやソフトなどの最新情報や子育て、フリーランスの悩みなどを気軽に話せる場になれば、と設立した。
OFNE(お船)の名前にあやかって代表の仲本さんが船長、副代表の宮城臣子さん(41)が副船長としてリードしている。
メンバー加入の条件は「県内在住の女性」。未婚・既婚や子の有無は問わない。

現在のメンバーは20~50代の約50人。いったん退職したが、好きな仕事がしたいという30~40代がメーンで、副業にしている人もいる。
10年以上ブランクがあっても、まずは部分的な仕事をこなしてもらい、徐々に勘を取り戻してもらうような仕組みになっている。
コロナ感染を恐れる人や、長時間の残業に対応できない人など、OFNEのホームページやSNSを見たり、メンバーから紹介されたりで職種もメンバーも増えてきているという。
受注する仕事はデザインやDTPなど印刷物やウェブの制作が中心で、動画制作、SNS更新、記事執筆、録音の文字起こし、営業などもある。
OFNEで受注し、それぞれの都合に合わせて細かく仕事を振り分けていくやり方だ。
県内の専門学校のパンフレット(24ページ)を、すべてメンバーだけで引き受け、完成させた実績もある。
「さまざまな作業を経験しているフリーランスだからこそ、臨機応変に対応できる」と仲本さんは胸を張る。
デザイナーの宮城さんは前職を辞めた後、友人の紹介で「なんだか面白そう。仲間ができるかも」と気軽な気持ちで参加。今ではOFNEの副代表を務める。
人との出会いの幅が広がったほか、動画編集やラジオのポッドキャストなどの技術を習得し、「1人では到底できることではなかった」と振り返る。

仕事を受ける際は「適正料金」にこだわっている。「クラウドソーシング」と呼ばれるネット上での仲介では、報酬が低くて働く側に不利な条件となるケースが多いためだ。

たとえば介護で離職した後でも、収入はもちろん必要で、報酬が低くては生活が成り立たなくなってしまう。元の会社にも戻れず、介護もできない状況に追い込まれたケースも過去にあったという。
自宅のネット環境の整備やパソコンソフト購入、技術を習得するまでの勉強期間なども含めコストがかかっている。行政や企業からの支援や補助などはないため、それぞれができる仕事量と技術力に応じ、目標を定めて取り組んでいる。
仲本さんはフリーランスの悩みとして「育休、産休、傷病手当などの社会的補償」を挙げる。出産すると数カ月は無給になってしまうため、「フリーランス向けにも社会保障の整備を」と訴える。
OFNEは行政の支援も求めている。「生活に困っている人は家にパソコンやインターネットがなく、在宅ワークを始めることができない。企業や自治体などで余ったパソコンのの貸与や助成金、無料で使えるWi-Fi(ワイファイ)や作業所の提供があれば」と話す。

仕事の発注は県内8割に対し、県外が2割。仲本さんは「1人雇うのに迷うような簡単な事務」「SNSを使ったPR」「自社で作って納得できないチラシやバナーの外注」など、仕事を細かく分け合えるOFNEの利点を生かしたニッチな仕事にも力を入れている。平行してオンラインで勉強会を開くなどメンバーの技術向上も図る。

仲本代表は「事情があり在宅で働きたいけど何をしたら良いのか分からない。自分にできるのかも分からないという方がいたら、ぜひご相談ください。企業からのお仕事や支援のお話もお待ちしております」と呼び掛けた。

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