2024年から新NISAがスタートします。これを機に投資を始めようと考えている人も多いのではないでしょうか。いざ始めようとしたときにぶつかる壁が、「いつから始めればよいのか」。今回は、投資の始めどきについてお答えします。
Q.投資を始めたいけれど、いつ始めればいいのかわかりません。特に新NISAが始まるので迷っています。来年(2024年)から新NISAが使えますが、今年(2023年)は今年でNISAが使えると聞きました。すぐに始めるのがよいのでしょうか? それとも来年まで待つべきでしょうか?
A.制度ではなく自分を軸に考えるのが大切
2024年から新NISAが始まります。NISAに関する報道も増えており、新たに投資を始めようと考えている人も多いのではないでしょうか。
まず、現行のNISAと、2024年からの新NISAは並行して使えます。現行のNISAで今年購入したものは、新NISAとは別枠で、期間満了まで持ち続けることができます。一方を使ったからもう一方が使えなくなるといったことはありません。
しかし、NISAを軸に自分の資産運用プランを立てることはおすすめしません。制度に合わせて計画を立てるのではなく、「どのような資産運用をしたいか」から考えるのがよいと言えます。順番にご説明していきます。
お金を育てたいなら「預金より投資」
手元に余裕資金があるなら、預金に置いておくのではなく、無理のないペースで早めに投資にまわしたほうがいいでしょう。そのうえで、投資をするなら、本来は利益にかかる税金が非課税になるNISAを活用することをおすすめします。
投資をするかどうか、NISAを使うかどうかでどれくらい差が出るのかを考えてみます。
余裕資金が100万円あるとして、「NISAを活用して投資する」「NISAを活用せずに投資する」「投資しない(預金に置いておく)」の3パターンを比べてみましょう。ここでは、投資をした場合、資産が20万円増えたと仮定します。
NISAを使って投資すると利益に対して税金がかからないので、リターンの20万円をそのまま得ることができ、手取りは120万円になります。NISAを使わずに課税口座で投資すると利益に対して約2割の税金がかかるので、得られるのは約116万円になります。投資せずに預金に置いておくと、資産が増えることはほとんどなく、ほぼ100万円のままです。つまり、NISAを使うかどうかよりも、投資をするかしないかの差のほうがずっと大きいことがわかります。
始めるタイミングは考えなくていい
では投資を始めるタイミングはどのように考えればよいでしょうか。
「長期・積立・分散」の資産運用の期待リターン(将来得られるであろう平均的なリターン)はプラスなので、早く始めるに越したことはありません。新NISAが始まる来年まで待って始める場合、今年取れるはずだったリターンを取り損なう可能性もあります。
もちろん、今年のうちに始めるか、来年まで待つか、どちらが効率よく資産を増やせるかは、今後の相場次第です。しかし相場の動きを読むのはプロでも難しいことです。「長期・積立・分散」の資産運用であれば、始めるタイミングを考えすぎず、余裕資金の中から少しずつでも始めることをおすすめします。
NISAをうまく使おう
投資をするとき、NISAの枠をうまく使えば非課税メリットを享受できます。まだNISAで投資していないなら、今年のうちに今年のNISA枠を使うのがよいでしょう。一般NISAなら年間120万円まで枠を使えます。今始めておけば、来年の新NISAの口座も自動で開設されるので、スムーズに資産運用を続けられます。
現行NISA(一般NISA)は年間120万円、新NISAには年間360万円という投資上限があります。新NISAでは投資できる金額の上限が引き上がりますが、上限にあわせて無理に投資額を増やす必要はありません。自分にあったペースでコツコツと投資しましょう。
反対に余裕資金がたくさんあるなら、NISAの枠にとらわれて、投資金額を抑える必要はありません。NISAの枠以上に投資ができるなら、NISAを使わず課税口座でも投資してもよいのです。先ほど示したとおり、NISAの活用するかどうかよりも、投資をするかどうかの差のほうが大きいからです。
自分にあったプランで投資することを優先し、そのうえでNISAも活用することをおすすめします。
牛山 史朗 ウェルスナビ 執行役員 リサーチ&クオンツ 働く世代の誰もが「長期・積立・分散」の資産運用を行えるようにしたいという想いから、2015年12月にウェルスナビに入社。金融工学の専門知識を活用し、自動の資産運用サービス「WealthNavi(ウェルスナビ)」の資産運用の仕組みを開発・リードしてきた。ウェルスナビ入社以前には、三菱UFJ信託銀行で個人向けの資産運用アドバイスなどを担当した後、野村證券にてグローバルな投資戦略の開発を行った。京都大学工学部で人工知能を研究、京都大学大学院情報学研究科で金融工学を専攻。 この著者の記事一覧はこちら