「辞めたいと思うこともあった」 落語家・金原亭杏寿「二ツ目」昇進でお披露目 今後挑戦したいことは

今月「前座」から「二ツ目」に昇進し、沖縄出身初の女性落語家となった金原亭杏寿(きんげんていあんじゅ)が11日、東京・浅草演芸ホールでお披露目を行った。昼と夜の部がある定席寄席に上がることができるのは、落語協会および落語芸術協会に所属する二ツ目以上のプロ落語家と色物(漫才や音楽芸等)のみ。その証でもある黒紋付き羽織姿で高座に上がり、客席に深々と頭を下げた杏寿は「お客さまの温かい祝福の拍手を受けて大変ありがたい。ここからが落語家としてのスタートライン」と気持ちを語った。(小笠原大介東京通信員)
那覇市出身の杏寿は小禄高校在学中から「川満彩杏(あい)」として、県内を中心にタレント・俳優として活動。NHK連続テレビ小説「純と愛」に出演したこともある。16年に上京し「演技の勉強になれば」と訪れた独演会で世之介師匠の「宮戸川」に衝撃を受けた。
「1本の映画を見たかのような没入感。こんな芸を身に付けたい」と迷わず門をたたいた。
関連記事女優・モデルとして活動→上京し出逢った「感動」 金原亭杏寿さん、沖縄初の女性落語家に ・・・ 沖縄県出身で落語協会に所属する金原亭杏寿(きんげんてい・あんじゅ)さんが来年2月、「二ツ目」に昇進する。師匠の金・・・www.okinawatimes.co.jp 師匠からは「人生を懸けてやるならば」と弟子入りを許されたが、修行は想像以上だった。「見習い」として師匠の身の回りの世話や洗濯掃除等の雑用が認められ、ようやく「前座」として楽屋入りが許されても、お茶出しや着付け、演目の記録や太鼓打ちなど、寄席進行に追われた。帰宅してからようやく落語の勉強に取りかかるが、睡魔との戦いだった。

自由なく時間に追われる日々に「正直、辞めたいと思うこともあった」と明かすが、「それ以上に落語が楽しいと思う瞬間が何度もあった」と芸を磨き続け5年あまり。落語家を語れる「二ツ目」に昇進を果たした。
落語家としての第一歩に選んだ演目は「孝行糖」。親孝行の徳で得た金で飴(あめ)を売り歩く商売を始めた与太郎の噺(はなし)で、世之介師匠の師匠である先代の馬生師匠も得意としていたもの。「ようやく一人前になった姿を通して師匠や両親に孝行ができれば」と与太郎の姿に自分を重ねた。
関連記事春風亭一之輔、実は受けるか迷った「笑点」のオファー 「才能ある」と思う沖縄出身の落語家・・・ 日本テレビ系の演芸番組「笑点」の人気コーナー「大喜利」の新メンバーに決まった落語家の春風亭一之輔の独演会が7日、・・・www.okinawatimes.co.jp 導入部となる「まくら」では「やっと見習いから解放されて、落語家人生で幸せのピークが今日」と会場の笑いを誘い、本題では与太郎と長屋の衆の掛け合いを、軽妙な語り口で見事に演じた。
会場には父・達史さんの姿もあり、「父からは『見ているこっちが緊張した』と言われた」と笑う杏寿だが、連日続く寄席に向けて「日々、良くしていきたい」と気を引き締める。世之介師匠からは「芸に説得力を持たせる意味でも、いろいろ挑戦してほしい」と言われており、目下、日本舞踊を習得中。今後は歌や芝居にも活動の場を広げていくつもりだ。
「いつの日か“沖縄初の女性落語家”というくくりでなく、『落語家・杏寿の噺が聴きたい』と思ってもらえるようになりたい」。大きな瞳を一層輝かせた。
杏寿は3月下旬まで都内各演芸場で二ツ目お披露目を行うほか、3月31日には浅草「東洋館」で初独演会が予定されている。詳しくは公式サイト参照(http://kingpro.co.jp/anju/profile.html)