猛スピードで峠を攻める「ローリング族」が聖地と崇める国道299号線で逮捕されたのは“美しすぎる”バイク女子だった。埼玉県警は10月11日、制限速度を大幅に上回るスピードで暴走したなどとして専門学校生、森田祐加(21)=埼玉県狭山市=と会社員、栗本海斗(23)=同所沢市=の両容疑者を道路交通法違反(共同危険行為)の疑いで逮捕した。2人は「速く走れることが運転がうまいことだと思っていた」などと容疑を認めているという。
現場は集英社オンラインが8月に♯1で詳報した、埼玉県の日高市から飯能市に抜ける国道299号線の山間の急カーブが連続する峠道。オートバイや車でここに集って高速走行を繰り返す「ローリング族」による危険な暴走行為や騒音は深夜まで及ぶこともしばしばで、周辺住民からの苦情が絶えず、県警交通指導課と飯能署が取り締まり強化に乗り出していた。「県警は車両やSNSなどをもとにローリング族の人定を進めていました。この中で森田容疑者ら2人は5月19日午前1時半ごろから、制限速度時速40キロの現場付近を同90キロ前後の猛スピードでオートバイや車を走らせる暴走行為をしていた疑いが強まりました。というのも、森田容疑者はこのときに撮影した動画を自ら動画配信サイトに投稿しており、県警がそれを分析して逮捕にこぎつけたという流れです」(社会部デスク)
森田容疑者(本人SNSより)
そもそも森田容疑者はX(旧Twitter)、TikTok、YouTubeなどにバイク好き女子として走行動画などの投稿を繰り返しており、その容姿や目立つ塗装の愛車からも「ローリング族」界隈ではかなり知られた存在だった。今回、テレビニュースで捜査車両から降りてくる金髪のポニーテールが映し出されると、ネット民たちは「美しすぎる」と大騒ぎ。また、愛車のホンダCBR250RRは米国の人気アニメ「ミニオンズ」のキャラクターを模した黄色と青色の派手なツートンだ。現場近くのコンビニで休憩中の男性ライダーに声をかけてみると、やはり森田容疑者はかなりの有名人のようで、半年ほど前にも見かけたことがあったという。「ミニオンバイクの子は知ってますよ。僕の後ろを走ってることもありましたが、正直、彼女は無茶なことはせずただ流してるだけって感じでした。『ミニオンバイクの子』ということで有名なだけで、峠を走るのがめちゃくちゃ早くて有名とかそういうわけではありません」
森田容疑者
この男性にしてみれば、森田容疑者は「スピード狂」だという印象はなかったという。「そもそも若い女性は珍しいうえに彼女はきれいだし、さらにミニオンですからね。彼氏と2人で来ていることが多くて、彼氏を含めて3~4人の友達で走っていたこともありました。スピードを求めてというより、友達と遊びの延長線のような感じでしたね。彼女の乗っている旧車は100万円以上するし、ミニオンの塗装も20万円はかかるだろうから、もちろんバイクは好きなんでしょうけど、見る人によってはイタ車に見えるでしょうね」
森田容疑者の彼氏は、今回共犯で逮捕された栗本容疑者とは別人だが、やはり“界隈”ではちょっとした有名人だという。「YouTubeもやっているし、レースにも出ているんでここら辺では知られてます。彼氏のほうは峠道でスピード出したりとかはしませんよ。捕まればレースに出れなくなりますから。プロを目指すというよりは草レースに出ているような印象ですね。バイクの世界にもプロ野球と草野球の区分けみたいのがあるんですよ。そもそも、ここら辺で、映画や漫画のようにフラッグ振ったり、ストップウォッチでタイムを競ったりしてレースをしてる人はいませんよ。彼女たちも友達同士でゆるく、どっちが早いかって時間を測ってただけだと思いますけどね」また、森田容疑者は実家のある埼玉県入間市では「よい子」で評判だった。実家近くに住む女性が語る。「祐加ちゃんは普通の子というか、むしろとてもいい子です。女の子3姉妹で一番きれいな子が祐加ちゃんですね。私が犬の散歩をしていると、『かわいい』と言ってよく撫でてくれました。高校生のころは自転車に乗ってるのをよく見かけたけど、バイクを乗り回しているのなんて見たことも聞いたことないです。私が知る限り何かトラブルを起こしたってこともないですよ。ここ最近は見かけなくなったので、もう独立されたんでしょうけど、実家にいたころは会えば挨拶もちゃんとしてくれるし、とってもかわいい子でしたよ」
森田容疑者の自宅(撮影/集英社オンライン)
別の住民も似たような印象しか残っていなかった。「祐加ちゃんという子がいたね。3姉妹で、みんな普通のいい子たちで何か問題を起こすような子じゃないよ。お父さんはもう何年も単身赴任で、今はおばあちゃんとお母さんしか住んでないと思うけど。バイクに乗ってる子? そんな子はいないよ。家の前に誰かとたむろしていたことなんかも一度もないよ。ほんとごく普通の女の子たちだったから」一方の栗本容疑者は所沢市の実家に住んでいるとみられる。瀟酒な造りの一戸建てのインターフォンを押して取材したい旨を伝えると、父親と思しき男性が「お答えできません」と言ったきり、インターフォンを切られてしまった。近くの住民に聞いてみると、実家はちょっとした地主のようだ。
栗本容疑者の自宅 撮影/集英社オンライン
「海斗くんのお母さん方の人たちがここら辺に土地を持っていて、その家を建てた同時期に、お母さんの兄弟2人も周囲に家を建ててます。大地主というほどではないものの、お金には困らないだろうなという感じの家です。なので、海斗くんも正直働かなくても大丈夫なんだろうって思ってましたが、今回の報道で『会社員』と出てたんで働いてたんだとわかりました。高校生時代から原付やバイクが好きで、その後は車も好きだったようですが、普通の子ですよ。近所のことを気にしてか、車のエンジンをかけてもすぐどこかに行ってしまうので、うるさくもなかったですよ。最後に見かけたのは逮捕される2日ぐらい前でしたが、普段通り挨拶してくれました」
近隣住民への取材によれば、逮捕された2人には住民の迷惑も顧みずオートバイで暴走行為を繰り返す「危険人物」という印象はなかったようだ。前出の現場付近のコンビニにいた男性もこう語る。「『ミニオンバイク』は知られていたので、彼女は見せしめで捕まったのかなって思います。半年に一回くらい定期的に目立ってるバイクが捕まるんですよ。そうするとこうやってしばらくは、来る数も減るし、来る人もちょっとおとなしくなりますから。現にこの辺のバイク乗りの間で『ミニオンバイクの子捕まったって。気をつけろよ』って言われてますからね。大前提として彼女らが道路交通法違反をしていたことについては、悪いと思います。それにイジったバイクに乗ってるので、音もうるさく迷惑もかけてるとは思います。ですが、彼女たちが著しく暴走を繰り返して、危ないレースをしていたというニュアンスの報道はちょっと違うのかなって思います」
森田容疑者(本人SNSより)
ローリング族の聖地で摘発された「よい子」と「普通の子」。走り以外で目立ったことがアダになったという勘違いだけは、してほしくない。※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected]X(Twitter)@shuon_news取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班