ロシア戦車が次々吹っ飛んだのは「自動装填装置」のせい? 一転撃破される西側戦車 狙われる戦車のアタマ

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって間もない頃、ロシア戦車がビックリ箱のように次々吹き飛び、自動装填装置を兼ねる弾薬庫の脆弱性が指摘されました。しかし、西側戦車も2023年以降ドローンの攻撃などにより撃破されています。
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻以降、性能を疑問視され始めた兵器があります。ロシア軍が前線に投入したT-72、T-90などの、旧ソ連及びロシア製の戦車です。
ロシア戦車が次々吹っ飛んだのは「自動装填装置」のせい? 一転…の画像はこちら >>撃破されたロシア戦車(画像:ウクライナ国防省)。
侵攻以降、次々と撃破されていく戦車の映像が映し出されると共に、いつしか、砲塔の内部に多数の弾薬を搭載する円形の「カルーセル式」と呼ばれる自動装填装置が欠陥であると報じられるようになります。そこが損傷すると砲弾が誘爆し、「ビックリ箱」のように爆発してしまうと指摘されました。果たして弾薬の位置は戦車の弱点になるのでしょうか。
戦車の弾薬の位置は、旧ソ連式と西側諸国式とで大別されます。旧ソ連式は前述したように砲塔が車体に収まっている部分の最下部に円形の弾薬庫があり、回転しながら砲弾を供給する「カルーセル式」となっています。T-64戦車以降は砲弾が自動で装填される自動装填装置が備えつけられ、車両の小型化と人員の1名削減を実現しています。
ウクライナ侵攻初期は、「ジャベリン」など対戦車兵器のミサイルでロシア戦車が撃破される様子が盛んに報じられました。そのため、被弾率の高い砲塔上部(砲塔が車体から露出している部分)に弾薬庫があり、敵の砲弾やミサイルが当たるとすぐに誘爆してビックリ箱のように吹き飛ぶと思われるようになりました。しかし、実際は砲弾など誘爆の危険性があるものは砲塔下部、車体全体でいうとシャーシに守られている車体底部に位置する場所に置かれており、誘爆などの危険性を考慮した車両になっています。
対する西側では、1980年代から1990年代に登場した第3世代主力戦車から砲塔上部後方の「バスル」が弾薬庫になっており、収納している砲弾をベルト式マガジンから供給します。
ただ、西側の戦車は自衛隊の90式戦車、10式戦車のほか、フランスの「ルクレール」、韓国のK2「ブラックパンサー」などは自動装填装置を採用していますが、アメリカのM1「エイブラムス」、ドイツの「レオパルト2」、イギリスの「チャレンジャー2」などは採用していません。2023年現在でも自動装填装置に関しては賛否がわかれていますが、その有無にかかわらず砲塔上部の後方に弾薬庫を設ける車両がほとんどです。
さて、被弾率が高い部分を考えると、西側戦車の砲塔上部の方が被弾時に誘爆しかねないでしょう。そのため、このタイプの砲塔は弾薬庫が被弾した場合、砲塔上部のパネルが吹き飛んで爆発のエネルギーを上に逃して乗員を守る「ブローオフパネル」が設けられた構造になっています。爆風を乗組員のいない車体上部に集中させることで、内部の生存性を高めているのです。
こうしてみると、決してロシア戦車が誘爆の危険性を軽視しているわけではありません。ではなにが被害を増大させたかですが、巧妙に待ち伏せした状態の携行対戦車火器に突っ込んでしまうケースが多かったのでは、という仮説が考えられます。
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原型も残らない形で破壊されたロシア戦車(画像:ウクライナ国防省)。
携行対戦車火器を持った歩兵の待ち伏せに戦車が弱いのは、第一次世界大戦で戦車が誕生し、結束手榴弾で対抗した時代から共通している欠点です。さらに、21世紀に入ってからは「ジャベリン」などで歩兵も簡単に対戦車ミサイルが携行可能になったほか、ドローンによる爆弾投下や自爆攻撃も活用するなど、戦車が不意を突かれて撃破されるリスクが高まっています。事実、攻勢に転じたウクライナ側も西側諸国から供与を受けた「レオパルト2」や「チャレンジャー2」が巧妙に待ち伏せしたロシア軍の対戦車兵器などに撃破されています。
さらに2023年10月7日には、世界で最も堅牢な戦車という評価もある、イスラエルの主力戦車「メルカバMk.4」が、ドローンに爆発物を投下されただけで撃破されています。同戦車はトップアタックといわれる、戦車の装甲が弱い車体上部を狙われました。
これまで、車体上部を狙ってくるのは、敵の地上攻撃機か攻撃ヘリ程度くらいしかいませんでしたが、前述した「ジャベリン」にもトップアタックモードがあり、ドローンも上から狙ってくることからリスクは高まっています。ただ、不意を突かれない限りは、依然として戦車は陸上で有力な火力と防御力を発揮するため、戦車が不要となることは、現状ではなさそうです。
※一部修正しました(10月20日01時20分)。