〈市川猿之助・初公判〉「とてもひとりにしておける状態ではなく、弟子がかわるがわる面倒をみていた」今後は“出家”か“復帰”か?…「中車じゃ席が埋まらない」「役者が無理でも裏方なら」の声も

両親に対する自殺幇助の罪で起訴されていた歌舞伎俳優の市川猿之助被告(本名・喜熨斗孝之・47)の初公判が10月20日、東京地裁で行われた。「もっともチケットの売れる歌舞伎俳優」といわれていた稀代の人気者である猿之助被告が、父親である歌舞伎俳優・市川段四郎さん(76)と母の喜熨斗延子さん(75)とともに“一家心中”を図ったとされるこの事件は、歌舞伎界だけではなく、日本中に大きな衝撃を与えた。
今回の初公判では、7月31日の保釈以来、表舞台から姿を消していた猿之助被告が、実に2か月ぶりに公の場に出たこととなる。9月13日には、猿之助被告の伯父であり、「猿之助」の大名跡を譲り受けた二代目市川猿翁さん(享年83)が心不全で亡くなり、その後、通夜と葬儀が行われた。さすがに猿之助被告も弔問には姿を見せるのではと思われていたが……。
保釈された猿之助被告(撮影/共同通信)
「葬儀と通夜は寺の周囲や駐車場を数台のトラックやバスで囲んで見えないようにするというマスコミ完全シャットアウトの超厳戒態勢で行われた。松竹や歌舞伎の関係者に聞いても『(猿之助が)来た、とも、来なかった、とも言えない』という、木で鼻をくくったような答えだった」(スポーツ紙記者)だが関係者筋によると、これには深い事情があったという。「猿之助さんは通夜にも葬儀にも来なかったんです。というのも、自分が来るとニュースではそれが大きく取り上げられてしまう。偉大な“三代目猿之助”の野辺送りがそれでは、歌舞伎界にも一門にも先祖にも申し訳がたたない、と思ったようです」(同前)弟である段四郎さんの後を追うように亡くなった猿翁さん。「スーパー歌舞伎」の創立者であり、歌舞伎界に新風を吹き込んだ「革命児」として知られた彼は、03年に脳内出血で倒れた後、体調不良が続き、舞台に立つことはほとんどなくなっていた。晩年は、意識がないことも多かったという。歌舞伎関係者がこう話す。「猿翁さんは誰に看取られるということもなく、本当に、いつものように眠っている間に息を引き取った。そういった状態だったため、弟の死も、甥が起こした事件のことを知らぬままに旅立った。かえってよかったといえるかもしれません」
事件発生当時の猿之助被告の自宅(撮影/集英社オンライン)
事件の後、猿之助被告は一か月という長期間の勾留の後、保釈。その後は、一時入院を経て、事件現場となった自宅へと帰っていたという。「猿之助さんはとてもひとりにしておける状態ではなく、現在は一門のお弟子さんたちがついて、かわるがわる面倒をみているそうです」(前出・歌舞伎関係者)
今回の初公判について、司法記者がこう話す。「猿之助被告が容疑を認めていることなども踏まえると、裁判は長引くことなく、年内には結審するとみられています。量刑については無罪は難しくとも、執行猶予はつくのではないかともいわれている。猿之助被告はこれまで、警察の事情聴取に『週刊誌にあることないことかかれた。家族と相談して、一緒に死んで、次の世界にいこうとなった』と、家族会議の末に一家心中を図ったことを明かしています。その理由に関しては事件当日に発売された週刊誌による『性加害報道』が原因だったともいわれていますが、まだ謎は多い。そんな中、彼が肉声で、何を語るかが注目されている」特に注目されているのが、彼が自身の「職業」を公判でどう語るかについてだという。「公判では、現在の職業について必ず聞かれるのです。そこで『無職』と答えるのか、それとも『俳優』と答えるか……。それにより彼の現在の心境や、今後、復帰の意思があるのかどうかまで、ある程度推測することができる」(前出・司法記者)猿之助被告の今後はどうなっていくのか。ベテラン演芸記者がこう話す。「仏教徒として信仰心が強く、事件の際にも『次の世で会おう』と書き残していた猿之助だけに『出家説』がいくつかの媒体で報じられました。しかし松竹としては、チケットが売れる猿之助をなんとか復帰させたいと考えており、逮捕後も、契約解除などは行っていません。
撮影/共同通信社
猿之助が逮捕された後、澤瀉屋の屋台骨を支えている、従兄弟の市川中車こと香川照之(57)はたいそうな努力家で、演技者としては天才肌なのですが、いかんせん、歌舞伎を始めてからまだ10年と経験も浅く、当然、四代目のような集客はできない。七月大歌舞伎で猿之助の代役を務めた『菊宴月白浪』では、本人は演技に大満足していたそうですが、客席は3割程度しか埋まらず、松竹が関係者にチケットを大量にばらまいていたほどです。そのため松竹としては、猿之助の役者復帰は無理でも、せめて演出やプロデューサーなどの裏方として戻ってこれないかと考えており、一説には『ボランティア活動などで禊をしてから活動を再開するのはどうか』といった案も出ているとか。しかし、その時期や内容によっては本人だけではなく、松竹にとっても大逆風となる可能性も高いので、しばらくは、世論を見ながら“静観の姿勢”を取ると聞いている」審判はどのように下されるのか――。
撮影/集英社オンライン
※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected]X(Twitter)@shuon_news取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班