連合が来年の春闘で3%以上のベースアップを含む5%以上の賃上げを要求する方針を固めた。賃上げと成長の好循環を生もうというのだが、この政策はすでに完全な失敗に終わっている。今年の春闘で、そこそこの賃上げを実現したものの、物価上昇にまったく追いつかず、8月の実質賃金は前年比2・5%のマイナスで、17か月連続の減少となっているからだ。
ピケティという経済学者が200年にわたる統計を検証した結果、資本の収益率が安定して5%程度であることを発見した。経済のパイが増えようと減ろうと、資本家は5%増の取り分を最初に持っていく。労働者が受け取れるのは、その残りだ。だから、賃上げを実現する唯一の手段は、経済のパイを大きくすることだ。
そして日本が経済成長を実現する最も効果的な方法は、消費税減税だ。そうすれば、物価が下がり、消費者の実質購買力が向上して、経済が拡大するのだ。ところが、不思議なことに連合は、消費税引き下げに後ろ向きだ。連合が政府に提出した今年の要請書でも、消費税に関しては「基礎的消費にかかる消費税負担分を給付する『消費税還付制度』を導入する」としているだけで、消費税減税には一切触れていない。
なぜ連合が消費税引き下げに後ろ向きなのかについては、公務員の組合である官公労が大きな力を持っているからだとも言われている。しかし、それも大きな間違いだ。公務員の給料は、民間準拠になっている。だから、民間の給料が上がらなければ、公務員の給料も上がらないのだ。
連合は、財務省や雇い主である大企業に忖度(そんたく)しているのかもしれない。ただ、連合は労働者の生活を改善するための組織だ。誰に向かって仕事をすべきかは、自明のことだろう。(経済アナリスト)