ウクライナ大使館が「通販生活」の表紙に抗議 炎上騒動から国際問題に発展のおそれも

カタログハウスが発行する通販カタログ誌「通販生活」2023年冬号の表紙に掲載されたコピーが、ロシアの侵攻に徹底抗戦するウクライナを批判するかのような内容であるとして、在日ウクライナ大使館が抗議の意思を表明。国際問題に発展しそうな気配となり、ネット上で物議を醸している。
話題となっている表紙では、銃を構える兵士をテレビ越しに眺めている猫の写真と共に「プーチンの侵略に断じて屈しないウクライナの人びと。がんばれ、がんばれ、がんばれ。守れ、守れ、守れ。殺せ、殺せ、殺せ。殺されろ、殺されろ、殺されろ。人間のケンカは『守れ』が『殺し合い』になってしまうのか。ボクたちのケンカはせいぜい怪我くらいで停戦するけど。見習ってください。停戦してください」という文章が掲載されている。
同号は「今すぐ戦争をやめさせないと。」と題した巻頭特集で、東京外国語大学名誉教授(紛争予防・平和構築学)の伊勢崎賢治氏による停戦案などを掲載しており、それに関連した表紙コピーのようだ。
猫の目線からロシアとウクライナの戦争を風刺したような内容といえるが、これに対して在日ウクライナ大使館が27日付のX(旧Twitter)で抗議。「在日ウクライナ大使館はこのような呼びかけ及び例えを、日本国民及び日本政府の立場に矛盾するものとして強く非難します。ロシアは侵略国家であり、ウクライナから直ちに撤退すべきです。主権国家に対する侵略戦争はケンカではありません。侵略者を宥(なだ)めることは終戦に導きません」と訴えた。ウクライナにとってロシアの侵攻は「侵略戦争」であり、抵抗することを批判するかのような文章は看過できなかったのだろう。
これに対して、ネット上では「通販生活どうしたの?」「パロディかと思ったら本物の表紙でドン引き」「侵略戦争をケンカに例える意味が分からない」「戦争を止めたいならロシアに撤退を求めるべきでは」といった表紙コピーへの疑問の声が続出。「通販生活にも言論・表現・出版の自由がある」といった擁護論もあるが、SNS上では批判の声が目立ち、炎上状態になっている。
今回の騒動によって、通販カタログ誌が表紙や巻頭特集で政治的な主張をしていることに驚いた人も多いようだ。実際は以前から「通販生活」は表紙や誌面で政治的な主張を展開しており、誌名ロゴの上部に「巨大地震はいつ来るかわからない、原発ゼロ今すぐ」というコピーが掲載されたり、前号では表紙に「危うし専守防衛」の文字が踊ったりと、原発、核兵器、憲法9条などに関する主張が多い。表紙や巻頭特集、コラムなどを除くと「充実した通販カタログ誌」となっているのでギャップが大きく、ネット上で「通販雑誌なのに思想性が強すぎる」としてたびたび物議を醸してきた。
そうした硬軟織り交ぜた内容が他にない「通販生活」の持ち味となっていたのも事実なのだが、今回の表紙は世界的に「侵略戦争の被害者」とみられているウクライナに対する言葉としては不適切ではないかと判断した人が多く、炎上騒動になったようだ。同誌は昨年7月に発売した盛夏号で「買い物の力で、ウクライナの人たちを応援していきたい」という緊急特集を組んでいたのだが、ウクライナ情勢への見方が変わったことが今回の騒動につながったのだろうか。
下手すれば国際問題になりかねない今回の騒動。大使館からの抗議などを受けて、同誌の「思想性の強い表紙」に今後変化はあるのかどうか注目される。