数々の“立てこもり”で捜査…愛知県警元捜査一課長が見た郵便局立てこもり事件「計画的ではなかったと思う」

埼玉県蕨市の郵便局で10月31日、拳銃を持ち、女性職員2人を人質にして立てこもった事件では、86歳の男が逮捕されました。過去に愛知県で起きた3度の立てこもり事件の捜査にあたった愛知県警の元幹部に、今回の事件で警察がどう動いたのか聞きました。 愛知県警の元捜査一課長、宇佐美孝一さんは2007年5月の長久手、2003年9月の名古屋の大曾根、2012年11月の豊川で起きた立てこもり事件の捜査にあたりました。 宇佐美さんに今回の埼玉県蕨市で起きた事件で、警察がどう解決に導いたのか時間を軸に聞きました。
愛知県警の元捜査一課長 宇佐美孝一さん:「一番は第三者に対する生命・身体の保護ですね」 午後3時28分、ヘリコプターから撮影した蕨市の立てこもり現場の映像には、パトカーの影に身を潜め、郵便局の中を窺う警察官たちの姿がありました。
宇佐美さん:「きっと『109』と書いてあるのは自動車警ら隊だと思います。先着警察官といいま。拳銃使用ということで防弾装備を付けて、とりあえず犯人がどういう状態になっているか、説得しようか、隙があれば逮捕してもいいですから」 午後4時半ごろ、現場から北へ少し離れた場所には、埼玉県警本部から続々と送り込まれた捜査員たちの姿がありました。現場には物陰に座り込み、カメラで撮影する姿も捉えられていました。
宇佐美さん:「これもSITでしょうね。警察本部の指揮室、ここで全部映っています。(映像がないと)本庁にある捜査指揮室が指揮を執れませんから、現場の映像というのはやっぱり重要ですよね」 SITは、立てこもり、誘拐、ハイジャックの事件で現場に突入する「特殊事件捜査係」のことです。
宇佐美さん:「SITというのは、一般的には突入班の人たちをSITと呼んでいると思われがちですが、違うんですね。突入班と、説得するいわゆるネゴシエーターの説得班、現場を撮影したりする偵察班、全体を指揮する指揮班というのがあるんですね。この4つを全部ひっくるめてSITというんです」 SITには突入班だけでなく、偵察、説得、指揮の4つの班があるといいます。
宇佐美さん:「これが全部相まって、初めて指揮班として突入可能という判断をして突入させる。どこが先走ってもダメなんです」 31日夜7時17分、人質1人が解放されましたが、この時容疑者と交渉にあたるネゴシエーターもSITの役割です。
宇佐美さん:「交渉人なんですけどね、交渉人はある程度の独断があるので、自分がのめる中の内容で色んな策を講じて話していきますから。それが功を奏して、1人解放になったんだと思います」 今回の立てこもり事件について、宇佐美さんは「計画的ではなかったのではないか」と話します。宇佐美さん:「警察の対応としては、発砲ありきで対応しないといけないので、うかつには近づけないです。(容疑者が)立てこもりするにしては人質の管理がずさん過ぎるので、あまり計画的ではなかったんじゃないかと思う。こういう一連の犯行をやる計画はあったにしろ、細かい計画まではなかったと思う」