資産運用・投資のお悩みを解決 第10回 人気の金融商品に飛びつく前に考えたいこと

2024年から始まる新しいNISA(少額投資非課税制度)に向けて、何を購入しようかと悩んでいる方は多いようです。気になるのは「他の人が何を買っているか」かもしれません。

2023年10月現在の投資信託ランキングを見ると、株式に投資している商品が上位に並びます。では、人気がある商品に投資をすればいいのでしょうか? 今回は投資する商品を選ぶときのポイントを解説します。

○リターンの順位は毎年バラバラ

新しいNISAが始まるにあたり、「何に投資をするのか」という話題も活発になっています。SNSなどでは「世界の株式に投資する投資信託がいい」「米国株がいい」など、分かりやすい意見が支持を集めているようにも見えます。「これだけ儲かった」といった話を聞くと、つい飛びつきたくなります。

実際はどうなのでしょうか。こちらの図は、WealthNaviで投資をしている6つの資産(米国株・日欧株・新興国株・債券・金・不動産)について、2011年から2022年までの年間リターンを高いものから順番に並べた図になります。

この図を見ると、色の並びがバラバラです。つまり、リターンの順位は毎年入れ替わっているのです。特定の資産がずっと好調であることはないということが分かります。

実は人気となっている金融商品は、足元で高いリターンになっていることが多いようです。好調が続く場合もあるでしょうが、一転して値下がりすることも考えられます。
では、どうしたらいいのでしょうか。ポイントは特定の資産に集中投資をしないこと。つまり、様々な種類の資産に分散して投資をすることです。

○長期で投資を続けるコツは分散投資

新しいNISAでは、非課税期間が無期限になります。資産運用を長く続けて、リターンを得る、ということが実践しやすくなります。

ただし長期で資産運用をしていれば、大きな相場変動に遭うこともあります。リーマンショックやコロナショックを覚えている方もいるでしょう。

特定の資産に集中投資していると、値上がりした場合は大きなリターンを得られるかもしれませんが、値下がりした時のダメージも大きくなります。下落に耐えられず、投資を止めてしまうことになりかねません。投資を続けていれば得られたはずのリターンを失うことにつながります。

だからこそ「分散投資」なのです。値動きの異なる資産を組み合わせることで、リスクを抑えながらリターンを狙うことができます。
○地域だけでなく、資産も分散する

ここで「世界中の株式に投資する投資信託であれば、分散投資されているのでは?」と考えた方がいるかもしれません。もちろん、日本と海外、先進国と新興国とでは、株の値動きも異なります。しかし「景気が良くなると株価も上がりやすい」など、共通した動きも多いのです。

一番基本的な資産の組み合わせは、株と債券です。この2つの資産は異なる値動きをすることが多く見られ、より高い分散効果が期待できます。また、可能であれば、金や不動産といった資産にも広げられるといいでしょう。

投資を長く続けるために、地域だけでなく資産も分散した投資を意識しましょう。

牛山 史朗 ウェルスナビ 執行役員 リサーチ&クオンツ 働く世代の誰もが「長期・積立・分散」の資産運用を行えるようにしたいという想いから、2015年12月にウェルスナビに入社。金融工学の専門知識を活用し、自動の資産運用サービス「WealthNavi(ウェルスナビ)」の資産運用の仕組みを開発・リードしてきた。ウェルスナビ入社以前には、三菱UFJ信託銀行で個人向けの資産運用アドバイスなどを担当した後、野村證券にてグローバルな投資戦略の開発を行った。京都大学工学部で人工知能を研究、京都大学大学院情報学研究科で金融工学を専攻。 この著者の記事一覧はこちら