「殺虫剤片手に持ったアキバ系」にJAL成田”精鋭地上係員”どう対応? 超カオスな”係員NO1決定戦”実施の意図

「チェックシャツをイン」した男性が殺虫剤を片手にチェックイン、偉ぶったビジネス客、ゴネる家族連れ――。JAL成田空港の精鋭地上係員はどのように対応するのでしょうか。また、こういった企画をJALはなぜ実施するのでしょうか。
アイドルのライブなどで用いられる光る棒「サイリウム」を持ち、頭にバンダナを巻きジーパンにチェックのシャツを”イン”した、いかにもいわゆる”アキバ系”な男性二人が、「フェスに持っていくんです!」と殺虫剤を片手に、JAL(日本航空)便のチェックインを試みる――。JAL(日本航空)グループのJALスカイなどに所属する、成田空港で働く約1000人の地上係員(グランドスタッフ)から選ばれた8人の精鋭スタッフたちは、どのような応対を見せるのでしょうか。
「殺虫剤片手に持ったアキバ系」にJAL成田”精鋭地上係員”ど…の画像はこちら >>成田空港で行われたJAL「N-1グランプリ2023」の様子(乗りものニュース編集部撮影)。
これは、成田空港旅客サービス部門のスタッフを対象とし、2023年10月に実施された接客コンテスト「N-1グランプリ2023」の様子です。出場する8名のスタッフには、1人あたり7分間の実演(ロールプレイング)時間が与えられ、そのなかで先述の2人組の男性に加え、ビジネスマンや家族連れ、外国人などの対応を次々に実施する形式で審査が行われます。
実演では、身だしなみや笑顔、言葉遣いといった接客クオリティのほか、手荷物預けの制限オーバーや、危険品を持ち込もうとする客らに対し、客側の理解を得ながら安全を遵守する姿勢などが審査対象となります。なお、冒頭の殺虫剤は航空機内に持ち込み・預けることができない品目となっており、客は搭乗前に処分する必要があります。
ちなみに客役もJALスタッフですが、先述のようにシナリオは一筋縄ではいきません。
偉ぶった態度をとりながら羽田発と成田発の便を間違えて成田空港に来たにも関わらず、その旨を伝えると「もっと早く言ってよ!」と逆上するビジネス客。預け荷物の重量制限をオーバーしているにも関わらず「家では制限超過していなかった!子供のおもちゃを詰めているので移し替えたくない」とゴネる家族客。そのようななかで「トイレはどこですか?」と割り込んでくる外国人客――。そういった1組1組に対して、適切かつ丁寧な対応を求められます。
ここまでカオスな客層にグランドスタッフが対応するコンテストを、JALが行うのにはどういった意図があるのでしょうか。
企画担当者によるとこういったケースでは「ある程度設定されたルールの中、それを守りつつも寄り添えるか」に加え「代替案を出してあげることができるか」というものポイントだそうです。
「殺虫剤」のケースでは出場者は「現地到着後の購入」を勧めていたほか、「羽田と成田のビジネス客」のケースでは「本来予約していた羽田発の便の時間を即座に確認し、そこまでの交通手段を紹介する」という対応を、「手荷物預けオーバー」のケースでは「追加料金を払ってそのまま積み込むか、移し替えをするか提案という形式で客側に選択させる」という対応を即座に実施。その接客スキルは審査員を「みなさん全員に接客いただきたいという気持ちになった」と唸らせました。
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JAL「N-1グランプリ2023」で1位通過した東 仁美さん(乗りものニュース編集部撮影)。
このコンテストの実施は今回が7回目。コンテストを行うことによって、多くのグランドスタッフたちがそれを見て高いスキルを学び、JALグループスタッフ全体のサービス力、知識向上を図るというのが実施の意図だそうです。
同コンテストで入賞したのは4人のスタッフ。彼女らは今後、成田・羽田・中部地区のコンテストに出場する予定で、最終的にはJALグループ地上係員のなかから、もっとも質の高い接客を行うスタッフが審査で選ばれる予定です。このほか、同グループのLCC(格安航空会社)であるスプリング・ジャパンのグランドスタッフ1名も、特別賞を受賞しています。
1位でグランプリを通過した東 仁美さんは「楽しんでいらっしゃるお客様がいらっしゃった場合は一緒になって喜び、ある意味でスタッフとお客様といった立ち位置を超えて一緒に楽しめるような応対を心がけています」、萩原千暁さんは「お客様がいらっしゃった瞬間から雰囲気で察することができるようアンテナを張っています」と、普段の業務で心がけていることを話します。また2人の受賞者は、成田空港を「日本のおもてなしを海外に伝えられる場と考えています」と説明しています。