〈静岡ホスト集団暴行〉大学生に暴行・強制わいせつして店を支配していた兄弟は7年前に窃盗容疑で逮捕の過去、兄弟の父は記者の直撃に「ごめんなさい」と頭を下げ…

静岡市葵区のホストクラブ「RE:MAKE(リメイク)」で現役大学生ホストTさん(23)が集団リンチに遭って死亡、同僚のホストら6人が強制わいせつや傷害致死などの容疑で逮捕された事件で、中心的な役割を担ったとされる「海野兄弟」が、同じ酒店で100件近くも発生していた窃盗事件に関与したとして、7年前にも窃盗容疑で逮捕されていたことがわかった。兄弟は地元の静岡県藤枝市でも子供時代からやんちゃで有名だったという。
ともに静岡県警が傷害致死容疑で逮捕した、同店の代表取締役でもある兄の海野智哉(30)=源氏名・八神雅斗=と、弟の和哉(28)=同・一条恋=の両容疑者。7年前の事件については、地元紙の静岡新聞が2016年2月2日付け朝刊で、以下のように報じている。
海野智哉容疑者(本人SNSより)
〈焼津市内の酒屋の倉庫に侵入し、業務用生ビールの空容器や炭酸ガスの空ボンベなどを盗んだとして焼津署は1日までに、窃盗や建造物侵入の疑いで藤枝、島田両市に住む窃盗グループのメンバー5人を逮捕した。同署はこのグループが少なくとも2015年春ごろから11月ごろまでの間、この酒屋ばかりを狙って100件近くに関与したとみて裏付け捜査を進める。逮捕されたのは藤枝市、店員海野智哉(22)と弟の同市、無職海野和哉(20)《中略》の5人。5人の逮捕容疑は1~3人に分かれて15年10~11月、4回にわたって焼津市内の酒屋の倉庫に侵入し、業務用生ビールの空容器計48本と炭酸ガスの空ボンベ計2本を盗むなどした疑い。同署によると、5人は容疑を認めている。盗品は別の酒類販売店などで転売していたという。同署によると和哉容疑者と○○容疑者(編集部伏字)は当時被害店舗の従業員で5人は知人関係にあったという>
弟の海野和哉容疑者
要するに弟が勤務先の酒店で侵入と盗みの手引きをし、兄や仲間たちと盗品を売り捌くのを繰り返していたということだ。この事件のことは兄弟の実家周辺でも知られていた。「この事件で被害にあった店の社長さんが海野さんの家に来てて、そのときにたまたま社長さんと話す機会があったんだけど、『被害を弁償してもらおうと思ってきたけど払ってもらえない』とこぼしていた。窃盗事件だけじゃなくて会社のトラックも一台ぶっ壊されたらしく、その話もしにきていたみたいだけど取り合ってもらえなかったみたい」(近隣住民)
息子たちの起こした事件で、被害者の訴えを取り合わなかったのは母親のようだった。そして、兄弟にはもう1人弟がいるという。住民が続ける。「15年くらい前にこの辺が区画整理されて、新しい住人が増えてね。海野さん一家もそのときに越してきた。お父さんは物静かで優しくて、髪をいつもきっちり整えてるイケメンで、体を悪くする前は運送屋で働いていた。お母さんは勝ち気というか、男の子3人の元気な感じのお母さんって感じだったな。智哉と和哉は上の2人だな」
海野智哉容疑者(本人SNSより)
この住民に2人の近影を見せてみると、こういった。「そうそう、こんな感じで智哉はお母さん似、和哉はお父さん似だな。この2人はまあ小、中学校のころからやんちゃな子だったよ。近所の大きな家の壁に向かってサッカーしてみたり、イタズラっ子っていうかさ。素行がよくないのはなんとなく知ってた。昔は近所の人がこんなイタズラをされたって海野さんの家に言いにいく人もいたけど、あそこのお母さんは『うちの子は悪くない』って突っぱねてしまうような人だったからね」勝ち気な母親に庇護されてやりたい放題で通したからか、そのうち海野一家は近所では浮いた存在になっていったようだ。「正直、進んでかかわり合いになりたいって家は少なかったと思う。お父さんは真面目でいいやつなんだけどな。2人の素行が悪いってのは耳にしていたから、町内の会合で集まったときに父親にそれとなく水を向けてみたけど『そんなことないです。大丈夫です』って言っていたんだけどな……。何ヶ月か前にも兄弟のどちらかが白いワゴン車で戻ってきてたよ。家族仲が悪いってことはないんだろうけど」
ホストクラブ「RE :MAKE」のエントランス(撮影/集英社オンライン)
別の住民は、やんちゃな兄弟にむしろ好感を持っていた。「海野さんね。知っていますよ。一番上の子は中学生のころから顔が整っていてすごくハンサムで、すぐ下の弟はいつもくっついてる感じでした。やんちゃな話はいろいろ聞いていて、窃盗事件で逮捕される前にも、近所で車のタイヤとかブロック塀が盗まれたり、野菜の無人販売機のお金がなくなったことがあって、あの兄弟が疑われていることもありました。3番目の男の子は真面目でしたが、上2人はやんちゃだったので親御さんは大変だったと思います。でも、すごく素直な子たちなんですよ。250㏄ぐらいのバイクを家の前でエンジンをかけるのがうるさくて、ウチの主人が『この辺は子どもも多いからバイクに乗るときは気を使ってやってくれ』と注意したときも、『すいません。わかりました』と言ってくれました」兄弟はその後、バイクに乗って出かけるときは、大通りまで押して行ってからエンジンをかけるようになったという。
「もともと放任主義というか、子どもたちを怒らない家庭だったので自由な雰囲気はありました。ただ、例の窃盗事件を起こしてから、お父さんはノイローゼ気味になり、運送屋もやめて自宅にいるようになりました。ビシッとしていた髪型も、切らずに伸び放題で、身なりもゆるいスウェット姿になってしまいました。意思疎通もちゃんと取れないというか……。そんな状態になる直前にちょっと集まりがあったときに『もうしょうがないんかもなあ』とボソッとつぶやいていたので、相当気に病んでいたのかもしれません。お父さんが仕事をやめてからは、お母さんが一人で介護関係の仕事をして一家を支えている状態です」(近隣住民)
海野兄弟が住んでいたアパート(知人提供)
Tさんが被害にあった今回の事件について尋ねようと海野家を訪れるとグレーのスウェット上下を着た長髪のボサボサ頭の男性が玄関から出てきた、記者が兄弟の父親かどうか問いかけると、無言でうなずいた。父親と記者とのやり取りは以下の通りだ。--こんなときに申し訳ありませんが、2人が勤めていたホストクラブ内で起こした事件についてはどう思われますか。わからない。--2人がホストクラブで働いていたのはご存じですか。知ってる。--事件については知ってますか。知ってる。--知ったときはどう思いましたか?わからない。--被害者に申し訳ない気持ちでしょうか。(無言でうなずく)--面会できるようになったら智哉くんと和哉くんに会いたいですか? 会いにいきますか?(無言でうなずく)--取材にご協力いただきありがとうございます。辛いときに申し訳ありませんでした。父は記者が頭を下げるのを無言で見つめ続け、立ち去ろうと最後に声をかけると「あの、ごめんなさい」とつぶやき、深々と頭を下げ、玄関ドアの奥へと消えていった。再び逮捕された兄弟は、どこで道を間違えてしまったのかー。
死亡したTさん(知人提供)
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