人材不足が深刻なケアマネ。2024年度介護報酬改定で処遇改善も?

ケアマネジャー(介護支援専門員、以下ケアマネ)は、介護サービス計画(ケアプラン)をつくる重要な役割を担っています。ケアプランは、対象となる人がどのような介護サービスを、どのような頻度で受けるべきかなどを決めるもの。つまり、介護サービスを受ける側にとっても、提供する側にとっても大切な指針です。
ケアマネは介護における司令塔のような存在ですが、実は深刻な人材不足に悩まされています。
ケアマネは国家資格を取得しなければならず、介護職の中でも難関資格の一つに数えられます。介護保険制度だけでなく、実務における専門知識がなければなりません。
その受験者数と合格者数の推移をみると、1998年(第1回)は受験者数20万7,080人、合格者数は9万1,269人でしたが、2022年(第24回)は、それぞれ5万4,290人、1万2,662人となっています。およそ4分の1にまで減少している計算です。
合格者数が年々減少しているということは、そのぶんだけ流入する人員の減少を意味します。つまり、第1回での合格者は年齢を重ねており、平均年齢を押し上げる要因にもなります。
介護労働安定センターの報告によると、全国のケアマネの平均年齢は51.9歳になったと報告されています(2021年度)。
さらに65歳以上の割合も12.3%と1割を超え、60~64歳と合わせると25.5%にも上ります。現状では、実に4人に1人が60歳以上なのです。
合格者数の推移は、第1回から年々減少傾向にあるので、今後もしばらくは高齢化の傾向が続くと見込まれます。
60歳以上ともなれば、一般企業でいえばリタイア後の生活を考えるライフステージにあります。しかし、介護業界ではシニア以上のケアマネに頼らざるを得ません。
今後、リタイアするケアマネが増えれば、人手不足がさらに深刻化する恐れがあります。
ケアマネの業務はケアプランを作成するだけではありません。ほかにも月1回の利用者モニタリング、介護報酬にかかわる事務作業といった基本業務に加え、近年はケアマネジメントの質向上や医療機関との橋渡し役としての業務も求められるようになっています。
このような業務を少ない人員で回しているので、一人当たりにかかる負担が重くなるのは当然です。
厚生労働省の報告によると、居宅介護支援事業所において1事業所当たりのケアマネの人数は常勤で2.8人、非常勤で0.2人となっています。また、各事業所にその配置状況(実人員)を尋ねると、「1人」と回答した割合は22.6%で最も多く、次いで「2人」が21.9%となっています。4割以上の事業所で1~2人のケアマネしかいないことになります。
一方、居宅介護支援事業所の1事業所当たり利用者数は95.0人(要介護80.8人、要支援14.2人)。厚生労働省の概算では、ケアマネ1人当たりの担当者数は31.8人(要介護26.9人、要支援4.9人)にも上ります。
ケアマネはそれぞれの利用者に対するモニタリングが義務づけられているので、土日に関係なく毎日1軒回っても足りません。そのほかの業務もこなしながら、さらに質の向上も求められており、その勤務状況は非常に厳しいものとなっています。
こうした現状を受けて、ケアマネについても処遇改善加算を認めるべきではないかとという議論が巻き起こっています。
現在、介護職員には3つの処遇改善加算が設けられていますが、ケアマネはその対象に含まれていません。
報酬アップのためには、厳しい要件が設けられている特定事業所加算やターミナルケア加算などを算定するしかありませんが、これらはあくまで事業所に対する報酬として給付されます。介護職員に対する処遇改善加算のように、必ずしも給与面に反映されるわけではありません。
また、専門機関からはケアマネの人員配置を緩和すべきとも指摘されています。4つの病院団体で構成される四病院団体協議会は、「全国的に人材不足が顕在化してきている介護支援専門員について、各サービスでの配置を再考すべき」と厚労省に提言しています。
ケアマネの人材不足によって多くの施設でサービスが行き届いていないケースが起こっていると指摘。そのうえで、ケアマネが本当に必要なサービス種別に集中的に配置できるように提案しました。
とはいえ、処遇や人員配置を改善しただけでケアマネの人材不足を解消できるわけではありません。処遇改善加算を手厚くした介護職員でも、人材が急激に増えているわけではないことからも明らかです。
一方で、介護職員のキャリアアップとして、ケアマネは一つのゴール地点でもあります。そのため、より受験しやすい環境を整えることも重要だと指摘する専門家もいます。
厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課で行った「令和2年度介護支援専門員の法定研修受講者負担」をみると、都道府県によって受講料に大きな違いがあります。
例えば、実務研修は最高で7万9,950円なのに対し、最低は2万800円。その差は5万円以上もあります。
すべての都道府県で一律にすることは困難ではありますが、少なくとも地域区分などの等級を定め、平均化を目指すことはできるかもしれません。
現在、ケアマネは居宅介護支援事業所だけでなく、地域包括支援センターなど、さまざまな事業所に配置義務があります。
しかし、今後高齢化が進んでリタイアする人材が増えると、各施設で不足する恐れがあります。
そこで、配置要件を緩和することで、非常勤でもさまざまな施設で働けるようにしたり、業務負担を軽減することで人員不足に対応していく必要があるでしょう。
人員配置の緩和策は、人材不足を解消する直接的な対策にはなりません。しかし、ケアマネを急激に増やすことができないのも事実です。今後の不足を見越して、円滑に介護サービスを提供できるよう今のうちからの対策が必要でしょう。