中央線「昭和グルメ」を巡る 第207回 野菜カレーを体験すべし「カレーの店 プーさん」(武蔵小金井)

いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。

今回は、武蔵小金井のカレー屋さん「カレーの店 プーさん」をご紹介。

○武蔵小金井のカレー屋さん「カレーの店 プーさん」

武蔵小金井駅南口から、駅を背にして小金井街道を5分ほど進むと、連雀通りと交差する「前原坂上」交差点にぶつかります。以前ご紹介したことのある「コーヒー & パブ KEN」は、右に見えるセブンイレブン脇の質屋坂通りを入ったところ。

でも今回はそちらに曲がらず、もう少しだけ直進してみましょう。するとすぐ右側に、周囲に並ぶお店とはいささか雰囲気の異なる、ベージュ色のレンガで覆われた建物が現れます。

民家のように見えなくもないし、そもそも看板らしきものも見当たりません。でも右側の大きな窓には営業日を示すカレンダーが貼られており、左側にあるガラスの入ったドア脇には、イーゼルに乗せられたメニュー表も。

ってなわけで、中央線沿線の有名店でもある「カレーの店 プーさん」は、少なくとも外見的にはなにかとわかりにくいのです。

それでも行列ができるほど人気があるのは、当然のことながらカレーが魅力的だから。他店にはない個性が備わっているので、並んで待つ理由も充分に理解できるわけさ。

とはいえ個人的には、どんな店であれ行列したりするのは苦手なんですよ。そこでこの日は、開店の11時より15分ほど前に到着。幸いにもまだ誰もいなかったので、一番目の客として開店時刻まで並んで待ったのでした(なんだよ、結局は待ってんじゃん)。

2人ほどが後ろに並んでほどなく、11時ちょうどに開店。ドアを開けてくれた女性から、「お好きな席へどうぞ」と声がかかります。

店内はドアを中心にして左右にカウンター席が並んでいて、正面奥に厨房。

右側にはテーブル席も2卓。

左のカウンターの、いちばん手前の席を選びました。

じつは15年以上前に道路の拡張工事に伴ってリニューアルされた経緯があり、新しい(といってもかなり経つわけだけど)店舗になってからは初めてお邪魔したんですよ。だから、ちょっと新鮮な印象。

コロナ対策だと思われますが、カウンター席はそれぞれアクリル板で仕切られており、各席のスペースにも余裕が。そのため、しっかりとプライベートが保たれています。これはこれで落ち着けますね。

メニューを手にすると、そこには「多種類の野菜、果物をソースのベースに20種類近い香辛料(漢方薬と共通するものも多い)を使用し、油を使わずに仕上げたカレーです。鰹節、昆布、椎茸などを使用して旨みを得て、塩分量を抑えています」と書かれております。

つまりはそれこそが、上記の「他店にはない個性」。

なお、数あるバリエーションのなかかからは、ぜひとも「野菜カレー」をチョイスしたいところ。僕の知る限り、これがもっともプーさんらしいカレーだからです。

それとライスの量は「レギュラー」「プチ(少なめ)」「大盛」の3種があるのですが、レギュラーでもかなりの量があるので注意が必要。

今回は「野菜カレー」の「プチ」で、辛さは5段階のなかから「辛」にあたる4をチョイスしました。

この日は平日でしたが、待っている間にもどんどんお客さんが入ってきます。テイクアウトもできるので、オーダーしてから「あとで来ます」と一度出て行った方も。専門性の高い人気店ではあるけれど、地元にしっかり根づいていることがわかります。

さてさて、やがて登場した野菜カレーに話を戻しましょう。やはり、見るからに圧倒的。

なにしろレンコン、小松菜、オクラ、パプリカ、トマト、茄子、こんにゃく、ズッキーニ、グリンピース、パセリ、カリフラワー、しめじ、舞茸、ししとう、うずらの卵など(見落としもあるかも)、野菜がカレーの上にごっちゃりと乗っているのです。

素揚げされたそれらは素材の味がしっかり生きているので、「こっちはどんな感じかな?」と、食べ進めるほど楽しさが持続するような感じ。

そして、予想どおりライスはプチでもかなりの量。

横から見てみても、山のようにこんもりと盛り上がっております。

大盛だったらどうなるんだろう? 恐ろしや。

カレーに関しても「非常に辛い」というイメージが記憶に残っていたので4を選んだのですけれど、スッキリまとまっているせいか、思っていたほど辛くはなかったかな。

これなら、5の「極辛」でもイケるかもしれない。次回は、ぜひ挑戦してみよう。

食後も辛さで苦しむようなことはなく、サービスのマンゴーラッシーを飲んだらスッキリ爽やか。

快適な気分で、武蔵小金井駅までの帰り道を歩くことができたのでした。

●カレーの店 プーさん
住所: 東京都小金井市前原町3-40-27
営業時間: 11:00~22:00(L.O. 21:00)
定休日: 火曜

印南敦史 作家、書評家。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家として月間50本以上の書評を執筆。ベストセラー『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちPHP研究所より文庫化)を筆頭に、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書に学んだライフハック――「仕事」「生活」「心」人生の質を高める25の習慣』(サンガ)、『それはきっと必要ない: 年間500本書評を書く人の「捨てる」技術』(誠文堂新光社)、『音楽の記憶 僕をつくったポップ・ミュージックの話』(自由国民社)、『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)ほか著書多数。最新刊は『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)。 この著者の記事一覧はこちら