地方のあるタクシー会社がEVの軽自動車をタクシーとして導入しました。軽自動車のタクシー使用は「EVならOK」という国の基準があります。これまで軽のタクシーが存在しなかったのも無理はないのですが、もしかしたら、地方のタクシー運転手不足には有効かもしれません。
富士急グループの甲州タクシー(山梨県甲州市)が軽自動車のEV(電気自動車)タクシーを2台導入し、2023年11月から運行を開始しました。車種は日産「サクラ」。軽自動車のタクシーは極めて珍しい存在といえます。
そういえば見ない「軽自動車のタクシー」が運転手不足を救うかも…の画像はこちら >>甲州タクシーが導入した日産「サクラ」のタクシー(画像:甲州タクシー)。
今や新車販売の4割を占める軽自動車、それを使ったタクシーがあってもおかしくはないと思うかもしれませんが、実は“エンジン車の”軽自動車は国の安全基準に適合しないとされ、一般的な乗合のタクシー車両として認められていません。しかしEVはOKとされており、過去には三菱「i-Miev」のタクシーも登場しましたが、広く普及することはありませんでした。
甲州タクシーはこの軽EVタクシーの導入を、「女性乗務員の獲得強化」につなげるとしています。
「地方在住の女性の多くは軽に乗っています。そうした人にとって、セダンなど大きなタクシーを運転するのは抵抗があるのです」(甲州タクシー)
日産サクラなど、手の届く価格の軽EVが登場したのも大きな契機だそう。ただ、サクラのタクシーは日産と連携して京都のいくつかのタクシー事業者が採用しているものの、業界全体で軽自動車をタクシーとして採用する取り組みはほとんど見られないといいます。というのも、「お客様目線で見ても、軽のタクシーということに抵抗があるのだと思う」とのこと。
しかし、タクシーの運転手不足が顕在化し、女性ドライバーの獲得も急務となるなかで、「『軽ならば(乗務員として)乗ってくれるかな』という思いもありました」といいます。
サクラのタクシーは、コスト的にはジャパンタクシーなどを導入するよりも安く、導入時に補助金が出るのも大きいと話します。「200Vの電源さえ確保できれば営業所で充電できます。急速充電器は必要ないと判断し、主に夜間に充電しています」とのこと。
「地方のタクシーの利用は病院や買い物など、昼間の営業がメインです。そもそも夜は女性ドライバーも走りたがりません。こうした土地柄も軽EVタクシーの導入には合っていると思います」(甲州タクシー)
軽EVタクシーの料金は普通車料金と同額。まずは2台から試験的に導入し、徐々に増やしていきたいといいます。