ロードスター先輩に宣戦布告? 揺れるダイハツ・コペン「軽はもうやめます」というメッセージ

ジャパンモビリティーショーで発表されたダイハツ「コペン」のコンセプトカーは、軽自動車ではなく登録車になるというメッセージを示しているようです。軽オープンカーとして20年、ファンを獲得してきたコペンはいま、壁に直面しています。
「東京モーターショー」改め、装いも新たになった「ジャパンモビリティショー2023」において、ダイハツは「ビジョン・コペン」というコンセプトカーを発表しました。
ロードスター先輩に宣戦布告? 揺れるダイハツ・コペン「軽はも…の画像はこちら >>ダイハツ「ビジョン・コペン」(乗りものニュース編集部撮影)。
「コペン」は、ダイハツが販売している軽自動車のオープンカー。FF(前輪駆動)ながら、キュートなルックスで人気を集めるスポーツカーです。2002年に初代モデルが誕生して、2014年に第2世代にバトンタッチしています。
ところが「ビジョン・コペン」は、驚くことに軽自動車ではなく、全長3.8mの登録車。しかも、EVシフトが謳われる今、1.3Lのエンジンを搭載しているといいます。さらに駆動方式としてFR(後輪駆動)と発表されました。ただしそのルックスは、ロングノーズのFRのプロポーションとなりつつも、キュートな軽自動車、しかも初代「コペン」の面影を残すものとなっています。デザイナーの気合が感じられるデザインです。
そうした「ビジョン・コペン」に関して、好意的なコメントや、実際に見た人からの好意的な感想をいくつも得ることができました。いわく「格好良い」「ぜひとも量産化して、マツダのロードスターに挑戦状を叩きつけてほしい」というポジティブなものばかりでした。
その中には逆に、「マツダのロードスターをベースにすれば、すぐに実現化できるはず」というアイディアもありました。
ただし「コペン」に関して、マツダからのOEMをダイハツが飲むとは個人的には、とても思えません。なぜなら、「コペン」は、ダイハツにとって重要なモデルであり、自社で作る必要があると考えるからです。
これまで自動車ライターとして、ダイハツの取材を何度も重ねてきましたが、その中で感じてきたのが、「ダイハツにとって、コペンは誇りである」ということです。
ダイハツは廉価良品といって、安くて良い商品を提供することに力を入れています。真面目で堅実な方針で、ユーザー的には嬉しい方針です。ところが、自動車好きという目線にしてみれば「華がない」「面白みがない」ということになってしまいます。そんな中で例外となるのが「コペン」です。
キュートで可愛らしいだけでなく、運転も楽しい。軽を価格で見るのではなく、愛すべき存在として見てほしい――ダイハツの中の人がそう胸を張れるクルマが「コペン」なのです。それを他社からOEM供給されるなんて、ありえません。なんとしても自分たちで作り上げたいと考えるはずです。
では、他車からのOEM供給を拒否してまで作りたい「コペン」が、なぜ、これまでと全く違う形になっているのでしょうか。これに関して、ショー会場にいたダイハツの人に聞いたところ、目からウロコが落ちるような納得の回答を得られました。
ダイハツの人いわく、「コペンは重要なモデルなので、当然、次の世代のことを考えていた。でも、軽自動車の安全規準は年々厳しくなるばかり。このままでは、軽自動車でオープンカーを作るのは難しい。そこで、ゼロベースで考え直したところ、登録車のFRレイアウトになった」とのこと。
なるほど、5年や10年という長いスパンで考えると、軽自動車で考えると厳しいのは確かです。また、登録車にすれば、トヨタが扱う可能性も生まれますし、海外でも販売しやすくなります。EVコンセプトにせずに、エンジン車コンセプトにしたところからも、量産化に向けた本気度が感じられます。
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マツダ「ロードスター」。ビジョン・コペンとサイズ感はかなり似ている(画像:マツダ)。
ダイハツの現場レベルの人たちは、なんとか次世代の「コペン」を世に送り出したいと考えていることは確実です。あとは、経営を司る偉い人をどれだけ口説けるかではないでしょうか。今回の「ジャパンモビリティショー2023」において「ビジョン・コペン」が注目されるようになれば、それも偉い人の説得材料になることでしょう。
ちなみに初代「コペン」も、その前となる1997年の東京モーターショーにおける「FR-X」、そして1999年の「KOPEN」というコンセプトカーが存在していました。そうしたコンセプトカーの先に量産車が登場してきています。「ビジョン・コペン」も、今後の状況次第では、市販化への道も切り拓けるはず。意外や可能性の高い1台かもしれません。