【FPが解説】フリーランスにおすすめの「クレジットカード」3選 – 選ぶポイントも紹介

フリーランスになると仕事の自由度は高くなりますが、お金の管理は意外と大変なもの。そんな時に役立つのが、クレジットカードです。しかし、「フリーランスだとクレジットカードの審査が厳しいのでは」「どんなカードを選べばいいのだろう」とさまざまな疑問があることでしょう。

そこでこの記事では、フリーランスとして独立を目指している方、すでに独立して活躍されている方に向けて、フリーランスにおすすめのクレジットカードについて解説します。

■フリーランスに向いているクレジットカードの種類とは

多くの人が心配するように、フリーランスは会社員と比べるとクレジットカードの審査に通りにくいという実情があります。毎月決まった収入が得られる会社員とは違い、フリーランスは仕事に波があり、収入の安定性に欠ける面があるからです。

そのため、これからフリーランスを目指すという人は、独立する前に個人用のクレジットカードを作っておくといいでしょう。会社員のうちにカードを作っておけば、独立してからクレジットカードを作れるかどうか心配することはなくなります。

そのうえで、独立後に新しくクレジットカードを作るなら、個人事業主向けの「法人カード」を持つのがおすすめです。個人向けのカードの場合、フリーランスだと審査が厳しくなる可能性がありますが、個人事業主向けの法人カードであれば、フリーランスだからといって審査上不利になる可能性は低いでしょう。

法人カードには、大きく分けて「ビジネスカード」と「コーポレートカード」の2種類があります。ビジネスカードは、個人事業主や従業員数20名以下の中小企業向けのカードです。一方の「コーポレートカード」は、従業員数20名以上の大企業で利用されることを想定したカードです。

基本的にビジネスカードは、法人の信用情報が審査され、支払い口座も法人口座となりますが、中には、代表者個人の信用情報をもとに審査する「個人与信」タイプもあります。そのため、フリーランスや個人事業主の方、または法人を設立して間もない方は、個人与信のビジネスカードを選ぶといいでしょう。

こうした法人カードを個人用カードとは別に持っておくと、仕事に使うお金を管理しやすくなります。プライベートの支出と仕事の経費を明確に分けるためにも、独立後は法人カードの作成を検討しましょう。
■法人カードのメリットとデメリット

法人カードを持つと、さまざまなメリットが得られます。法人カードのメリットを詳しくみていきましょう。
<法人カードのメリット>

1.個人用カードと比べて限度額が高い

法人カードは、個人向けカードと比べて限度額が高く設定されているものが多いです。日常的な買い物に使用する場合、限度額はさほど高くなくても問題ありませんが、仕事に必要なものを購入する場合は50万円や100万円の限度額では足りないケースもあるでしょう。その点、法人カードなら多額の支出にも対応できて便利です。

ただし法人カードでも、新規で申し込んだ直後は、数十万円程度の小さな限度額でスタートすることもあります。はじめは大きな支払いに対応できない可能性もあるため、注意が必要です。

2.経理管理が楽になる

個人用カードで生活費も仕事の経費も支払うと、プライベートの支出と経費が混在してしまい、お金の管理が複雑になりがちです。一方、事業用の支出を法人カードにまとめれば支出を分ける手間が省けますし、カードの明細書には「いつ、どこで、いくら使ったのか」が明記され、経理管理が楽になります。

また、クレジットカードと連携できる会計ソフトを使うのもおすすめです。クレジットカードの利用明細データを会計ソフトに取り込めば、会計処理が自動でできて業務効率化に役立ちます。

3.年会費を経費に計上できる

法人カードの年会費は、経費として計上できるため節税にもなります。個人向けカードの年会費も経費計上は可能ですが、経費の決済に使用した部分を按分しなければならないなど、扱いが煩雑です。また、按分の割合が妥当でないと、税務署から指摘を受ける可能性もあります。

手間をかけずに年会費を経費計上するなら、法人カードが向いているでしょう。

4.資金繰りが楽になる

フリーランスは好きな仕事が選べるなど働き方の自由度が高い一方、市況の影響を受けやすく、時期によって収益が左右されることもあるため、資金繰りを考えることは重要です。

クレジットカードは翌月払いが一般的ですので、今すぐまとまった資金が必要で、翌月には取引先からの振込が見込める場合には、法人カードで支払うことで臨機応変に対応できます。

このようにメリットの多い法人カードですが、デメリットがあることも忘れてはいけません。ここからは法人カードのデメリットをご紹介します。
<法人カードのデメリット>

1.支払い方法が限られている

法人カードの代表的なデメリットは、支払い方法が限られている点です。個人向けカードの場合、一般的には1回払いから分割払い、ボーナス一括払い、リボ払いなど豊富な支払い方法が用意されています。

それに対し、法人カードの支払い方法は基本的に翌月1回払いのみです。ただし、その時々で異なる支払い方法を選ぶと経理管理が複雑になりますので、「お金の管理がしやすい」という点では大きなデメリットにはならないかもしれません。

2.年会費が高い

法人カードの場合、個人向けカードと比べると年会費が高めに設定されています。また、個人向けカードには年会費無料のカードが多くありますが、法人カードで年会費無料のカードはさほど種類が多くありません。

ただ、先ほどもあったように法人カードの年会費は経費として計上できますし、年会費無料の法人カードの中にも魅力的なカードは存在します。一方、年会費が有料の法人カードでもポイント還元や優待などで元が取れるケースもありますので、ご自身に合うものを見つけてみましょう。

3.ポイント還元率は低め

個人向けカードと比較すると、法人カードの還元率は一般的に0.5%程度と低めです。「経費の支払いでできるだけポイントを貯めたい」という人にとっては、還元率の低さは気になる点でしょう。

しかし、種類は少ないものの、法人カードの中にも還元率1.0%や1.5%というカードもあります。事業用カードで多くポイントを貯めたいなら、ポイント還元率を重視してカードを選びましょう。
フリーランスがクレジットカードを選ぶ際のポイント
事業用のクレジットカードを持つとさまざまなシーンで便利ですが、「どうやってカードを選べばいいかわからない」と悩む方も多いでしょう。次に、フリーランスがクレジットカードを選ぶポイントをご紹介しますので、このポイントをもとにご自身に合ったカードを選んでみましょう。
1.年会費

法人カードの場合、年会費は経費計上できますが、独立したての頃はよほどカードの利用額が大きくない限り年会費はできるだけ抑えた方が良いでしょう。

最初は年会費無料のカードから始め、利用額が大きくなったり付帯サービスを充実させたくなったりした場合、ゴールドカードやプラチナカードに申し込むのがおすすめです。
2.限度額

仕事で高額な物品・サービスを購入する機会がある場合、限度額の大きなカードを選びましょう。ただし、はじめの限度額は小さく設定され、継続的に利用することで大きくなるケースもあります。経費の支払い状況を踏まえ、限度額が足りなくならないようカードを選びましょう。
3.ポイント還元率

法人用カードはポイント還元率が低めですが、1.0%など還元率高めのカードを選べば、その分ポイントは効率よく貯まっていきます。また、貯まったポイントで消耗品や備品など事業で使用する物品を購入すれば、経費の削減にも役立つでしょう。
4.付帯サービス

付帯サービスもチェックしましょう。出張で空港を利用する機会が多い人なら、空港ラウンジの利用や旅行保険などトラベルサービスの確認は必須です。また、経理ソフトとの連携、損害賠償保険など、一般のクレジットカードではあまりカバーされない付帯サービスもありますので、この点も注目してください。
■クレジットカードの審査に通りやすくなるには

法人カードを作りたくても、やはり審査に通るか不安なものでしょう。法人カードの審査に通りやすくなるためには、以下に挙げる点を意識してみましょう。
<一度に複数社のカードに申し込まない>

クレジットカードを申し込むと、信用情報機関に個人情報が6ヶ月間登録されます。各カード会社では、クレジットカードの申し込みがあると信用情報を照会しますので、6ヶ月以内に他の会社でカードを申し込んでいるかどうかもわかる仕組みになっています。

この時、短期間に2件、3件と複数社のカードを申し込んでいる履歴があると、カード会社に怪しまれる危険性があるため注意が必要です。短期間に複数社に申し込んでいるのは、先に申し込んだカード会社の審査に落ちた、もしくは複数枚のカードを利用したいという理由が考えられます。

他社の審査に落ちたのなら信用状態が疑われますし、複数枚のカードが必要なら資金繰りに問題があると思われても仕方がありません。そのため、一度に申し込むカードは1枚だけにし、2枚目を申し込む場合は1枚目の申し込みから6ヶ月以上経ってからにするのが無難でしょう。
<事業主であることを明確に示す>

事業主として仕事をしていることを明確に示すのも、大切なポイントです。たとえば、開業届を提出しておくと事業主であることを法的に証明できます。そのほか、事業用の固定電話を用意しておくと有利です。自宅に固定電話がなければ、IP電話でも問題ありません。

さらに、事務所を開設していると自宅で仕事をしているよりも事業実態をアピールできます。事業用の専用口座もできれば開いておいたほうがいいでしょう。
<キャッシング枠は最低限で申請する>

法人カードではキャッシング枠が設けられていないのが一般的ですが、個人事業主に限る場合などは、キャッシング枠が設けられるカードも存在します。しかし、キャッシング枠を設定すると、通常は審査のハードルが非常に上がってしまいます。

キャッシング枠は設定しないか、もしくは最低金額にしておくと審査に通過しやすくなる傾向にあるようです。
■フリーランスにおすすめのクレジットカード3選

最後に、フリーランスにおすすめの法人カードを3枚ご紹介します。
1.三井住友カード ビジネスオーナーズ(一般)

年会費が永年無料で、ポイント還元率0.5~1.5%とお得にポイントが貯められるクレジットカード(個人カードと2枚持ちでポイント最大1.5%還元)。限度額は500万円です(所定の審査あり)
。カードランクは一般カードのほか、ゴールドカードがあります。

申込時に登記簿謄本や決算書が不要なため、起業して間もないフリーランスでも持ちやすいのがポイント。また、Freee会計や勘定奉行、弥生会計など、多くの会計ソフトとデータ連携が可能です。

さらに、東海道・山陽・九州新幹線のネット予約 & チケットレスサービス、航空券チケットレス発券サービスなど、移動の多い方に嬉しい付帯サービスも充実しています。
2.NTTファイナンス Bizカード

「NTTファイナンス Bizカード」には、法人向けと個人事業主向けの2種類があります。年会費は永年無料で、ポイント還元率は1.0%。限度額は個別設定です。通信料金や公共料金の支払いもポイント付与の対象となり、さらに会員専用ポイントモール「倍増TOWN」経由で購入するとポイントは最大26倍にもなります。

個人事業主向けのカードは、申し込みにあたり登記簿謄本や決算書が不要。支払い方法も一括払いのほか、2回払い、分割払い、リボ払い、ボーナス一括払いと多くの方法が用意されています。

また、Web明細編集サービスが付帯しているため、経理管理の手間を省くのに役立ちます。さらに、充実した内容の海外・国内旅行傷害保険が付帯するほか、「Amazon Business」が利用できるなど、使い勝手の良さが魅力のクレジットカードです。
3.セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード

年会費永年無料で限度額は個別設定、基本のポイント還元率は0.5%のクレジットカード。しかし、特定加盟店での利用においては、4倍の2.0%の還元を受けることができます。

申し込みにあたり登記簿謄本や決算書が不要なのもポイント。また、レンタルサーバーやクラウドサービスを優待価格で利用できるなど、フリーランスには嬉しい特典が用意されています。
■ビジネスパートナーとして最適なクレジットカードを選ぼう

フリーランスとして働くうえで、クレジットカードは単なる支払いツールではなく、ビジネスを効率化するための重要なパートナーです。ご自身にとって最適なカードを選び、上手に活用することで、ビジネスもプライベートもさらに充実させましょう。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら