駅構内で出会ったポスター、強烈な既視感が… 「あの映画そっくり」とネット民驚愕

日本の公共機関は清潔で真面目な印象があるが、「お堅い」というイメージを抱く人もいるのでは。しかし昨今ではこうしたイメージを覆すが如く、ユーモアに富んだアイデアを見せる施設も少なくない。
現在ツイッター上では、都内の某駅にて発見された「衝撃的なポスター」に驚きの声が寄せられているのをご存知だろうか。
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今回注目したいのは、ツイッターユーザー・金村詩恩さんが投稿した1件のツイート。
こちらの投稿には黄色を基調としたポスターの写真が添えられており、JRのロゴマークがあることから、駅構内で撮影したものと分かる。
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腕組みをした駅職員が険しい表情を浮かべてこちらを見上げている…というデザイン、どこか強烈な既視感が…。同様の感覚を味わった人も多いことだろう。
思わずツイート本文に目をやると、そこには「トレインスポッティング」と、既視感の正体が記されていたのだった。
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『トレインスポッティング』は、1996年に製作・公開されたダニー・ボイル監督によるイギリス映画。スコットランドを舞台に若者たちの退廃的な日常を描いた作品で、90年代を代表する映画といっても過言ではない。
若者たちの日常の「生々しさ」と、イギリスならではの「スタイリッシュさ」を見事両立した作風は根強いファンが多く、イギー・ポップやアンダーワールドといったミュージシャンらの楽曲がふんだんに使用されており、音楽面から興味を持った人も多いだろう。2017年には続編映画『T2 トレインスポッティング』が公開され、大きな話題を呼んだ。

そんな『トレインスポッティング』のジャケ写では主人公のマーク・レントンが腕を組み、目線を前方にやっており、前出のポスターの構図が「完全に一致」と呼びたくなるレベルで酷似していることが分かる。

髪の長さもそっくりで、異なる点は人物の「向き」と「指」くらいだが、俯き加減の「角度」がほぼ一致している点も興味深い。
件のツイートは投稿から数日で4,000件以上ものRTを記録し、他のツイッターユーザーからは「ポーズといい色味といい、トレインスポッティングすぎる」「センスが輝いてるな」「分かる人だけに分かるオマージュ好き」「これ作った人のセンスに嫉妬する」などなど、称賛の声が多数寄せられていたのだ。
ツイート投稿主・金村さんに発見時の様子を尋ねたところ、件のポスターは17日、JR御茶ノ水駅構内のトイレ付近で発見したものと判明。
金村さんは「同日、駅員さんに『これって「トレインスポッティング」のオマージュですよね?』と尋ねてみたのですが『分からない』と答えられました」とも振り返っており、謎はさらに深まるばかり…。
そこで今回は記者としてだけでなく、いち『トレインスポッティング』ファンとして、金村さんの無念を晴らすべく、JR東日本に詳しい話を聞いてみることに。その結果、衝撃の事実が明らかになったのだ…。
トレインスポッティング pic.twitter.com/tns44PNXoF
sion (@zionsion) January 17, 2023
今回の取材を快諾してくれたのは、JR東日本首都圏本部広報。まずはポスターの詳細を確認すると、こちらは御茶ノ水駅改札内の自由通路に、13日から掲出されたものと明らかになったのだ。
同日はポスター内にも記載がある「JR東日本 懐かしの駅スタンプラリー」の実施初日に当たり、ポスター掲出の意図について担当者は「『懐かしの駅スタンプラリー』開催に併せて、お得に都内近郊をまわれるきっぷを購入して頂いたお客さまに『ポストカード』を配布することを企画しました」と振り返っている。
「いかにお客さまに興味を持ってもらうか」「目に留まるポスターは何か」の2点を意識した結果、駅員を起用したインパクトのあるポスターが誕生したそうで、担当者からは「御茶ノ水駅をご利用頂いているお客さまに、親近感と興味を持ってもらえると嬉しいです」とのコメントも得られたのだ。

なお、写真に写った人物は御茶ノ水駅に勤務する社員で、過去に同駅内の掲示物で使用した写真をスタンプラリーに合わせて「懐かしさ」を強調するため、レトロな雰囲気に加工したことが判明している。
では、こちらの社員が大の『トレインスポッティング』好きなのか…と予想しつつ、ポーズ決定の経緯を尋ねたところ、「『トレインスポッティング』を彷彿とさせる、と言われることは想像しておらず、今回このような声を頂いて、初めて映画の存在を知りました」「決して映画のパロディを狙って作成したものではございません」と、驚きの回答が返ってきたのだ。

御茶ノ水駅内には話題のポスターを合わせ、計3種類のポスターが掲出されており、他2枚のデザインを確認したところ、いずれも何らかのオマージュを感じさせるデザインではなく、件のポスターは本当に偶然『トレインスポッティング』に似てしまっただけのよう。

「単なる偶然だった」という事実に一抹の寂しさを覚える人もいるかと思うが、逆に考えると「御茶ノ水駅には、意識せずともレントンとシンクロできるセンスの持ち主が存在する」ということで、これはこれで胸熱案件ではないだろうか。かの駅員にはぜひ、栄誉ある「ナチュラル・ボーン・レントン」の称号を贈りたい。

ちなみに御茶ノ水駅といえば21年の春頃、構内に「消毒駅」なる駅が誕生して大きな話題を呼んでおり、ユーモアセンスに富んだ駅であることが改めて窺える。
前出のスタンプラリー企画は3月6日まで実施しているので、チャレンジする際はぜひ、御茶ノ水駅で話題のポスターをチェックしてみてほしい。
(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)