性暴力から子どもを守る 文科省「生命の安全教育」広がる 千葉県内教委・保育園も

文部科学省の「生命(いのち)の安全教育」の導入が全国の学校などで進んでいる。子どもたちを性暴力の被害者、加害者、傍観者にしないための取り組みで、県内でもプログラムを活用している自治体や保育施設がある。千葉市中央区の認可保育園「そがチャイルドハウス保育園」では、2021年度から2年連続で文科省から委託されている。統括保育士の藤原一美さんは「早いうちから学べば被害に遭ったときおかしいなと気付ける」と指摘している。
文科省は自治体などに安全教育の実施を委託して実証事例を集めており、県内では本年度、同園のほか千葉市と浦安市の教育委員会が委託されている。文科省は発達段階に応じた教材や手引書をホームページでも公開し、委託先以外でも教材を使って安全教育をできるようにしている。
◆対話形式で実施
同園では文科省が制作した幼児期向けの教材を基にシナリオを作成。園児が理解しやすいように紙芝居や紙人形を使い、対話形式で安全教育を行っている。きっかけは「子どもから性的な質問があったときに答えられなかった」と保護者から相談を受けたことだという。保育士も園児から質問を受け、対応に困っていたことから実施に踏み切った。
1月に行われた安全教育には年少と年中の園児計11人が参加。「自分の体のお名前知ってるかな」と藤原さんが園児に語りかけて授業が始まり「特に水着で隠れている部分はとっても大事だから、知っている人でも見せたり触らせたりしたらだめだよ」と優しく説明した。

紙人形でSOSの出し方を伝え「嫌だと思ったら逃げて大人に伝えて。『たいしたことない』とちゃんと聞いてくれない人がいたら、他の人にも話してね」と締めくくった。
「まだ早いのでは」「小学校に上がったときに、うちの子だけ知ってるといじめられるのでは」と不安視する保護者もいるという。そこで同園が作った絵本や資料を配布し、家庭でも理解を深められるよう工夫している。若菜俊明園長は「園児は世界が狭く、大人の言うことが絶対。被害に遭ったら話が分かる人まで伝えてほしい」と述べた。
◆継続して教育を
淑徳大学の小川純子教授(小児看護学)は、就学前から継続して安全教育を行う意義について「小さい時には理解できないことが、成長に伴い理解できるようになる。子どもが好奇心を持ったときが教えどき。自分が加害者にならないためにも必要」と強調する。
「安全教育を受けた後、被害を訴える子どもがいるかもしれない。一方、教える側にも虐待を経験した人がいる可能性がある。ケアや配慮がいる」と課題を指摘した。