「スシローペロペロ事件」でも起きたネットリンチは罪になる? …の画像はこちら >>
「スシローペロペロ事件」を機に、飲食店への迷惑行為が続出している。ネット上では、加害者の本名や通っている学校などを特定し、拡散する事態に…。
こうした”ネットリンチ”は罪に問われないのだろうか。
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1月下旬、スシローで少年が未使用の湯呑みや醤油ボトルを舐め回す、レーンを回る寿司に唾液をこすり付けるといった動画がSNSで拡散された。その後、他の飲食店でも同様の迷惑行為が次々と明らかに。
こうした行為に対する怒りからか、ネット上では暴走した行動に出る人も見受けられる。「スシローペロペロ事件」では、加害者である少年の顔写真と共に、本名や彼が通う学校名などを特定し、拡散。
一部のメディアでは、少年が通う学校にクレームの電話が相次いでいるとも報じられている。
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一連の飲食店に対する迷惑行為は単なる”悪ふざけ”で済まないことは明白。とは言え、加害者やその家族の個人情報を特定し、SNSで不特定多数の人に拡散するといった行為は法的に問題ないのだろうか。
レイ法律事務所の髙橋知典弁護士は、名誉毀損罪になる可能性があると指摘する。
「事件とは関係のない個人情報等を拡散することは、名誉毀損罪になりかねず、刑事罰に問われる可能性があります。また、民事上も個人情報の拡散は、肖像権やプライバシー権等の侵害として違法行為になる可能性があります」(髙橋弁護士)。
中には、誤った情報や無関係な人物の個人情報が晒されるケースもある。前出の髙橋弁護士は「過去、誤った個人を事件関係者として発信してしまった結果、名誉毀損罪に問われた事件もありました。ネット上での特定行為は、名誉毀損や業務妨害といった犯罪や損害賠償責任を負うことになる可能性が極めて高い危険な行為といえます」と警鐘を鳴らす。
スシローの一件では、少年が通う学校に抗議の電話をかける人物もいたようだ。事件と関係のない会社や学校にクレームの電話を入れると、内容によっては罪に問われる危険が。
「威力業務妨害罪、脅迫罪や強要罪等といった犯罪行為に該当する恐れがあります。例えば、電話口で大声で一方的に怒鳴り続けたり、『晒してやるからな』『今から乗りこんで暴れてやる』といった発言をすれば、こうした犯罪になる可能性があります。そうした場合、会社や学校側は犯罪行為として法的措置を取ることもできます」(前出・髙橋弁護士)。
迷惑行為を追求しようとして、知らず知らずのうちに自分も「迷惑行為」を行う側になり、その結果、犯罪者になる可能性もあるということだ。
「迷惑行為」を行った人間のせいで、その人間が通う会社や学校へ業務に支障を来すほど抗議の電話やメールが届く──。その場合、会社や学校が問題を起こした社員や学生に「あなたのせいで私達の仕事が滞った」と法的措置を取ることはできるのだろうか。
スシローの例で言えば、クレームの電話を受けた学校側が少年を訴えることは可能かどうかということだ。
こちらの疑問をぶつけたところ、「迷惑行為をしてしまった方は、直接的に損害を生じさせた回転寿司店等の会社には責任を負うでしょう。ただ、会社や学校等の周囲の方に電話がかかってくることは、加害者側の責任にはなりづらいように思います。迷惑行為そのものとは違い、動画から本人が特定された結果、事件と関わりのない会社や学校等周囲の関係者まで特定され、迷惑電話がかかってくる程大きな問題になること自体、通常予測・想定されるものではないように考えられます」(前出・髙橋弁護士)という回答だった。
一連の「飲食店テロ」は決して許されることではない。だからといって、歪んだ正義感を振りかざせば、今度は自分が加害者になる危険があることを肝に銘じておきたい。
(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人)