次のスズキ「スイフト」か? 元スイフト乗りがコンセプトカーを徹底調査!

スズキが「ジャパンモビリティショー2023」で公開した「スイフトコンセプト」は「スイフト」の次期モデルなのか。それとも、ショー向けに作った観測気球なのか。元スイフト乗りがスズキの担当者を直撃し、スイフトコンセプトの正体を探ってみた。

○現行スイフトを受け継ぐスタイリングが特徴

大前提として、現行型スイフトは登場から約7年が経過しており、そろそろフルモデルチェンジしてもおかしくない。

スズキが公開した「スイフトコンセプト」は、スイフトの新しいスタイルを提案するコンセプトカーだ。歴代すべてのスイフトに乗ってきて、つい先日まで実際に所有していた筆者にとっては、注目せずにはいられない1台だった。

この見た目、オーナーではなくとも、ひと目でスイフトだとわかるデザインだ。曲線と多面体を採用し、全体的に丸みのあるデザインは、これまでのスイフトを貫いてきた個性を連想させる。キビキビと走りそうなフロントフェイス、コンパクトカーらしからぬリアの重厚感、ドアノブ上部に入った直線ラインなども、スイフト乗りには親しみやすいポイント。走りへのこだわりとどんなシーンにもなじむ親しみやすさが同居した、よくできたデザインだ。

衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポートII」など、安全装備もしっかりと装着。使い勝手も向上しているようだ。リアに「HYBRID」のエンブレムを見つけたが、スペックの詳細は非公表とのことだった。

○スイフトのこれまでを振り返る

初代スイフトが登場したのは2000年のこと。現行型よりも座面が高く、乗り降りがしやすいクルマだった。当時の「ワゴンR+」のプラットフォームを使っていたこともあり、安定性と実用性にも優れていた。

2004年にはフルモデルチェンジして2代目スイフトが登場する。このモデルからは「世界戦略車」(特にインド向け)という位置づけとなり、初代スイフトとは大幅に異なるデザインとなった。車高も低くなり、よりスポーティーな走りを実現していた。

3代目スイフトは2010年に登場。丸みのあるデザインは踏襲しつつ、よりスポーティーでスタイリッシュな外観に進化を遂げた。筆者の周りには、「3代目のデザインがいい」という理由でいまだに乗り続けているオーナーが多い。

現行型となる4代目は2016年に登場した。こちらも外観はキープコンセプトでスイフトらしさを残しつつ、プラットフォームは刷新して軽量化を実現、高い剛性も獲得した。ボディはワイド化して少し大きくなったが、それでも車両重量1トンを切る軽さを実現したことが、当時は大きな話題となった。卓越した走行性能とライバル車に比べ圧倒的に優れるコストパフォーマンスに魅了され、筆者もすぐに飛びついたというわけだ。

1.2Lマイルドハイブリッドは確定か?
ここで本題に戻り、核心に迫りたい。スイフトコンセプトは次世代(5代目)モデルなのか。スズキの広報担当者を直撃してみると、「残念ながら、『スイフトコンセプト』は次世代モデルではありません」とあっさり断言されてしまった。

それならば! と現時点でわかっていることを詳しく聞いてみたところ、「次世代スイフトについては何ひとつ公表していませんが、スイフト コンセプトは歴代のスイフトが継承してきたデザイン、走りに加え、日常生活でも楽しめる要素を取り入れました。新たに開発した高効率エンジンを搭載しています。スイフトのファンの方たちからいただいた意見の中には『ここは変えないでほしい』という声もあれば、『ここは刷新してほしい』という声もあります。そうしたさまざまな意見や時代の流れなどを考慮して作ったのがスイフトコンセプトです。次世代モデルと断言できないのは、エンジン、内装、外観を含め、まだ確定していない部分が多くあるためです」とのことだった。

残念ながら、これ以上の情報を引き出すことはできなかった。だが上述したように、リアに「HYBRID」のエンブレムが付いていたところから推察すると、マイルドハイブリッドを採用した1.2Lのデュアルジェットエンジンを搭載していることは、ほぼ確定と考えていいだろう。また、運転席に座った感触として、体感的な予想ではあるが、クルマの基本性能を高める軽量化と高剛性を両立させたプラットフォーム「HEARTECT」(ハーテクト)の採用も継続すると思われる。

加えて、展示車両はエンジンこそかかっていなかったが、メーターの動きやエアコンの動作などが会場内のどのコンセプトカーよりも市販車に近い作りになっていた。スズキ社長の鈴木俊宏氏いわく「次世代スイフトはもう少しでお届けできると思います」とのこと。そうなると、早くて2023年中か2024年前半(大方の予想は2024年中)には何らかの発表があると期待できる。

○次世代スイフトの登場はいつ?

スイフトの最近の動きといえば、最上位グレード「スイフトスポーツ」でMT(マニュアルトランスミッション)車が廃止(スポーツグレード以外ではMT車をラインナップ)されてしまったのが記憶に新しい(原稿執筆時の話。11月13日にスズキは、スイフトスポーツ6MTの発売を発表した)。スイフトスポーツともなるとMT車の販売率が高くなるというが、それでもスズキの正規ディーラーの店長は「現行型スイフトスポーツでもAT車のほうがよく売れていますよ」と話す。やはりAT車の需要は「スポーツ」でも高いということだ。

スイフトスポーツが登場するのは、スイフト(スポーツ以外のグレード)の発表からおよそ1年後というのがこれまでの流れ。次世代スイフトスポーツが登場するのはさらに先になるはずだし、具体的な情報はまだ何もないが、MT車が完全に廃止されてしまうのかについても要注目だ。

上述の店長からは「新世代スイフトはもう間もなくご案内できると思います。もしかしたら半年後かもう少し先(2024年春以降?)になるかもしれませんが」という不確かだが嬉しい情報も得られた。

スイフトがもう間もなくフルモデルチェンジするのは間違いなさそう。正式な発表が行われるその時まで、楽しみに待ちたいと思う。

室井大和 むろいやまと 1982年栃木県生まれ。陸上自衛隊退官後に出版社の記者、編集者を務める。クルマ好きが高じて指定自動車教習所指導員として約10年間、クルマとバイクの実技指導を経験。その後、ライターとして独立。自動車メーカーのテキスト監修、バイクメーカーのSNS運用などを手掛ける。 この著者の記事一覧はこちら