自慢になるのかよくわからないニッチな話かもしれないが、うちには素敵な家庭用卓球台がある。
普段、暮らしている東京の家とは別に、山梨県・山中湖村に“山の家”を持ち、いわゆるデュアルライフ(二拠点生活)を実践している我が家。卓球台があるのは、その“山の家”の方だ。
○■我が“山の家”の小改装に伴い、リビングルームに導入したミニ卓球台
2017年から山の家と東京の家を行ったり来たりしながら生活している。デュアルライフスタート6年目を迎えた今年の年頭、リビングルームの改装をおこなった。
避暑地=寒冷地である山中湖村での、激サムな真冬生活を改善するため、二重サッシにしたり新しい暖房設備を導入したりしたのだが、そのアップデートを担当してくれたのが、妻の古くからの友人だった。
彼女は銀座でアートギャラリーも経営しているハイセンスな建築士で、オリジナルデザインの家具を制作・販売している。
リフォームによって雰囲気が一新した我が“山の家”のリビングルームに、彼女がデザインした画期的な食卓を導入することにした。
それが『卓球ダイニングテーブル』だったのである。
試合で使われる卓球台の公式規格サイズ(縦274cm×幅152.5cm×高さ76cm)と比べると、縦200cm×横120cm×高さ74cmと一回り小さなサイズだが、本物と同じ仕様で作っているということで、使用感や耐久性は折り紙付き。
我が家では制作者の意図に沿って、普段はダイニングテーブルとして使いつつ、興に乗るとたまに卓球をして遊ぶのだが、そのどちらにもちょうどいいサイズ感だ。
中央部分には本物の卓球台のネットがわりに革の仕切りが付いていて、食卓として使っている間、邪魔だと思えば取り外せる仕様。
でも我が家は敢えて、常に仕切りはつけっぱなしにしている。
その状態でご飯を食べていると、「ああ、これは卓球台なんだ」「卓球台でご飯なんか食べちゃって」という意識が働き、ほんのり愉快な気分になるからだ。
デュアルライフの醍醐味は、セカセカした仕事モードとの気持ちの切り替えが難しい都会の家とは違い、“山の家”では常に心に余裕を持ち、ゆったりとした気分で過ごせること。こういう遊び心のあるアイテムが家にあると、そんな気分をつくるのに役立つのだ。
子供の頃、学校や児童館、温泉宿なんかにあった卓球台で、楽しく遊んだ経験のある人は、「家の食卓が卓球台だったらなあ」と一度は夢想したことがあるのではないだろうか。
この『卓球ダイニングテーブル』は、そんなガキンチョっぽい発想をそのまま現実化し、しかもおしゃれなインテリアに昇華している逸品なのである。
「メシ食ったら、卓球しようぜ!」という、高校生のような蒼き心を持ち続けている、すべての大人におすすめしたい。
ちなみに受注生産品なので、色やサイズはお好み通りに調整可能なのだそうだ。
我が家の『卓球ダイニングテーブル』は、部屋の大きさに合わせて少し小さめにリサイズ。天板は、本物の卓球台では球が見えにくいのでありえない、明るいクリーム色で仕上げてもらっている。
○■生まれる前から実家にあったやや特殊なミニミニ卓球台
そしてもう一つ、紹介すべき家庭用卓球台がある。
それは、僕が物心ついた頃からずっと実家にあった、ミニミニサイズの卓球台『バスケットピンポン』だ。
小学校時代の同級生から今でも、「昔、お前んちにあった小っちゃな卓球台。あれ、楽しかったよな」と言われることがある。
この『バスケットピンポン』は僕が生まれる前、つまり昭和40年代前半から家にあった。
天板は縦120cm×60cmだから、公式規格の本物卓球台と比べると1/4以下の面積しかない(脚部は二段階で調整できて、70cmと47cm)。
僕の両親はこのミニ卓球台で遊ぶのが好きで、居間でよく夫婦対戦をしていた。
幼き頃の兄や僕は得点係をしたり、勝者に手作りのチャンピオンベルトを贈呈したりしていた。
やがて自分たちでも遊べる年齢になると、家に来た友達と卓球大会を開催していたのだ。昔々の良き思い出だ。
子供の頃の実家にあった『バスケットピンポン』はさすがに古くなって捨てたのだが、何年か前に年老いた父が、「あの卓球台って、まだ売ってるのかな?」と呟いたので、ネットで調べて購入した。
そしてしばらくは実家に置いていたものの、父母は足腰が弱くなって全然やらなくなったので僕が引き取り、今はやはり“山の家”に置いている。
つまり驚くべきことに、我が家には卓球台が2台もあるのだ。
○■家に卓球台があると、どんな良いことがあるか
バスケットピンポンは、1965年(昭和40年)に和歌山県の会社が開発した遊具。
普通の家庭でも楽しめる小ささながら、やってみるとちゃんとスポーツ感が味わえるのがミソで、ボールに回転をかけたり、ここぞという時にスマッシュを決めたりもできる。
これより小さいとスポーツ感覚は味わえないだろうから、まさに絶妙なサイズなのだ。
そしてその名の通り、それぞれのコートにバスケットゴール状の小さな穴が施されている。
公式ルールに則れば、相手コートの穴にダイレクトでボールを入れると一挙に2点を得られる。
でも、穴はコートのギリギリ端っこにあるので、無闇に狙うとアウトになる可能性が高く難しい。このゲーム性が実に楽しいのだ。
バスケットピンポンは、天板と脚部がセパレート式で、各々を折りたたむことができる。
つまり、使わない時はコンパクトにしまっておけるので、一般家庭でも邪魔にはならない。
開発から58年も経過する遊具で、我が家では三代に渡って愛用するバスケットピンポン。
小学生時代の友人も珍しがっていたから、昔から知る人ぞ知る代物だったのだろうけど、とにかく一度でもやってみれば誰もがハマるはずだ。
それにしても、僕は別に卓球がめちゃくちゃ好きというわけではないのに、なぜ家に2台も卓球台(ミニサイズですが)があるんだろうか? と少し不思議に思ったりもする。
むしろ、卓球部出身のようなガチ勢ではなく、卓球とは家族や友人と得点を競いながら楽しく遊ぶゲームにすぎないと思っているので、こうなったのかもしれない。
いずれにしても、運動不足に陥りがちな生活を送っている人は、試してみたらどうだろうか。
『卓球ダイニングテーブル』も『バスケットピンポン』も、夢中になってやっていると結構汗をかくほどの運動になるので、メタボ対策にもいいんじゃないのかな。知らんけど。
文・写真/佐藤誠二朗
佐藤誠二朗 さとうせいじろう 編集者/ライター、コラムニスト。1969年東京生まれ。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わり、2000~2009年は「smart」編集長。カルチャー、ファッションを中心にしながら、アウトドア、デュアルライフ、時事、エンタメ、旅行、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動中。著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』(集英社 2018)、『日本懐かしスニーカー大全』(辰巳出版 2020)、『オフィシャル・サブカルオヤジ・ハンドブック』(集英社 2021)。ほか編著書多数。新刊『山の家のスローバラード 東京山中湖 行ったり来たりのデュアルライフ』発売。
『山の家のスローバラード 東京山中湖 行ったり来たりのデュアルライフ』はこちら
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