「なんで私だけじゃないの~!」深夜3時の歌舞伎町に響き渡るホス狂の咆哮。カオス化する街…「ぶっちゃけ担当のため」と話す立ちんぼ女子に、半裸で寝る男たちも(ルポ歌舞伎町24時)

若い女性のホストトラブルが社会問題となるなか、前編では実際に歌舞伎町に訪れて、深夜の歌舞伎町の現状と、客に売掛をさせるホストの言い分を紹介した。後編ではさらに夜が更けてカオス化する歌舞伎町の様子と、ホストに“沼る”女性たちの本音をお届けする。
11月某日、時刻は深夜の3時すぎ。夜が更けるにつれて、道端でホストらしき男性に介抱されて嘔吐している女性や、「なんで私だけじゃないの~!」と大声で泣き崩れている女性が見られるようになった。路地裏には立ちションする男性や仰向けになりながらスマホをいじる女性、そして、その横を体長20センチはあろうかというドブネズミが通り過ぎるといったカオス化した光景が広がっている。
地べたに座りこみ泣き叫ぶ若い女性
某マンガ喫茶の前で3、4人の若い女性がそれぞれ座ってスマホをいじっている。取材班は缶チューハイを片手にやさぐれた雰囲気を出している女性に声をかけてみた。「この時間帯に歌舞伎をウロついてる女の子は、みんな”ホス狂”ですよ(笑)。今夜は担当(のホスト)にアフターをすっぽかされて、仕方ないからマンガ喫茶で寝ようかなーって考えてたところです。ここの漫画喫茶には、私みたいにアフターをすっぽかされた子が集まるんです。どうせ担当とお泊りできないなら、宿泊代はケチったほうがいいし」実際、この時間の歌舞伎町を歩いていると、コンビニ前でスマホを見ながら所在なげにしていたり、ひとりでレディースサウナやマンガ喫茶に入っていく女性が目に入る。一方、グループで歩いている女性たちはストロング系のチューハイをストローで飲みながら、「最近担当が冷たいんだよね~」「あいつらただの銭ゲバだよね」などと愚痴をこぼしていた。おそらく彼女たちも、担当ホストにアフターの約束をすっぽかされたのだろう。
ホテル街を歩く男女
前編では、ホストクラブの乱立で今や客のほうがホストよりも立場が上になっているという現状を紹介した。にもかかわらず、なぜ堂々とアフターをすっぽかすホストがいるのだろうか。ホストに15年以上通う30代の女性が解説する。「売れてるホストは『アイドル営業』がまかり通るんです。アイドル営業とは女の子と近い距離で接する昔のやり方と違って、お金を使ってくれる“太客”だけを姫扱いする営業スタイル。女性客はたくさんお金を使えば、普通に通ってたら認知もしてくれないような売れっ子ホストからアフターといったご褒美をもらえるので、自分自身がレベルアップするような感覚になる。そして、気づいたら担当ホストに依存してしまうんです」
ホストにハマっても、従来のようにもともと稼ぎのある実業家や夜職の女性ならそこまで大きな問題にはならなかった。しかし、アフターコロナ以降、若い女性のホストトラブルが急増しているのはなぜか。「コロナ禍でホストクラブに営業自粛要請が出された期間、暇を持て余したホストたちがTinderや婚活系マッチングアプリでお客さんを集めだしたようなんです。アプリで意気投合した女性に対し、『実は俺、ホストなんだよね……』と打ち明け、同時に夢を語ることで、女性にホストを応援したい気持ちにさせ、お店に通ってもらうんです」
所在なげにすごす若い男女
アプリで知り合った女性たちは一般職についているケースも多い。ホストからすれば高額料金を支払わせるためにパパ活や風俗へと堕ちてほしい。しかし、直接に促せば売春の斡旋となってしまう。「そこで、『俺のエース(一番お金を使ってくれる客)は風邪をひいても、俺のために風俗へ鬼出勤してがんばってくれるんだよね』と日ごろから口にして、女の子に『その子よりも大切にされたい』と嫉妬させるんです。実際に私の知人にもその手口で借金800万円を背負ってしまい、保険営業のかたわら、大久保公園で立ちんぼを始めた子がいました」大久保公園といえば、今年9月に立ちんぼをしていた21歳から46歳の女性35人が逮捕された“立ちんぼスポット”。この問題を受けて11月1日から、大久保公園は夜9時から朝8時30分まで封鎖されることに。
戯れる若い男女
しかし、この程度では立ちんぼはいなくならないようだ。深夜3時半すぎ、実際に大久保公園へ行ってみると、バリケードの前に数人の女性が立っていた。そのうちのひとりに話しかけると、女性はしぶしぶ口を開いた。「ぶっちゃけ、担当のためですよね。今日はアフターがないっぽいんで、始発までお金でも稼ごうかなって。深夜になると警察もパトロールしてこないし、勝手に写真とってSNSにあげるヤツもいないんで安心して立てます。風俗と違って時間も決まってないし、ダルくなったらやめればいいだけなんで楽なんですよ」
時刻は朝5時すぎ。アフター終わりのホストとおぼしき男性らが道端で立ちションや嘔吐しており、なかにはパンツを脱いで半裸で寝ている者もいた。しかし、ホス狂は元気だ。まだ飲み足りないのか「もちろんカラオケ行くっしょ!」と元気に歩く女性も。これから朝から営業する二部のホスト、通称朝ホストに行くのだろう。歌舞伎町ホストの現状をこの街で働く人々はどう見るのか。20年ほど歌舞伎町でキャッチをする40代の男性はこう言う。
女性に介抱され嘔吐する男性
「20年くらい歌舞伎でキャッチしてますけど、昔はビシッとスーツを着た礼儀正しくてプロ意識が高いホストが多かった。今はテレビやSNSの影響で遊び感覚でホストになるから、調子に乗ったホストが増えたよね。そういうやつに注意すると『あ? 殺すぞ』『死ね』とか平気で言ってくるんで、マジで頭にくるよ」タクシー運転手をする50代男性も同意見だ。「そりゃホストなんて大嫌いだけど、アイツらは金払いだけはいいから、仕方なく乗せてるんですよ。でも『今の信号行けただろ!』とシートを思いっきり蹴ったり、『その料金高いんじゃない?』と突っかかってくるヤツもいる。以前、後部シートにゲロ吐かれて、クリーニング代を請求したらトラブルに発展したこともあります」
ズボンが下がった状態で立ったまま寝る男性
ホストクラブが入居する雑居ビルの管理人をしているという60代男性はこう話す。「昔はゲロやしょんべんに加えてウンコが落ちてることもあったから、その点では今のほうがマシ。でも昔のホストは『おはようございますー』『お疲れさまですー』と声をかけてくれたし、根はいい子なんだろうなって。今のホストはあっちから挨拶してくれることはほとんどないし、階段でタバコを吸っているのを注意したら舌打ちされる。ちょっとさびしいよね」
男性におんぶをされる女性
時代とともに移り変わっていくホスト業界。岸田文雄首相は11月20日の衆議院本会議で、悪質なホストクラブに対する対策や、相談対応の強化などに取り組む方針を示し、立憲民主党が対策を盛り込んだ法案を今国会に提出する見通しとなっている。悪質ホストクラブの浄化こそ、これから求められることなのだろう。
取材・文・撮影/集英社オンライン編集部ニュース班