急増する「お墓の墓場」浸透しつつある“サブスク墓場”や“メタバース霊園”!?墓石をもたない新たな供養の形とは

人口減少や核家族化が進む今、急速に進んでいるのがお墓を撤去する「墓じまい」です。寺には行き場のない墓石が無数に運び込まれ、「お墓の墓場」として住職たちを悩ませています。そんな中で今、注目されつつあるのが“墓石のサブスク”やメタバースを利用した、仮想空間上での葬儀です。
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愛知県名古屋市から車で1時間。愛知県豊田市の山あいにある「妙楽寺」の本堂のすぐ脇には、山の斜面を隙間なく埋め尽くす“墓石”がありました。ここに並ぶのは、訳あって引き取られた墓石の数々です。端から端までの距離は約250m、高低差は20m以上に広がり、その数なんと2万基以上。
旧日本軍の階級が刻まれた墓や、“元禄十四年”と刻まれた300年以上前の江戸時代の墓まで、様々な墓石が積まれています。墓石を持ち込んでいた業者に、この状況を尋ねました。
(石材業者)「(Q.何をやっている?)お客さまが、墓じまいされた墓を無縁供養させてもらっている」
「墓じまい」は、維持できなくなった墓を閉じることです。豊田市の石材業者は20年以上前から、墓じまいなどで役目を終えた墓石をここへ運んでいると言います。
(石材業者)「最近はすごいですね。(依頼が)急に増えてきた感じはあります。お墓の“墓場”。自分で建てたお墓を撤去して持ってくるのは、石屋としてはちょっと複雑な気持ちはありますね」
地元の人たちが「お墓の墓場」と呼ぶこの場所を管理しているのは、妙楽寺の鈴木政彦住職です。
(妙楽寺・鈴木政彦住職)「こんなにたくさんになるとは思っていなかった、当初(40年前)は。お墓を管理できない、お参りできないという方たちが、お寺で預かって供養していただけないかという相談が増えていますね」
核家族化や後継ぎがおらず墓の世話ができないなどの理由で、年に300基ほどのペースで墓じまいされた墓石が増え続けています。さらに、墓石の上には、多くの観音像も並んでいました。
(妙楽寺・鈴木政彦住職)「寺じまいしたもの。寺を管理できなくなったので、片付けるのに預かってほしいと」
今、「墓じまい」と「寺じまい」が急速に進んでいます。厚生労働省の調査によると、昨年度の墓じまいの数は全国で約15万件。10年間でほぼ倍に増えています。
CBC
三重県津市にある「浄誓寺」。住職が案内してくれたのは、境内の一角で野ざらしにされた墓石の山でした。
(浄誓寺・稲森栄政住職)「こちらに積んであるのが放置されたお墓です。どうしようもないんですよ。(Q誰のもの?)わからないです。(Q.いつからある?)わからないです」
何年も連絡が取れず、放置された墓を撤去していますが、近年増え続けているといいます。
(浄誓寺・稲森栄政住職)「めちゃくちゃですよ。数百万かかりますから、全部撤去するのに。1カット5000円ぐらいと言われましたわ、砕石するのに」
本来、お墓は信仰の象徴であり、使用料やお布施は寺の収入を支える存在です。しかし、現在では、身元不明の墓石の撤去や手続きに多額の費用がかかり、寺の大きな負担になっています。
(浄誓寺・稲森栄政住職)「供養の形は人それぞれでいい。今後の方々は(墓で)無理する必要はないと思います」
CBC
放置された無縁墓に頭を悩ませている浄誓寺の住職は2年前から、あるサービスを始めました。
(浄誓寺・稲森栄政住職)「われわれが考え出した“サブスク型”のお墓になります。従来の(墓の)感覚には沿わない形となっているんですけども定額制に。携帯電話と一緒ですね」
高さ20㎝ほどの小さなお墓の値段は38万円。骨壺と一体型で月額3300円と、通常の4分の1ほどの値段で、供養や掃除・管理まで寺が行ってくれます。小さな墓は寺の建物内の一畳半ほどの空間に並べられていました。2年前、病気で妻を亡くした男性は、サブスクのお墓の利用者。毎月ここへ手を合わせに訪れています。
(利用者)「ちゃんと墓を建てると、(管理が)ずっと続きますやんか。僕はもうこのパターンでやっていこうかな、自分のことも」
「一般的な墓では面倒を見きれない」とこの形を選んだ男性は、三回忌が終わった今、サブスクも解約しようと考えています。
(浄誓寺・稲森栄政住職)「基本料金の中に永代供養料も含まれているので、そのままここ(合同墓)に移させていただきます」
遺骨を寺が管理する共同墓へ移すのも、墓じまいです。
(利用者)「ここに永代供養するなら、(元の墓石は)破棄するということですもんね。(家族)全員がいったん決着がつきますやんか」
CBC
時代の流れとともに変化する墓のあり方。そんな中、最新技術を駆使した新たな「弔い」の形も生まれようとしています。
(アルファクラブ武蔵野・小川誠取締役)「これがメタバース霊園。お墓参りに代用するサービスと考えています」
冠婚葬祭を手がける会社が開発しているのは、ネット上の仮想空間 “メタバース”で家族や友人がアバターとなり、葬儀のような形で故人を弔うサービス。日常生活でスマートフォンを見ている時間が圧倒的に長い現代人が、スマホ画面上で故人をしのぶことができれば、利便性が高くなるのではないかと考えました。
遺骨の供養は現実世界で行う必要がありますが、参列者は宗教関係なくデジタル化された空間で、故人をしのぶことができます。
(アルファクラブ武蔵野・小川誠取締役)「もっと新たなしのび方ができるのではないかということで、会話型AIを搭載することで100年、200年たっても先祖と生の会話が可能になるものを(将来的な)目玉に考えている」
故郷を離れる人が増え、地方の少子高齢化が進む中、サブスクや仮想空間、AIに移りつつある弔いの形。昔ながらの先祖代々の弔いは、もはや成り立たなくなっているのかもしれません。
CBCテレビ「チャント!」11月20日放送より