「ROLANDのやり方では厳しいと思います」「城咲仁は色恋営業は悪というけれど…」20年ぶりに現役復帰の“目ヂカラ王”頼朝が悪質ホスト問題とその対策にモノ申す!

支払い能力を超えた売掛(ツケ)を若い女性に負わせる悪質ホストの存在が社会問題になっている昨今、かつてのレジェンドは今の業界になにを思うのか。2000年代初頭のホストブームを牽引した頼朝氏に話を聞いた。
今年10月、ホストのお膝元、歌舞伎町がある新宿区の区議会では「売掛金禁止条例」の検討申し入れが行われた。さらに、11月30日には立憲民主党の塩村文夏参院議員が“悪質ホスト問題”において、相談体制及び整備等を国や自治体に求める議員立法「悪質ホストクラブ被害対策推進法案」を国会に提出。この“ホスト新法”をめぐって歌舞伎町を中心としたホスト業界もにわかに騒がしくなってきた。そんななか、新宿・歌舞伎町の有名店「TOPDANDY」で当時ナンバーワンホストだった頼朝が20年ぶりの現役復帰に向けて準備をしているという。彼に「現代のホスト問題」について聞いた。
インタビューに応じる頼朝氏(撮影/集英社オンライン)
――率直に、頼朝さんはホスト業界の今をどう見ているのでしょうか?頼朝(以下、同) 僕が生み出したシャンパンコール(誕生秘話については前回インタビューで語られた)などによってホストクラブがエンタメ化し、お客様層が拡大。結果として良質なホストクラブだけでなく、裾野が広がって低いレベルでの売掛や女性トラブルも増えてしまったと推測します。そこには責任を感じています。――今のホストクラブの問題はホストの色恋や無理な売掛について城咲仁さんも(11月20日放送の『めざまし8』)で「(色恋営業は)善悪で言ったら悪」と言ってました。悪だとは思いません。ホストクラブではファクトとして、色恋も楽しみのひとつで、ホスト側とお客様のディスタンスとセンスが問われるところ。昔からホストのイロや枕はあったし、自分のナンバーを守るために売掛するのも普通でした。ホストと女性客の口喧嘩を超えたトラブルなども関係性が捻じれると起きていました。
――その点は昔から変わっていない、と。20年前と今の違いがあるとすれば、店舗の数。僕らの時代は歌舞伎町にホストクラブはせいぜい50~100店鋪だった。それが今では300軒以上とも言われている。それだけ分母が増えてるのだから、当時からいたであろう余裕のないホストも比例して増えているというだけです。ただ、ホスト自身が酒や雰囲気に酔う女の子に歯止めをかける抑制力も以前よりも失われたかもしれない。ホストクラブの空間は時間も金銭感覚も麻痺させる。だから酒や雰囲気に酔って歯止めがきかなくなる女の子が一定数いるんだけど、そこにストップをかけられないホストが増えたというか。要はホスト、お客様どちら側がマウンティグしているかは、実はその人たちそれぞれで違うかとは思います。
いまやホストクラブが300軒以上ひしめくと言われる歌舞伎町(撮影/集英社オンライン)
――城咲さんは11月26日放送の『ワイドナショー』に出演した際も、現在のホストのように客に「今日いくら使える?」と聞くことは昔はタブーで、売掛を勧めるようなことはしなかったと発言されていました。仁氏とは引退後もいろんな場面で会うし、仲よく飲んだりする関係性です。ただ、彼は歴史がある店出身で、僕は入店時、まだ発展途上の店に入ってので、ホストとしてお互い出自が違う。だから僕は自らお客様に使わせるお金を采配し、予算を聞くケースもありました。ホストは是が非でも自分のナンバーを守りたいと思っているし、お店の売り上げ自体にこだわる訳ですから。――頼朝さんはそれで売掛を飛ばれたことはありましたか?ありましたよ、100万単位で。でも掛けを飛ばれたりするのは、当然ながら女の子が飛んでしまうような非がホストにあった、というだけですし、博打みたいな部分もあったってことです。
ホスト常連客から編集部に提供されたホストクラブの高額会計伝票
――タレントで実業家のROLANDさんは、自身が運営するホストクラブで売掛を一切禁止したことが話題になりました。今現在、売り掛け分のお支払いを自腹切って待ってるホストさんからしたら厳しいのではないのかと思います。その現状に応じたフレキシブルな対処がないと、今の風潮的な後押しも影響し、個々の未入金も飛ばれてしまいやすいでしょう。それに、いざ会計時にお客様が「お金がない」と言い出したり、「カードが切れない」というケースも増えるのではないでしょうか。ホストクラブに来るお客さんが全員、財布に現金を入れて飲みに来るとは限らないし、飲食される前にチェックもしづらいですよ。入店前に財布の中身をチェックでもするのか。それこそ、失礼ですよね。「売掛一切禁止」は健全に聞こえはするものの、少し無理があるとは感じますが、理想が実現してお店が成り立つなら、ひとつの業界的な革新にはなるでしょう。
――今後、施行される可能性がある「ホスト新法」による規制について、思うことはありますか?売掛の金額に規制をかけたとしても、何が基準とされるのか。売掛を一切禁止にしても、手持ちの現金のみで高額会計をすれば、それこそお金の出所に疑問は持たれるでしょう。ただ、ひとつ問題を解消させられる方法があるとすれば、クレジットカードでの決済手数料の引き下げをすればいいと思います。――クレジットカード決済の際、ホストクラブが決済代行業者に支払う手数料率は、通常の加盟店がクレジットカード会社に支払う手数料率よりもかなり高いそうですね。本来はこの手数料率を上乗せしてお客さんに請求するのは「加盟店違反」ですが、カード決済に対して10%と高額な手数料を上乗せすのが普通になってます。女性も男性もはクレジットカードを持ってる人も多いですから、その手数料が下がって、カード決済を主流にすれば、売掛問題は少しは解消されるのではと思います。
現役時代の頼朝(本人提供)
だから、ホストクラブが代理業者に支払う手数料率を下げれば、お客さんへの負担は少し軽減される気はしますけどね。――逆風が吹き荒れるホスト業界ですが、今年、頼朝さんが現役復帰。かつて「TOP DANDY」を運営していたgroupdandyグループの「GMC」という店舗で週1回ほど勤務しているそうですね。復活ってほどではないですが今現在、ホストバブルだからこそ、今のレベルでのホストサービスではいつか弾ける。でも女性の自立も著しく、収入アップした方も多いし、遊び場としての発展もあると考えたんです。かつては色恋で売ったこともある僕ですけど、これからのホストクラブが何を売りに営業していくかと考えたときに、シャンパンコールの生みの親である僕は、シャンパーニュの正しい歴史や知識、注ぎ方、味わい方を知ることのできる場にすべきなんじゃないかと思ったんです。僕はJ.S.A.(日本ソムリエ協会)のソムリエ資格などを取得しているので、ホストでありソムリエでもある“ホスリエ”として、ホストクラブに革命を起こしますよ。
シャンパングラスを持つ頼朝氏。代名詞となった“目ヂカラ”は健在(本人提供)
女性客を救済するための「ホスト新法」設立のために奔走する塩村参議院議員の事務所には、「自ら選んで売掛をしているから規制しないでほしい」「ホスト新法で私の担当ホストを苦しめないでほしい」といった“ホス狂”たちの声が寄せられており、なかには嫌がらせや殺害予告もあるという。頼朝氏の言う「ホストクラブをシャンパンを楽しめる空間に」が実現すれば、ひょっとしたらホスト業界の風向きも変わるかもしれない。
取材・文/河合桃子集英社オンライン編集部ニュース班