フライパンはどの家庭にも1枚はある調理器具です。中でもテフロン加工されたフライパンを使っている家庭も多いでしょう。
テフロン加工のフライパンは、食材がくっつきにくく、油が少なくても調理できるなどのメリットがあって便利ですね。
では、このテフロン加工されたフライパンのお手入れはどのようにすればいいのでしょうか。
そもそもテフロン加工とはなんでしょうか。
テフロンはフッ素樹脂『PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)』の一種です。
1938年にアメリカの化学メーカーである、デュポンのブランケット博士によって発見され、これを商品化した名称が『テフロン』です。
軍用の物品に使われていたのですが、技術が民生用製品にも転用され、広く使われるようになりました。
実は、ほかにもフッ素樹脂はあって、それぞれに商標が取られています。例えば化学製品メーカーのダイキン工業株式会社の場合には『ポリフレン』、AGC株式会社の場合には『フルオン』といった具合です。
ですので、テフロン加工のフライパンというと、厳密にはデュポンの登録商標である『テフロン』をコーティングしたフライパンという意味になります。
しかし、現在ではほかのフッ素樹脂も出ており、フライパンに使われています。
※写真はイメージ
フッ素樹脂は、耐熱性、非粘着性、耐薬品性、絶縁性、耐候性といった優れた特徴を持つ安定した物質で、これがフライパンで使うのにぴったりでした。
『テフロン』の名称があまりにも有名になったため、一般的に『テフロン』というと、フッ素樹脂加工されたといった意味でも通用するようになっています。
鉄や合金の上にフッ素樹脂をコーティングしたものがフッ素樹脂加工のフライパンで、その中でも『テフロン』を用いたものが、テフロン加工のフライパンというわけです。
フッ素樹脂加工されたフライパンのメリットをまとめると、以下のようになります。
【フッ素樹脂加工のフライパンのメリット】
・食材がくっ付きにくい。
・食材が焦げにくい。
・油の量が少なくても調理できる。
・汚れが落ちやすい。
フッ素樹脂の特性が生かされて、食材がフライパンの表面にくっ付きにくくなります。
また、食材が焦げにくくもなるので、使用した後のお手入れも楽に。また、油が少量でも調理できるというのもメリットです。
一方、デメリットは以下のような点が挙げられます。
【フッ素樹脂加工のフライパンのデメリット】
・フッ素樹脂加工に寿命がある。
・調理時や洗っている時などに傷付く可能性がある。(フッ素加工した層が剥がれる可能性がある)
・強火に弱い。
地金の上にフッ素樹脂を塗布して層状に固めたものなので、傷付けると剥がれてしまいます。
また、フッ素樹脂は耐熱性に優れていますが、使っているうちに劣化して剥がれやすくなることも。強火に長時間さらすのはフッ素樹脂加工の寿命を早めることになります。
大変便利なフッ素樹脂加工のフライパンですが、上記のとおり寿命があります。
では、フッ素樹脂加工のフライパンのお手入れはどうすればいいのでしょうか。
1908年創業の老舗料理道具店『釜浅商店』の齋藤あゆみさんにうかがったところ、テフロン加工が施されたフライパンの場合には、「とにかく傷付けないこと」が第一だそう。
フッ素樹脂加工された層が傷付き、剥がれてしまうと、せっかくのメリットが失われてしまうからです。
『釜浅商店』の齋藤あゆみさん
炒め物を作る時や、調理後のお手入れの時に金属製のヘラなどを使うのはNGです。
「スポンジなどを用いて、傷付けずに洗うようにしてください」とのことでした。
また「地金が見えてくるほど使い込み、そのまま使っている人がいらっしゃるかもしれませんが、これはお勧めできません」との指摘も。
フッ素樹脂加工はずっと使えるわけではありません。使っているうちに加工部分が劣化して、寿命がきます。
斎藤さんによれば「食材が焦げ付くようになった、あるいは滑りが悪くなったなど、使い心地が悪くなってきたなと感じたら買い替えるようにしてください」とのこと。
※写真はイメージ
また、長く使いたいなら、以下のような点に注意するのがいいそうです。
【フッ素樹脂加工のフライパンの注意点】
1.空焚きしない調理油や水、食材を入れずにフライパンを直火にかけて熱すると、フライパンの温度が急激に上昇し、フッ素樹脂が傷んだり、フライパンが変形したりする恐れがある。
2.高温調理に注意フッ素樹脂は耐熱性に優れているが限度がある。あまりに強火で使用すると、劣化が早くなる。できれば中火で使うのがお勧め。
3.調理後すぐに急速に冷やさない調理後、まだ熱いうちに水をかけて急激に温度を下げるのはフライパンによくない。フッ素樹脂と金属の熱膨張率が違うため、樹脂の層が剥がれる可能性がある。
多くのメリットがあるフッ素樹脂加工されたフライパン。しかし、その特性をもたらしているフッ素樹脂には寿命があります。
できるだけ長く使いたいのであれば、『釜浅商店』に教えてもらった取り扱いや、お手入れを心掛けましょう。
[文/高橋モータース@dcp・構成/grape編集部]