公選法違反で注目の江東区長選で乱立5人立候補…逆風下の自民が都ファ、公明、国民と相乗り

公選法違反の疑いで関係先の強制捜査を受けた木村弥生前区長(58)の辞職に伴う東京都江東区長選(10日投開票)が3日告示され、5人が立候補した。柿沢未途衆院議員(52)=東京15区=の関与により逆風下の自民党は、小池百合子東京都知事(71)が特別顧問を務める地域政党・都民ファーストの会、公明党、国民民主党との相乗りで挑み、立憲民主党は共産党などとの共闘を決めた。さらに維新は独自候補を推薦するなど、乱立の選挙戦となった。(坂口 愛澄)
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前区長の公選法違反事件により、区民の不信感が高まっている中での選挙戦。自民党などから推薦を受ける元東京都政策担当部長の大久保朋果氏(52)は、政治とカネの問題を巡る懸念を払拭すべく「クリーンな政治を」と声を大にした。
約30年、都庁に勤めた経験から「信頼を取り戻し、江東区を前に進めたい」と訴える隣に立ったのは、大久保氏が「恩師」と尊敬する小池氏。アラブ首長国連邦・ドバイで開かれた国連気候変動会議から帰国後、成田空港から約150人が集まった演説会場に直行し「都をくまなく理解した頼もしい行政のプロ。嫁に出すようで寂しくもある。今日からが本番です」と支援を呼びかけた。
ただ、この日の演説では事件には一切触れず。陣営関係者は「自民色は前面に出しすぎず、小池知事のお力を借りながら知名度アップを目指したい」と語る。“チームカラー”も小池氏を想起させる緑色。極力、自民のにおいを消して戦うつもりだ。
一方、江東区議の肩書をなげうって立候補したのが元看護師の酒井菜摘氏(37)。立憲民主党や共産党などの支持を受け、国政野党の統一候補となった。
豊洲公園前でマイクを握ると「ニュースで騒がれていること、政治が腐敗してしまう懸念があること、私も怒っています」と語気を強め「区の課題が分かっているからこそ、解決していきます」と元区議の強みを主張した。陣営関係者は「(共産党らと)共闘できる候補者を立てたいと考えていた中で、理想的な形となった」と話した。
日本維新の会は、小児科医で4児の父でもある小暮裕之氏(44)を推薦。馬場伸幸代表は区長選を「最大のチャンス」と位置づけており、総力戦で都内初の首長誕生を狙う構えだ。国内外、計6つのクリニックを経営している小暮氏は「腐った江東区を直していかないといけない」とし「身を削る覚悟です」と決意を示した。他に元区議の三戸安弥氏(34)、元国税庁職員の猪野隆氏(58)が立候補した。
◆2023年4月の江東区長選を巡る公選法違反事件 当選した木村弥生区長が、選挙戦中に投票を呼び掛ける有料広告をYouTubeに出していたことが判明。その後、同区を選挙区とする柿沢未途衆院議員が関与していたことが明らかに。柿沢氏は10月31日に法務副大臣を、木村氏は11月15日に区長を辞職。さらに、柿沢氏が区長選前に自民党区議らに現金を配布していたことが分かり、東京地検特捜部は同16日に柿沢氏の地元事務所などを家宅捜索。