〈18歳女性死体遺棄〉「キャバクラ一晩で40万円」カネに汚かったパンチパーマ男「工事代金を踏み倒し、同級生に別会社をつくらせて1000万円持ち逃げ」同僚たちも過去に500万円の被害

今年6月から行方不明だった東京都江戸川区の会社員、野本結梨香さん(当時18歳)の遺体が山梨県の山中で見つかった事件で、警視庁に死体遺棄容疑で逮捕された同区の水道工事業、渥美遼馬容疑者(31)が、工事代金の持ち逃げを繰り返していたことが元同僚の証言でわかった。また、共犯の堀俊哉容疑者(30)は高校の同級生で、渥美容疑者の祖父のもとで水道工事の修行をしていたといい、2人の歪な関係性も浮かび上がってきた。
証言したのは50代のベテラン水道工事業者の男性Aさん。渥美容疑者が2018年に江戸川区で立ち上げた水道工事の会社「K」に、共同経営者として参加していた。「立ち上げ時は渥美が社長で私と私の後輩のSの計3人。後に堀とTという渥美の高校の同級生2人が仕事に加わることもありました。口座は渥美が全部持っていたので、材料費や工事代金などの入金関係は全部あいつが管理していて。私も含めて職人には、そこから仕事に応じた額を支払うことになっていたんですが、そもそも金払いが悪い。挙句のはてに大金を持ち逃げして行方不明になった。結局やつと仕事をやっていたのは1年半ぐらいで、私らが被った不払いの被害額は500万円近くになります」
渥美容疑者(知人提供)
「K」は水道工事のほか、内装工事も請け負うなど仕事の受注自体は順調だったという。呆れ顔のAさんが続ける。「当時は大きい仕事、内装工事も結構取ってたんで、300万とか500万という、まとまった金がすべて渥美のところに入っちゃってて。それで『職人にお金払え』と言っても『先方から貰ってない』とかウソついて全然払わないんですよ。結局、最後は『口座を確認させろ』と詰めたんだけど、逃げまくった末に飛んだ(姿を消した)んです」渥美容疑者は、堀容疑者が受注した1000万円の仕事に取り掛かる前に、振り込まれた半金を持って姿を消し、発注元の会社も巻き込んで大騒動になった。「発注元の会社の人も『どうすんだ、どうすんだ』って乗り込んできて。掘にしても、そのお金がないと職人とか雇えないじゃないですか。だから困りはてて渥美の家に行ったんですよ。職人とか全員総出で。そのときは警察も一緒に出動しました」
かつて渥美容疑者が妹と住んでいたマンション(撮影/集英社オンライン)
だが、すでに部屋の中は金目のものは一切ない、もぬけの殻だった。Aさんは、てっきり渥美容疑者は関係者の目を避けるために地方に逃げていると思っていた。しかし、死体遺棄事件で2人が逮捕され、渥美容疑者が年上女性と結婚し、野本さんが行方不明になる今年6月まで江戸川区内で飲み歩いていたという報道を見て、がく然としたという。
共犯者は「被害者」のはずの堀容疑者。そもそも、この2人はどういう関係だったのか。「この2人とTは同じ都立高校の同級生で、堀は渥美のおじいちゃんがやってた会社で防水工事の勉強をしたみたいだね。弟子といえば弟子でしょう。堀は気が弱いところがあって、渥美の意見は絶対みたいに聞いてるところがあったね。陰では渥美の悪口言ったりすることはあっても、結局便利屋扱いされてた。渥美は自分がトップにいて、下を使ってお金が入ってくるような会社にしたかったんだろう。自分は楽して動かないから」
移送される堀容疑者(撮影/村上庄吾)
しかし、そこそこ大きな仕事を受注していた「K」が傾くほど、渥美容疑者は何にカネを使ったのだろうか。Aさんはこう振り返る。「飲みに使っちゃうんじゃない? 俺もあいつと2、3回飲み行ったことあるんですよ。居酒屋にもスナックにも連れてってもらいました。そもそも、仕事を取ってきて、その仕事を振るまではやるけども、実際にお金が入ってくると、どういうつもりか自分で全部勝手に使ってしまうんです。それがだんだん1年ぐらいでわかってきて、もう一緒にやっていくのは無理だなって思いました」とはいえ、渥美容疑者が通い倒していた居酒屋などでは、そんなに高額な代金を請求されるとは思えないのだが。「一緒に飲み行くと、あいつは全員分のお金を支払うよ。例えば友だち5人連れて行くとしたら、やつは全員の分を払うでしょ、間違いないね。やつはふだんの口調は丁寧なんだけど、酒飲むともうオラオラ。キャバクラとか行ってもオラオラみたいな感じで、1回、どこだったか忘れたけど40万円ぐらい払ってたことがあった。見栄を張りたいんだろうね」
ムキムキの筋肉だった渥美容疑者(知人提供)
ただし、見栄っ張りだった渥美容疑者も、防水工事の腕は確かだったという。早くに亡くした父の形見だというコテを使い、その仕上げは美しかった。「飲んでるときに親父の話になると涙を流してたよ。お父さんも防水屋でコーキングのシールを打ったりしてたみたいで、やつがシールを打つのに使う手製のコテみたいなやつはお父さんの形見のはずだよ。やつのシール打ちは、すげえきれいでしたよ。技術もお父さん仕込みかわからないですけど、腕はよかった」
渥美容疑者は切羽詰まってAさんらの前から「飛ぶ」直前、同級生のTを社長に仕立てて別会社を設立し、大金を引っ張ろうとしていたという。「渥美が言い出して、都内に新会社を作るってことでみんなの名刺まで作ったんですよ。それで1000万円の融資を受けるって目的で、社長にTを立てた。渥美自身は借金まみれで自分じゃカネを借りられなかったからTを社長にしたんですよ。だから俺はTに言ったんです、『お前、絶対に1000万とか借りたら、渥美に逃げられる。やめたほうがいいよ』って」案の定、渥美容疑者は姿を消した。それから3年後、しばらく音沙汰のなかった堀容疑者からこんな連絡があったという。「堀が逮捕される1週間ぐらい前に、SにLINEを送ってるんですよ。『なにか仕事あったらお願いします』って。Sが『なにできるの?』って聞いたら『タイルもできるし、何でもできます』って言ってきたので『じゃ、なんか入ったら連絡するね』と返信したらしいんだけど。いずれにしても堀は相当カネに困っていた様子で、渥美の手伝いで遺体を運んだのも金が理由だったのかもしれません」
小松川警察署(撮影/集英社オンライン)
仕事では腕の確かさを見せていた渥美容疑者だが、少しでもクレームがつくとすぐに逃げ出すような、弱虫な本性も垣間見せていたという。「あいつはね、嫌な現場になると逃げるんです。現場が仕上がって終わった後に、『金を払いたくない』とゴネたりとか。その手の揉めごとの火消しは全部俺がやってました。あいつ、面と向かってはっきり言えないんで。そのくせ、自分より弱い人間にはとことん強い。基本的に性格が弱いから捕まるまでの何か月間は、すごいビビッてたと思います」Aさんはいま、渥美容疑者の横領などについて、警視庁に被害届を出すことも検討しているという。「お金は多分戻ってこないでしょう。遺棄された彼女のために少しでも刑が重くなるようにしないと…。彼女が浮かばれないですもんね」渥美容疑者と交際していた野本さんは行方不明になる前、「彼氏の連絡がしつこい」「別れたい」などと友人に相談していたという。警視庁は、野本さんと渥美容疑者の間で交際を巡りトラブルがあった可能性があるとみて捜査を進めている。
遺体で発見された野本さん(本人SNSより)
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班