「追い詰められた島崎くんが、ペイっ!アダモステ~って」ひょうきん族名物Dが明かすアダモちゃん誕生と素顔「葬儀の通夜の時には棺の中にアダモちゃんの化粧をして入っていたいぐらいです」〈追悼・島崎俊郎さん〉

12月6日、タレントの島崎俊郎さんが急性心不全のため都内の自宅で亡くなった。島崎さんといえば、1980年代のフジテレビの超人気バラエティ番組『オレたちひょうきん族』で生まれたガングロメイクのポリネシアンダンサー“アダモちゃん”が記憶に鮮烈だ。ひょうきん族の名物ディレクター・三宅恵介氏がアダモちゃん誕生秘話とともに、島崎さんの素顔を語る。
1981年10月にスタートしたバラエティ番組『オレたちひょうきん族』。横澤彪プロデューサーの横澤班に属する三宅恵介ディレクターをはじめとした5人の“ひょうきんディレクターズ”は番組にも登場した名物ディレクターたちだった。三宅さんは三宅デタガリ恵介の名で「タケちゃんマン」を、荻野ビビンバ繁さんは「ひょうきんベストテン」を、佐藤ゲーハー義和さんは演芸ライブのコーナーを担当。
「オレたちひょうきん族」DVD
島崎俊郎さんの“アダモちゃん”ことアダモステというキャラクターは、まさに三宅さんが担当する「タケちゃんマン」のコーナーで誕生した。三宅さんが当時を振り返る。「もともと、島崎くんと僕の出会いはビビンバ荻野から“おもしろい若手がいるから”って、ナベプロ(現在のワタナベエンターテインメント)の篠崎さんがマネージャーをしてたトリオ『ヒップアップ』時代に紹介してもらったのがきっかけです。当時ヒップアップはバラエティ番組『笑ってる場合ですよ』で5週勝ち抜いてて勢いがあった。だから『ひょうきん族』でも冒頭5分くらいのライブコーナーをやってもらったんです」島崎さんが『ひょうきん族』に出始めのころは、トリオ、ヒップアップとしていろんなネタをやっており、ヒップアップのトシちゃんという立ち位置だった。そんななか、ひょんなことから「タケちゃんマン」のコーナーでも島崎さんを起用することに。「たしかグループサウンズが解散するドラマの設定で、みんなに色黒で長髪のカツラを被らせてたんです。島崎くんのその姿を見たたけしさんが本番中に“お前は次はポリネシアンダンサーをやれ”って言ったんですよ。僕らは出たとこ勝負だから次の週には島崎くんをガングロにしてポリネシアンダンサーの格好をさせて台本には“とりあえず踊って変なことを言う”くらいにしか書いてなかった。それで“最後になんか一言!”って言われて追い詰められた島崎くんが…“ペイっ! アダモステ~”と叫びながら帰ったんです」その瞬間、スタッフたちは大爆笑。意味はわからないけどおもしろいものを撮り続ける……当時の番組作りにはこうした勢いがあった。
撮影時に偶然生まれた“アダモちゃん”(写真/共同通信)
「1回はみんな出てもらうんですよ。でもそこから2回目、3回目があるかはそこでウケるかどうかだから。島崎くんの“アダモちゃん”はまさに2回目に繋いでいける訳のわからないおもしろさがあった。島崎くんが追い詰められて言った“アダモステ~”は本人のセンスによるもの。その言葉とキャラクターがここまで長く愛されるなんて当時は思いませんでしたよ。彼は根が真面目だから『次はこんなのどうでしょうね』なんて提案もしてきました」
その後、アダモちゃんは「タケちゃんマン」の物語とは関係のない役割で毎週のように登場するレギュラーキャラとなる。「ドラマの中に登場するいろんな職業に扮してもらって、出しましたねー。毎回必ずどっかに紛れてる感じで。他の出演者から『アダモちゃ~ん』と呼ばれると手を挙げながら『ハ~イ!』と大きな声で返事をするっていうのが定番でしたよね。最後のほうは浪曲師の仇申亭 北(あだもすてい ぺい)となって出ましたから(笑)」当時の台本では、アダモちゃんの登場シーンはほとんどアドリブで島崎さんに任されていたという。「最初からそうだけど、『アダモちゃん登場、何か変なことを言って去る』くらいにしか書いてませんでした。島崎くんも毎回かなり悩んだと思う。プレッシャーに感じていたでしょうね」
DVDにもなった「アダモちゃんおそらく誕生25周年記念DVD 1万台の監視カメラが捉えた衝撃の映像 私はアダモちゃんを見た!!」より
「ウケるものは繋げてくのが我々の仕事だからさ」と三宅さん。島崎さんの訃報は12月7日、仕事終わりに自宅で見たニュースで知ったという。「もう何年も会ってなかったから驚きました。さんまさんと同い年の島崎くん、ただただ残念です。でもニュースにも『アダモちゃんで人気の島崎さん、死去』と見出しになってて、もう40年近く前の番組で生まれたあの強烈なキャラクターが、亡くなってからもこんなふうに書かれるなんてことは、本人にとってもうれしいと思います。私もうれしいです」島崎さんは2021年2月3日のブログで「アダモちゃん生誕36周年」というタイトルでこのように語っていた。〈私が人生の最期を迎えその葬儀の通夜の時には棺の中にアダモちゃんの化粧をして入っていたいぐらいです。(略)そして通夜に集まってくれた人たちにその私のアダモちゃんの化粧を見せて笑いを取りたいぐらいです まあ家族が絶対反対するでしょうから実現は出来ないと思いますけどね〉(2021年2月3日の島崎さんのブログ)島崎さんの訃報を聞いた芸能記者もこう肩を落とす。「6日に自宅で急性心不全で亡くなり、あまりに突然のことで家族が憔悴しきっているため、マネージャーさんも病気の履歴などは聞けなかったようです。ブログなどは今年9月を最後に更新が止まり、11月に入ってからは周囲に体調が悪いことを漏らしていたようですが、ただただ残念ですね」関係者によると、葬儀は近親者のみで執り行われるという。島崎さんのブログに綴った願いは叶うのだろうか。ご冥福をお祈りします。取材・文/河合桃子集英社オンライン編集部ニュース班