京アニ事件後にできた放射器、命を救う機能を秘めていた 「もっと知られるべき」称賛の声

2019年、京都市伏見区の京都アニメーション第一スタジオが放火され、36人の命が奪われた。殺人などの罪に問われた青葉真司被告の裁判員裁判が行われており、改めて事件に注目が集まっている。
そんな京アニ事件を機に開発された「あるもの」が話題を呼んでいて…。
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遡ること1か月前の11月初旬、X(旧:ツイッター)である写真が拡散された。件の写真には、10月31日に埼玉県蕨(わらび)市で起きた郵便局立てこもり事件で、現場に集まった警察官が消火器のようなオレンジ色のものを持つ様子が映っていたのだ。
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この正体をめぐって様々な説が取りざたされたが、消火器ではなく、火災抑制剤放射器「クイックスプラッシャー」であることが判明。「クイックスプラッシャー」は、火災抑制剤を漏洩したガソリン等の燃焼物に対して放射することで、燃焼物の蒸発や着火を抑えて火災を未然に防ぐものだという。
埼玉の事件では、男が拳銃を所持し、ガソリンの入った容器とペットボトルを持ち込んで立てこもった。現場での火災を防ぐため、警察官が「クイックスプラッシャー」を所持していたのだろう。

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火災を防ぐ機能を有した画期的放射器だが、こちらは19年の京アニ事件がきっかけで開発されたものだという。多くの命が失われた事件から4年経った現在、警察官の間で使われていることはネット上でも話題に。
「こんなのができたのか。新幹線や公共交通機関にも常設しておいて欲しい」「ガソリン撒かれた箇所にブチ撒ければ揮発抑えて爆燃防げる」「もっと知れ渡るべき商品」「京アニの教訓が生かされてたのか……知らんかった」など、驚きの声が多数あがっている。
注目を集めた「クイックスプラッシャー」について知るため、同装置を開発した日本ドライケミカル株式会社に取材を敢行することに。その結果、放射器の機能性に驚かされるのであった…。

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日本ドライケミカル株式会社は、日本で初めて粉末消火器を開発し、オフィスや工場はもちろん、発電所や石油関連施設などにも対応した消化器を生み出している。同社の担当者によれば、京アニ事件を受けて、消防機器メーカーとして何かできないかという思いから「クイックスプラッシャー」を開発することになったという。
担当者は、「放火テロに用いられたガソリンなどは燃焼性が高く、一度着火すると消火するのが難しいため、安全な避難を困難にします。そのため、放火テロ事件が起こりうる建物内において、ガソリン等がまかれてしまった場合、火をつけられる前に瞬時に薬剤を放射して火災を未然に防ぐことが重要となります」と話す。
同社では、以前から「大型バスのエンジンルーム消火システム」という薬剤を短時間で放射するシステムを開発していた。この仕組みを応用して、薬剤を瞬時に広範囲に放射し、着火を防ぐ「クイックスプラッシャー」を完成させたのだ。

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見た目は消火器と似ているが、性能は全く異なる。担当者は、「消火器は火がついた後に消火するためのもので、火災の火元に薬剤が届くよう規格により放射時間は10秒以上と定められています。一方で、クイックスプラッシャーは、ガソリン等がまかれた際、火がつく前に瞬時に、広範囲に火災抑制剤を放射することで着火を未然に防ぐものであります」と説明する。

「クイックスプラッシャー」には、瞬時に広範囲に放射できる「ワイドタイプ」(※写真上)とより対象を狙いやすくした長距離の放射が可能な「トリガータイプ」(※写真下)があり、あらゆる状況に対応可能だ。
想定される利用シーンを尋ねたところ、担当者からは、「不特定多数の人が集う様々な場所でのガソリン等を用いたテロ行為に対して火災抑制機能を発揮します。今回の郵便局立てこもり事件のように、犯人がガソリンを持っていた際に警察等がクイックスプラッシャーを装備していれば、万が一ガソリンをまかれても火災を未然に防ぐことが期待されます。また、交通事故等でガソリン類の油漏れがあった際に、油漏れ箇所に放射することで、火花による着火を防ぎ、迅速に救助作業へ取りかかることが可能となります」という心強いコメントが寄せられている。
「クイックスプラッシャー」は警察官や自衛隊に提供され、現場で利用されている。一人でも多くの命が救われることを願いたい。

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斎藤聡人:1991年生まれ。『Sirabee』編集部記者。
某週刊誌の芸能記者を経て現職に。ジャニーズネタなど、芸能ニュースを中心に様々なジャンルを取材する。
チェーン店からローカル店まで様々な飲食店をめぐり、グルメ記事も手がける。仕事も兼ねた毎日のドラマ鑑賞が日課。
今期の推しは、『コタツがない家』(日本テレビ系)、『いちばんすきな花』(フジテレビ系)、『ゼイチョー~「払えない」にはワケがある~』(日本テレビ系)。