沖縄市泡瀬沖合の埋め立て地「潮乃森(しおのもり)」の人工ビーチに飛来するコアジサシなど絶滅危惧種の鳥類を巡り、市が営巣を防止する計画を進めていることが20日までに分かった。鳥獣保護管理法上、営巣が始まるとビーチの円滑な利用が困難になるため。専門家は「いったん繁殖場所を奪われれば、戻ってこなくなる恐れがある。営巣防止よりも前に、適切な繁殖代替地を確保する計画を立てるべきだ」と疑問視している。(社会部・東江郁香)
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■飛来期と重なるビーチ利用
全長900メートルのビーチでは2018年以前から、環境省レッドリスト絶滅危惧2類のコアジサシや、県レッドリスト絶滅危惧2類のシロチドリの営巣が確認されている。
鳥獣保護管理法は、卵やひなを許可なく採取することを禁止し、保全策を取って繁殖が終わるまで見守るよう求める。
コアジサシは4~8月ごろに繁殖のため沖縄に飛来する。ビーチの利用期間と重なるため、市は飛来防止に取り組む考えだ。
■「絶滅に追いやりかねない」
環境省が定める「コアジサシ繁殖地の保全や配慮指針」では、捕獲や殺傷などを伴わない追い払い行為は禁止されていない。
市は、利用開始後はビーチ西側に整備する「生物保全区域」に誘導する方針。ただ、同区域には、鳥の卵やひなを捕食する国指定天然記念物のオカヤドカリの生息場が設けられるほか、集団繁殖するコアジサシにとって面積が狭いとの指摘がある。
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■沖縄最大級の繁殖地
潮乃森には多い年で500羽のコアジサシが飛来する。現在、県内最大級の自然繁殖地となっている。
市の担当者は「埋め立て工事完了後も飛来するかは分からない。現時点で野鳥の誘導や保全のための具体的な計画は立てていない」と説明した。
市によると、どのような飛来防止策を取るかは未定。2月議会で約470万円の補正予算案を計上しており、成立すれば3月初旬にも事業開始を予定している。
■[解説]希少種の保全 沖縄市に責任
沖縄市が泡瀬沖合で建設中の人工島「潮乃森」で、コアジサシなど絶滅危惧鳥類の営巣防止策を計画していることが分かった。希少種をさらに危機に追いやる恐れがあり、市は効果的な保全策を示す責任がある。
泡瀬干潟はもともと、シギ・チドリ類の重要渡来地だ。県はラムサール条約登録に向けて「鳥獣保護区」と「特別保護地区」に指定する計画を立てていたが、開発への影響を懸念した沖縄市側の同意を得られず、事実上頓挫した経緯がある。
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全国では、人工繁殖地の整備や造成を進める動きがある。人工ビーチの利用のために営巣防止が必要だとしても、適切な代替地の確保など繁殖を妨げない環境づくりが求められる。
(社会部・東江郁香)