南城市の古謝景春市長の運転手として働いていた女性が昨年12月、市長からセクハラを受けたと訴えていたことが明らかになった。 女性は市長に損害賠償を求めて提訴する意向だ。 市長は取材に対し「肩をたたいたが胸は触っていない」と否定している。 双方の主張は食い違うが、事実なら、市の業務中に女性への人権侵害が起きたことになる。うやむやにすべきではない。 女性は昨年8月に市と業務委託契約を結んだ。 同12月に、後部座席の市長が、運転席の女性の左脇の間に手を入れて胸を触ったと証言している。業務開始当初から繰り返し言葉によるセクハラも受けていたという。 セクハラとは相手を不快にさせる性的な言動のことを指す。肩だからいいということにはならない。言葉によるセクハラの有無についても市長から十分な回答はなく、きちんとした説明が求められる。 女性は数日後に市に被害を申告した。副市長らが市長からの聞き取りを実施したものの、市はセクハラの有無について「判断できなかった」とする。 市は女性が市職員でないことを理由に、第三者による調査も実施しなかった。 自治体には非常勤で働く職員も多い。雇用形態の違いで調査をしないというのはあまりにも公平さに欠ける。 事実を追及する気がないと思われても仕方がないのではないか。市長は自らの疑いを晴らすためにも調査に応じるべきだ。■ ■ セクハラを受けて業務が継続できなくなったとする女性に対し市は、「体調不良に伴う業務不履行があった」として期限の数カ月前に契約を打ち切った。 被害のために職を失ったとしたら深刻だ。 疑惑を受けて古謝市長は「(元運転手に対し)女性として魅力というのを感じていない。触るわけがない」と否定した。 しかし、他者の容姿を揶揄(やゆ)するその言葉自体がセクハラだ。市長の人権感覚が問われる。 首長による職員へのセクハラは各地で相次いでいる。 問題が表面化して「セクハラとは思わなかった」「冗談だった」などの釈明に追われる姿からは、セクハラに対する認識や人権意識の欠如がうかがえる。 当選回数を重ねるベテランであることも少なくない。権力や政治家としてのおごりが背景にあるのではないか。■ ■ 自治体では、ハラスメントを防ぐための条例の制定が広がっている。 首長はその先頭に立つべき立場だ。職員や住民の模範となることはもちろん、疑惑を持たれた場合は丁寧に説明すべきだ。 県庁が昨年度、全職員に対して実施したアンケートでは、ハラスメントを見聞きした県職員に比べ、実際に相談に至った職員が少ないことが判明した。 表面化する被害は氷山の一角の可能性があり、相談体制の強化が求められる。