ロシアのプーチン大統領が年末恒例の大規模記者会見と、国民との対話を併せて実施した。 ウクライナ侵攻を始めた昨年は見送られており、2年ぶりの開催だ。立候補を表明した来年3月の次期大統領選に向け、国民に支持を訴える狙いがある。 ロシアの主要テレビ各局が放送した会見や国民対話は4時間にもわたった。 「平和はいつ訪れるのか」との質問に対しプーチン氏は「われわれが目標を達成した時に訪れる」と表明。侵攻の目的についてウクライナを「非ナチス化」「非軍事化」することは変わらないとし、戦闘継続の考えを示した。 しかし、ウクライナ侵攻は、武力で一方的に現状変更を図ろうとする侵略行為だ。明白な国際法違反である。 住民の虐殺や子どもの連れ去りも発生し、プーチン氏自身にも国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で逮捕状が出ている。正当性は全くない。 会見でプーチン氏は「(ウクライナ)戦闘地域のロシア兵は約61万7千人いる」「追加動員は不要」など戦闘継続に対して強気の姿勢を見せた。 一方、前線でドローンが不足しているとする自国の軍事記者には「全てがうまくいくわけではない」と認める場面もあった。 長引く戦闘は国を疲弊させる。ロシア軍の死傷者は30万人以上との報道もある。プーチン氏は詭弁(きべん)を弄(ろう)することをやめるべきだ。 改めて軍の撤退を要求する。■ ■ ロシアでは言論統制が急速に進んでいる。 ウクライナ侵攻に関する不適切な発言があったとして、最近も人気作家のボリス・アクーニン氏とドミトリー・ブイコフ氏の作品の出版停止が発表された。 ロシアの世論調査でプーチン氏の支持率は80%前後と高いままだ。来年の大統領選にも有力な対立候補の姿はなく5選が確実視されている。 しかし、自由に発言できない状況下で公正・公平な論戦や選挙は到底望めまい。 プーチン氏は昨年9月、一方的に併合を宣言したウクライナ東・南部4州の実効支配を「ロシアへの再統合」の成果と誇示する。 ロシア中央選挙管理委員会は4州でも職員が戸別訪問する形で投票を行うと決めた。 だが4州での投票は占領の既成事実化であり、認められない。■ ■ ウクライナ支援は正念場を迎えている。 欧州連合(EU)首脳会議はウクライナの加盟交渉開始で合意し、同国の悲願実現へ道を開いた。一方、ロシア寄りのハンガリーから賛意が得られるかどうかは不透明で、追加支援は先送りされた。 懸念されるのは国際社会の足並みの乱れだ。中東情勢が緊迫化する中でウクライナへの関心が薄れている。 侵攻後2度目の本格的な冬を迎え、ウクライナの死傷者は増え続けている。国際社会は停戦への努力をさらに続けるべきだ。