東京都練馬区の中学校で、生徒に明るく声をかけてまわる校長先生。「話が長くて退屈という従来のイメージの校長先生ではなく、さわやかで話のおもしろい人だった」(在校生)と周囲からの評価も悪くなかったのだが、彼には想像のつかない裏の顔があった。
12月19日、東京地裁の法廷に立っていたのは、練馬区立三原台中学の元校長、北村比左嘉被告(56)だ。問われた罪は児童買春・ポルノ禁止法違反罪。大手紙社会部記者が解説する。「都教委が設置した電話相談窓口に昨年以降、北村被告の元教え子の女性から性暴力の相談があったことで、事案が発覚しました。そして9月10日、警視庁が三原台中の校長室を捜索すると、施錠された執務机の引き出しの中に児童ポルノ動画29点と静止画19点が入ったビデオカメラが見つかりました。動画は北村被告が生徒の下半身を触るなどしたものなどで、それを切り取った静止画も含まれていました。警視庁の捜査員に『再び見ることがあると思って保存していた』と北村被告は供述。さらに動画から別の犯行も発覚し、9月29日には教え子の女子生徒に対する準強姦致傷容疑で再逮捕されています」
北村容疑者
保存していた動画が決定的な証拠となり、いずれも容疑を認めている北村被告。準強姦致傷容疑については「性暴力の意識はなかった。被害者のことが好きになり、性的欲求を抑えられなかった」などと話しているという。「全国レベルでわいせつ教員が社会問題になって久しいですが、北村被告も教師という立場を悪用していました。準強姦致傷容疑の被害者には、マッサージを口実に呼び出していた。『先生から被害を受けていることをまわりに知られたら学校に行けなくなる』と被害者は一人で悩んでいたといい、その後もトラウマに苦しみ続けており、被害者の処罰感情は強い」(前出の記者)
校長として勤務していた三原台中学校(撮影/集英社オンライン)
東京学芸大を卒業後、2002年に理科教諭として中学校勤務を始めた北村被告。順調に出世し、冒頭のように生徒から見れば「いつもニコニコしたおもしろい校長」として勤務していた。約10年前に職業を紹介する専門誌のインタビューを受けた際には、なぜ中学教諭になったのか以下のように話している。「先生方が子供たちを想う姿を見て、心を打たれました。探求を深める指導をするなら中学校と思い、中学校教諭を選びました」「中学校は学問を学ぶための土台を作る場です。生徒達には新しいことをいっぱい吸収してほしいです」
しかし集英社オンラインが事件発生当時、取材を進めると裏の顔ともいえる本性が見えてきた。元同僚の女性は北村被告によるパワハラ被害に遭っていたと明かした。「私が20代の新米教師のころ、私が担任のクラスの副担任が北村さんでした。説教は基本ネチネチしていて、大勢の生徒の前で自分の力を見せつけるように大声で私を叱ることもありました。同じ学年の先生たちみんなでやるような仕事があっても、自分だけ偉そうに椅子にふんぞり返って見ているだけ。生徒たちからも『北村先生はとても怖い目をするときがある。蛇みたいなあの目で睨まれると石みたいに固まってしまう』と聞いたこともあります。私が管理職に北村先生との関係を相談すると、今度は露骨な無視が始まりました」
北村容疑者の自宅。30~40代くらいの女性と暮らし、小さな子どももいたという(撮影/集英社オンライン)
パワハラ気質は年を重ねて多少落ち着いたのかもしれないが、女性に対する性欲は収まることがなかったようだ。「北村さんは今の奥さんの前に、別の奥さんがいたんですよ。子どももいました。でも7、8年前くらいに出て行っちゃって、しばらくはおばあちゃん(北村被告の母親)と2人で暮らしていた。3年前くらいにはお腹の大きな今の奥さんを見るようになったので再婚したんだなって思ってました。50歳越えてるのにお盛んだなあって感じましたよ」(近隣女性)この新しい妻は北村被告とは一回り以上も離れた年齢差があったという。「再婚相手は、元教え子です。もちろん教え子と結婚すること自体に問題はありませんが、もともとは不倫だったようです。常習的に生徒に手を出していたという話もあります。一連の事件の兆候として、もっと早く周囲や教育委員会が気づくポイントがあったようにも思いますが……」(前出の記者)12月19日に東京地裁で行われた初公判。検察は冒頭陳述で、北村被告が「当時の勤務先の中学校の女子中学生2人に校舎内やラブホテルでわいせつ行為をし、後で自慰行為に使うなどの目的で動画撮影をしていた」と指摘した。「罪に問われたのは2人に対するわいせつ行為の動画ですが、29本もの動画にはもっとたくさんの被害者が映されていた。また動画に残されたケース以外にも被害者がいた可能性がある」(同)「生徒達は新しいことをいっぱい吸収して欲しい」と前述のインタビューで語っていた北村被告だが、生徒が彼から学ぶことはもはやないだろう。厳しい処分が望まれる。
東京地裁(撮影/集英社オンライン)
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班