「クリスマスは暇だから酒とODしに来る」「バリケードができてもやることは変わらない」一方で正月は「家が厳しいからおじいちゃん家に挨拶に…」〈トー横キッズの冬休み〉

世の人々の多くにとって休日となる年末年始。この時期は帰省や旅行などで家族や友達と過ごす人たちも多いが、居場所を求めて「トー横」に流れ着いたキッズたちはどう過ごすのか。現地で実態を調査した。
東京・新宿の「トー横」一帯では未成年の飲酒や喫煙、パパ活やOD(オーバードーズ。薬の過剰摂取)が後を絶たず、社会問題となっている。「今年11月にも、トー横周辺で高校生らに市販の咳止め薬を無許可で販売したとして、自らを『パンダ』と名乗る高橋光夢容疑者(21)のほか、未成年を含むトー横キッズ3人が逮捕された。この4人はトー横キッズたちに定価よりも安くせき止め薬を販売していたとみられ、警視庁は入手経路についての捜査もすすめている」(社会部記者)さらに警視庁は12月の週末に一斉補導を3回実施し、トー横周辺にたむろしていた少年少女29人を補導した。なかには小学6年生の女子児童も混ざっており、OD目的とみられる市販のせき止め薬を所持している少女も複数いたという。さらに今月18日には、トー横キッズたちが集まるシネシティ広場(旧コマ劇場前広場)の一部に、全長およそ20メートルほどの巨大バリケードが設置された。
シネシティ広場に突如設置されたバリケード
当時の状況を目撃していた50代の警備員の男性はこう振り返る。「お昼の1時くらいに4台のワンボックスカーや軽トラックがやってきて、車の中から作業服や交通警備隊の恰好をした警官が30~40人くらい出てきたんです。それで広場に布団を敷いて寝てたり、酒盛りしているホームレスらに『早く荷物どかして』と詰め寄って、トー横の連中もしかたなく移動してました。毎年この時期になると、警察もトー横キッズの補導に力を入れてきていたけど、まさかバリケードを置いて閉鎖してしまうとは……」バリケードに掲示された貼り紙によると、広場内の各所にフォトスポットを設置するために、2月上旬まで荷物搬入のスペースとして使うという。しかし、実話誌ライターの男性はこう語る。「今年はシネシティ広場の目の前に『東急歌舞伎町タワー』ができて、外国人観光客が多く訪れるようになったにもかかわらず、トー横キッズたちを一掃できなかった。だから、今回設置されたバリケードは表向きは『資材置き場として一時的に閉鎖する』としているが、実際は今度こそトー横キッズを排除するのが目的だろう」
巨大バリケードが設置された当日に現地を訪れると、そこにトー横キッズの姿はなかった。代わりに彼らがたむろしていたのは、広場の隣のゲームセンター「GiGO新宿歌舞伎町店」前の路上や、新宿東宝ビルの裏路地だ。こちらでもトー横と変わらず、未成年と思われる若者が缶チューハイを飲み、吸い殻を路上に捨てる姿が見られた。約1年前からトー横に通っているという16歳の少年は、シネシティ広場に置かれたバリケードについてこう話す。
ゲームセンター「GiGO新宿歌舞伎町店」
「今年の3月にもバリケードが張られたことはあったけど、今回は資材置き場みたいな感じで完全に閉鎖されちゃってるんで、お手上げですよね。あそこ(シネシティ広場)で寝泊まりしてた人も、警察に布団を没収されたっぽくて……。たぶんこの前、小6の子が補導されたから警察も本気出してきたんじゃないかな」警視庁が行なった一斉補導後は、未成年も夜10時ごろまでには帰るようにして警察の目をかいくぐっているというが、ふだんの”遊び”はほとんど変わらないという。「今はシネシティ広場が使えないけど、正直な話、場所とかはどうでもいいんですよ。別に、どこで集まっても“鏡月イッキ”とかODするだけなんで、バリケードなんて大した問題じゃないんですよね(笑)」
新宿東宝ビルの裏路地
11月末までのトー横エリアの補導件数は約860件で、すでに去年の約1.5倍にのぼる。少年少女らが犯罪に巻き込まれるリスクがあるとみて、警視庁は年末年始にかけても補導を行なっていくという。そんななか、トー横キッズたちはどのようなクリスマスや年末年始を過ごすのか。約半年前からトー横に通う17歳の少年はこう語る。「うーん……。どうせ予定もないので、クリスマスはトー横で過ごすことになりそうですね。ここに来れば誰かしらいるから寂しくないんで。何をやるって? 酒をたらふく飲むか、みんなでODするくらいかな。この前、“パンダくん”が捕まりましたけど、それ以外にも市販薬を売ってくれる子はトー横にいるんで。せっかくのクリスマスなんだし、コンビニで買ったケーキにせき止め薬を入れて食べるのとかおもしろそうっすよね」
先月、“トー横デビュー”したという13歳の少女はこう言う。「TikTokでトー横を知って、いざ来てみたらビックリしました。ここならみんな話を聞いてくれるし、お酒をおごってくれたりするので本当に楽しいです。ただ、勝手に胸とか触ってくる人もいるので、セクハラは警戒してます。まぁ、力だけは強い自信があるので、もしホテルに連れていかれそうになったら殴ってやるので大丈夫です!(笑)。クリスマスですか? ウチはお母さんと仲悪いので、ここに来ると思います」
13歳の少女
クリスマスから大晦日にかけては、いつもどおりトー横で過ごすという声が聞かれる一方で、意外なことに正月は実家で過ごすと答えたキッズたちが圧倒的に多かった。「だって正月くらい家族と過ごしたいじゃないですか。世間で言われる“家庭環境が悪いトー横キッズ”なんて一部だけですよ。僕だって家族仲はいいし、トー横で遊んでることも伝えてます。オヤジはフランチャイズのコンビニオーナーなんですが、昔は繁華街でヤンチャしてたみたいでいろいろ理解あるんですよ。だから年越しまでトー横で過ごそうとは思わないですね。リビングのこたつでゴロゴロします(笑)」(17歳少年・トー横歴1年)「ウチってお父さんがプロスポーツチームの役員で、かなり厳格な家庭なんです。だからお正月は必ずおじいちゃんの家に挨拶に行って、親戚と過ごさないといけない決まりがあるんです。マジだるいですよね。本当はお酒を飲んだり、ODしたいけど、年末年始だけは我慢です」(前出、13歳少女・トー横歴2カ月)
トー横キッズが持っていた処方薬
せっかくの年末年始。トー横キッズたちも市販薬ではなく、年越しそばやおせちなどでお腹と心を満たしてほしい。取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班