「クリスマスも絶対一緒にいようね~」聖夜のアフター獲得に向け鬼出勤のホス狂風俗嬢、質屋にかけこむキャバ嬢、おねだりキスがあちこちで〈歌舞伎町ホス狂ルポ24時〉

クリスマスが近づき、活気を増すのはホスト業界も同じ。売掛(ツケ払い)問題で世間からのイメージが悪くなるなか、ホストの聖地・歌舞伎町は、聖夜へ向けてどんな盛り上がりを見せているのか。
相次ぐホストクラブでのトラブルに際し、新宿・歌舞伎町のホストクラブが来年4月をめどに「業界団体」を立ち上げることを明らかにしたのは、今月13日のこと。同日に行なわれた記者会見には、新宿区の吉住健一区長のほか、歌舞伎町最大手のホストグループ「グループダンディ」の最高責任者でもある巻田隆之氏が出席。業界団体の立ち上げ時期について「売掛金をなくす来年4月をめどにしたい」と発言した。この業界団体には、計250店舗のホストクラブを運営する19グループが加盟する予定で、売掛制度の撤廃や、未成年の入店禁止といった自主規制を中心に取り組むという。「さらに15日には、新宿・歌舞伎町のホストクラブ176店を対象に警視庁による立ち入り調査が実施され、およそ7割の店でシャンパンタワーの料金が表示されていないことが判明した。ボトル代の料金を表示していない店も多く、高額な売掛につながる恐れがあるとして、違反店には行政処分などを行なうようです」(社会部記者)
新宿歌舞伎町
このように徐々に締め付けが厳しくなってきた歌舞伎町のホストクラブ。だが、そんなホストクラブが一番盛り上がるのが12月のクリスマスシーズンだという。実話誌の女性ライターはこう語る。「クリスマス期間はホストクラブにとっては一番のかきいれ時。10分おきにシャンパンコールが店内に響きわたるし、入店時に50万円近く預けないと入店すらできないホストクラブもあるほどです。クリスマス当日は、担当ホストとのアフター(店外デート)を勝ち取るために300万円ほど使うことも珍しくありません」いったいどれほどの盛り上がりなのか。クリスマス1週間前の18日の夜に、実際に歌舞伎町を訪れてみた。時刻がホストクラブの営業が終わる深夜1時ごろになると、スーツ姿のホストらしき男性や、コートを羽織った若い女性の姿も増えてくるが、街を歩く人の数はふだんの4分の1程度といつもよりかなり少ない。
思ったよりも盛り上がっていなかったクリスマス1週間前の歌舞伎町
いわゆる地雷系ファッションに身をつつんだ女性が「マジでムカつくわ! あのチビがよ!」と怒りをあらわにして駅に向かって歩いているかと思えば、担当ホストと思わしき男性と手をつなぎながら「今日はお寿司食べたい~」と甘えている女性の姿も目に入る。だが、いずれにしても大盛り上がりとはいえない印象だ。ホストクラブに15年以上通う30代の女性はこう話す。「基本的に姫たち(お客さん)はクリスマス当日に命をかけているので、この時期はホストクラブには行かずに、お金を貯めるために風俗やパパ活にいつも以上に力を入れている子が多い。”おぢ”にもらったブランドモノのバッグを質屋に預けたり、『どうしても家賃が払えなくて……』などとウソをついてお手当を弾んでもらったりして、お金をかき集めているのです」
大久保公園前で体を売る若い女性
この日も、深夜にもかかわらずひとりで質屋に入っていく女性たちの姿がポツポツと見受けられる。そのうちのひとりに声をかけると、しぶしぶ口を開いた。
質屋にひとりで入っていく女性(※本文中の女性ではありません)
「この前、客のオッサンにもらったヴァンクリ(ヴァンクリーフ&アーペル)のネックレスを預けにきたんですよ。クリスマスは絶対に担当とアフターしたいので、お金が必要なんです。マジで最近、ホスクラに行ったら担当被り(同じ担当ホストの女性客がいること)が多くなってきてムカついてて。だからクリスマスは負けたくないんですよね」また、トートバッグを担いでひとりラブホテルに入っていく、デリヘル嬢とみられる女性の姿も目立つ。「基本的に風俗やってる子ってホスト好きが多いので、みんなクリスマス当日に向けて”鬼出勤”してるんですよ。とくにこの時期だと『円盤交渉』(本番行為の金額交渉)することも多くて、いつもは本番行為をさせていないお客さんに対して『あと2万円で本番いいよ』と言ってみたり、ゴム付きのお客さんに対しては『生でしたいけどあと5万円ほしいな~』と言ってみたり……。パパ活とは違い、お客さんとトラブルになっても店が責任を負ってくれるので安心してそういう交渉ができるんです」(前述、30代女性)
ラブホテルに入っていく男女
時刻は深夜3時すぎ。夜が更けるにつれて、ホストらしき男性とラブホテルに入っていく女性や、「いやだ~、帰りたくない~!」と路上で泣き叫ぶ女性も見られるようになった。嘔吐しながら倒れている男性もおり、カオスな光景が広がっている。そんな歌舞伎町を歩いていると、一軒のホストクラブの前に7、8人の救急隊員が押し寄せていた。店から出てきたのは、手をガーゼのような布で巻いている男性だ。誰かに切られたのだろうか、布には赤い血がにじんでいた。
ホストクラブでいざこざがあり流血騒動に。救急隊がかけつけたが、大事にはいたっていないようだった
救急隊員の男性に声をかけると、呆れながらこう答える。「ああ、よくあるお店でのいざこざですよ。通報があったので一応、担架を持ってきたんですけど軽傷でしたね。歌舞伎町ではよくあることだし、こんなケガでいちいち呼ぶなって感じです」
さらに取材を進めていると、大通り沿いで口論になっている男女を発見した。「なんで私の名前間違えたん?」と激怒する女性に対して、「いや、本当にごめんって」と男性はひたすら謝っている。どうやらホストクラブの営業中に、女性の名前を間違えて呼んでしまったようだ。ふたりの口論が終わることはなく、激怒しながらタクシーに乗り込んだ女性に向かい、男性は「本当にすみませんでした!」と深々と頭を下げていたのだった。
酔いつぶれて路上で眠る男性
「姫の名前を間違えるなんてホスト失格ですね。最近は、売掛が社会問題となったことで、客は担当ホストからの信用がないとなかなか売掛させてもらえません。あるホス狂の友達も『最近は半分入金しないと掛け(売掛)できない……』と嘆いていたくらいです。だから、最近の客はちゃんと現金で払ってホストで遊ぶ子が増えている。それなのに、名前を間違えられるなんて姫もショックだったでしょうね」(同)
ホテル前でイチャつく男女
時刻は朝の5時すぎ。まだ夜明け前にもかかわらず、アフター終わりと思わしき男女や、泥酔したホストらしき男性が路上に出てきた。担当ホストに後ろから抱きつく女性もいて、「クリスマスも絶対一緒にいようね~」などと楽しそうに話している。路上で談笑しているグループの中には、「担当が~、担当が~」と駄々をこねて男性にキスをおねだりしている女性の姿も。どちらも足元がおぼつかないほど泥酔していたが、そのうちのふたりの男性がフル電動自転車にまたがり、そのままふたり乗りでどこかに消えていったのだった。
女性客と談笑しフル電動自転車にふたり乗りする泥酔したホスト
実質的に売掛制度のラストイヤーとなることが予想される今年のクリスマス。新宿区の吉住健一区長は19日、「自分のお小遣いで遊べない人は歌舞伎町に来ないで」と注意を呼びかけたが、果たして当日はどうなるのか。
集英社オンライン編集部ニュース班