2時間50分の船旅で「キングサイズベッド」!? 爆寝必至の新鋭フェリー 椅子席・和室も侮れない!

「れいめい丸」は宇和島運輸フェリーが2022年に導入した新鋭フェリーで、別府・臼杵~八幡浜港を結んでいます。この船の特等室は、キングサイズのベッドが備わる超豪華仕様。2時間50分の航路で、なぜここまで充実しているのでしょうか。
宇和島運輸フェリーは、1884(明治17)年に創業したフェリー会社の老舗です。2023年現在は、四国の八幡浜港(愛媛県)と九州の別府観光港(大分県別府市)、臼杵港(同・臼杵市)を結ぶ航路を運営しています。長い歴史を持つだけではなく、近年も優れたデザインと居住性を持つ客船を登場させてきました。 2023年現在の就航船は、「おおいた」(2004年竣工)、「あかつき丸」(2014年)、「あけぼの丸」(2017年)、そして今回紹介する「れいめい丸」(2022年)です。これに乗るため、筆者(安藤昌季:乗りものライター)は2023年12月、別府観光港へ向かいました。
2時間50分の船旅で「キングサイズベッド」!? 爆寝必至の新…の画像はこちら >>宇和島運輸フェリーが別府・臼杵~八幡浜間で運航する新鋭船「れいめい丸」(2023年12月、安藤昌季撮影)。
別府観光港はJR別府駅からバスやタクシーで10分ほどと、利便性の高い港です。船舶の運用はホームページで公開されており、筆者は14時別府観光港発の「れいめい丸」に乗ることにしました。別府駅へ13時27分に着く、特急「ゆふいんの森3号」からの乗り継ぎでしたが、タクシーを使えば余裕を持って乗り継げました。
到着したのは出港13分前。「れいめい丸」はすでに着岸していました。船体には階段のタラップが付いており、徒歩客はそこから乗船します。クルマが出入りする甲板(電気自動車の充電設備もある)を横目に船内2階に入ると、お洒落な自動ドアが出迎えました。
「和テイストの落ち着いた雰囲気と高級感のある船内」がデザインコンセプトとのことですが、船内に入ってすぐのエントランスは見入ってしまうほど。大分の竹細工や臼杵の竹宵を参考にデザインしているのだとか。
総トン数2718トンと、それほど大きな船ではありませんが、立派な売店があります。3つのテーブルに16脚の椅子もあり、飲食なども自由。お酒や地域のお土産、おつまみ、雑誌、お菓子、飲料を販売しています。インターネットで「幕の内弁当」が美味しいと聞いていたので購入すると、暖めてから渡してくれました。
売店の横にはゲームコーナーもあり、2時間50分の船旅で退屈することはなさそうです。売店の外にもフリースペースが2か所あり、ソファが置かれています。
今回は特別に、売店の奥にある「ドライバールーム」にも入れて頂きました。男女別に分かれていて、個室寝台が並ぶ区画です。特等室にもないシャワールームがあります。クルーによると「長距離運転をするドライバーのお客様からの要望が多い」ために、シャワーがあるとのこと。
客室に戻り船内奥に進むと、2等リクライニングシート(通常期4300円)があります。JR九州のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」など、数多くの鉄道座席デザインで知られる住江工業がデザインした座席で、特急グリーン車に匹敵する快適な座席であり、2等とは思えません。
さらに奥が2等客室(通常期4300円)です。四角い琉球畳が置かれたお洒落な空間で、こちらもゴロゴロできて快適です。
Large 231218 reimei 02
2等リクライニングシート(2023年12月、安藤昌季撮影)。
エレベーターで3階に上がります。2等リクライニングシートと2等客室は2階と同じですが、マッサージコーナーとして、マッサージ椅子が2脚あります。また、このフロアのみ「ウィズペットルーム」があります。ペットを放しておける庭と、2段ベッドの個室が組み合わされた空間で、宇和島運輸フェリーでは「れいめい丸」だけの設備です。
扉で区切られた1等・特等客室フロアに入ります。1等客室(通常期7200円)は琉球畳の開放船室で、テレビやコンセント、マットレスが備わります。また1等と特等の乗客のみが使える専用ラウンジもあります。ここはゆったりとした座席主体で、前面展望も楽しめる空間です。
いよいよ、特等室(通常期1万700円。1人利用だと1万5700円)に入ります。5人は座れる応接スペースとクローゼット、トイレ、洗面所の個室が手前にあり、奥は寝室で作業用デスクと椅子、テレビ、キングサイズ(横幅2m、長さ1.95m)のベッドが置かれています。
ここでふと疑問が。2時間50分の航路なのに、なぜ長距離フェリーの特等室でも見られない、キングサイズのベッドがあるのでしょうか。
宇和島運輸フェリーによると「キングサイズベッドを、ほかのどの社も導入していないからこそ導入いたしました。業界でどこもしていないことを、先駆者として行うことがカッコいいと思ったのです」とのこと。一瞬で寝てしまいそうなほど快適なベッドでした。
昼間の航路の場合、寝ながらでも大きな窓からの前面展望を堪能できます。コンセントが複数箇所にあり作業用デスクも大きいため、仕事も捗りそうです。
「れいめい丸」は20ノット(約37km/h)前後の高速で、八幡浜港を目指します。新造船だけあって揺れはほとんどなく、エンジン音も静かでした。
備え付けのテレビでは現在位置を表示もできるので、地形と風景を照らし合わすことができます。見どころと感じたのは、日本で最も細長い佐田岬半島のすぐ横を通ること。佐田岬灯台から2kmくらいの至近距離を通過しました。
最上甲板から、九州と四国の移りゆく景色を見るのも楽しいです。甲板にはテーブルが4脚、椅子が20脚あります。船の赤い煙突も見えますが、この部分は伝統のデザインなのだとか。
Large 231218 reimei 03
佐田岬灯台(2023年12月、安藤昌季撮影)。
あまりにも快適な2時間50分はすぐに過ぎ、八幡浜港には定刻に到着しました。JR八幡浜駅までバスで10分弱であり、こちらも徒歩乗船での利便性は良好です。とりわけ特等室は、四国や九州を午前0時前後に出発し5時半まで船内滞在できる深夜便で、じっくり宿替わりにまた利用したいと思う素晴らしい設備でした。